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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/アジア

平和人権/アジア2018/11/29

レポート:知らなかった! アジアンコーヒー入門Vol.2


 初めてタイを訪ねたのは1994年のこと。2年の滞在期間中にも、コーヒーにはいろいろな思い出があります。街角で売っていたコーヒーは濃く、そして甘かった。時にはペーパードリップのストレートなコーヒーを飲みたくなりますが、お店では見当たらない。喫茶店では、インスタントコーヒーに練乳がはいっている始末。仕方なく、スーパーで時々売っている粉を見つけては買い占め、バンコクに行けば日本食売り場に足を運び、やはり買い占めたものです。
 それが、今ではタイでコーヒーを生産するようになり、東京の豆屋さんでも見かけるほどになりました。フェアトレードコーヒーと銘打って、東ティモールのコーヒーを使っている喫茶店に出会ったことがあります。でも、アジアのコーヒーのシェアはまだまだ小さく、珍しい。やはりアフリカや中南米が大半を占めているのがコーヒー業界の現状だそうです。

 今回の講座は、そんな珍しいアジアのコーヒーを扱っている国際協力NGO3団体+アーユスと、以前は国際協力の分野で働いていたコーヒー豆焙煎ショップのオーナーによる共催。コーヒーを切り口にアジアの国々や、生産者のことにも親しんでもらいたいという願いを持って、二部構成の講座を企画しました。11月25日(日)という三連休最後のお休みの日の午後、今ではコーヒーのメッカと呼ばれる清澄白河の長専院さんが会場です。登場する団体と紹介するコーヒー生産国は次の通り。
APLA】ラオス
ジオグラフィー】インドネシア
シャプラニール=市民による海外協力の会】ネパール
パルシック】東ティモール

18coffee2 まず第一部では、長野市の焙煎ショップ「ジオグラフィー」のオーナーである諸英樹さんによる、コーヒー概論。諸さんは数年前までNGOで働いていましたが、今年の1月に長野市に移住して、この夏に起業したばかりです。元々コーヒー好きが起業に至ったのですが、その博識ぶりは見事なもの。講座では、様々な淹れ方や焙煎の仕方と味の個性から、豆が生産地から食卓に上るまでの過程、コーヒー豆の種類と精選方法の違い、そしてコーヒー生産業が抱える課題まで多様なお話を簡潔にしてくださいました。そしてもちろん、ハンドドリップの実演と解説もあり。とはいえ、淹れ方には「これだ!」という1つの方法があるわけではなく、その人の好みや目指す味、使用する豆によって違ってくるそうです。ですから、諸さんの淹れ方をベースに基本を学びました。
 諸さんの講座を聞いている間、参加者は4種類全部のコーヒーの試飲をします。お話を聞きながら、これは渋みが強いな、これは酸味かなと、それぞれの特徴を味わいました。

 そして、第2部は、この講座ならではの醍醐味。上記4カ国ごとテーブルに分かれて、それぞれの生産地のお話を聞きながら、現地でのコーヒーの淹れ方を楽しみます。

173x115インドネシアの粉コーヒー(コピ・トゥブルック) 173x115チャイのようなネパールのコーヒー
173x115ネルドリップを使う東ティモールのコーヒー 173x115ネルドリップを使って煮出すラオスのコーヒー

 各テーブルでそれぞれの地域での暮らし振りをスライドや道具を使って紹介し始めると、会場がアジア色に包まれ始めたようでした。
 シャプラニールは、南アジアからのフェアトレードの食材商品が少ないのを打破しようと、ネパールでのコーヒー生産に協力を始めました。ネパールではそもそもコーヒーを飲む習慣がなかったけれど、生産者たちは自分たちが作っているものを飲みたいと思ってチャイ式のコーヒーの淹れ方を生み出したとか。牛乳がたっぷり入ったまろやかなコーヒーは、今は村の人たちの嗜好品のひとつです。

 パルシック東ティモールの独立の頃から現地に入り、地域の人たちとのつながりも強いものです。現地に行くと、行く先々でコーヒーを勧められるとのこと。写真の後の方にチラリと見える臼で、コーヒー生豆になる前の殻をはがすところから見せてくれました。ネルドリップはペーパーフィルターよりもいろいろなものを通すそうで、コーヒー豆の油分や雑味も入りやすいとか。それが、かえってうま味となるようですね。

 ジオグラフィーは、インドネシアの粉コーヒー(コピ・トゥブルック)を紹介。とても細かく粉状になったコーヒーにお湯を注ぎ念入りにかき混ぜ、粉がカップの底に留まるまで待ちます。これって、パレスチナやレバノンと同じ方式ですが、イスラーム文化の影響があるのでしょうか。聞きそびれたので、また確認したいと思います。ちなみにパレスチナではこれにカルダモンを加えていましたよ。

 APLAは、ラオスコーヒーを2人でお話しながら実演してくれました。ネルドリップだけどドリップだけでなく、火の上で煮出します。ここだけ試飲もさせていただきましたが、とても苦い! ちょっと飲めないなと思ったところ、底には練乳があり、かき混ぜるととても美味しいコーヒーに早変わり。苦みをうまく引き立てるのが練乳でした。

 イベント終了後にアンケートを取ったところ参加者の反応もよく、ハンドドリップだけではなく、現地の淹れ方で出されたコーヒーも全て試飲したかった、現地のお話を伺ったらコーヒーが更に美味しくなったなど、嬉しいコメントを頂戴できました。

 現地のこと、活動を知ってもらいたいという思いはNGOに共通することですが、こうやってそれぞれの国の文化や習慣を通じて味わってもらえるのは、貴重な機会だと思います。来年はどうしようかなぁ?

 冒頭に触れたタイの思い出をもうひとつ。当時、東北地方のNGO事務所で働いていた私は、時々ペーパーフィルターでコーヒーを淹れて飲んでいました。それを気に入ったのが1人のタイ人スタッフ。彼女は村にもコーヒーを持っていって部屋で飲むようになりました。しかしドリッパーがないのにどうやって? なんとココナッツの殻に穴を空けて使っていたという・・・この想像力と実行力に惚れた私は、やっぱりアジアが好きですね。(M)