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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2020/08/23

【街の灯トーク#6】コロナ禍で追いつめられる子どもたち⑤


―マイノリティの子どもへの影響 居場所を失う ①LGBTの子どもたち

甲斐田 こういった、すべての子どもたちに共通するような「不安」や「家庭内の不和」がマイノリティの子どもたちにどんな影響があるのか。LGBTQの子どもたちにもわりと大規模なアンケート ──12歳から34歳なので大人も含まれていますが──が実施されました。そこに書かれていたのは、セクシュアリティについて話せる場所や話せる人とつながれなくなって困っている子どもたちがいるということです。無理解な家族とステイホームで長くいっしょにいることで、自傷行為をやめられないという深刻な声、あるいは学校に相談したくてもできなくて不安という声が10代からあがっています。
 また、LGBTの子どもたちへの研修をして居場所づくりにも取り組んでいる「SHIP」という団体に伺ったところ、LGBTQの子どもたちは、もともと居場所に出かける場合には家族にウソをつかなくてはならなかったけれど、 外出自粛でずっと親と過ごしているストレスに加えて、出かけようとしても親に「どこいくの」と聞かれて困っているということでした。「プライドハウス東京」というところでは、zoomで「おうちでカラフルトーク」というLGBTQの交流会をやっています。

―マイノリティの子どもへの影響 孤立する ②外国にルーツを持つ子どもたち

甲斐田 次に、外国につながる子どもたちのグループですが、やはり、チャイルドラインに携わる理事によると、フィリピンの中学生の男の子が、突然親が不法滞在ということで連れていかれ、弟二人と児童相談所に保護されてしまい、給付金も子どもたちだけで手続きしなくてはならず、非常に大変だったそうです。

甲斐田 これから紹介する4名の方の話は、国際子ども権利センター(C-Rights)の理事が移住者に関わっているところから聞いたものです。
・高校教員:「外国につながる子どもたちは言葉の問題を抱えていて、普段なら友だちに教えてもらえることが、オンラインではできなくなってつらい思いをしていて、教育格差が生まれている」
・定時制高校教員:「JFC(日比国際児)の子どもたちも経済的な面で大変そうで、普段から不安定なので学校に集中できないのだけれど、コロナ後は欠席や遅刻が増えた。生活のペースが乱れ、家族関係の複雑なケースも多く、自宅にもなかなか帰れない」。
・インドネシア人のお母さん:「子どもがずっと家にいてストレスが出ている。日本の友だちがいないから寂しそう。生活費がかさんでいる。クリニックに行っても断られてしまう」
・南米フィリピン日系人:「コロナによってブラジル学校が閉鎖となり、教育が受けられなくなる。でも日本語ができないので、ほかの学校にもいけない、学校に行けない子どもたちがこれから増えるのではないか」
・その他:「PCもスマホも持っていないので、オンライン授業ができない」
  「朝鮮学校がコロナによって行事を開催できず、資金づくりができないために、閉鎖の危機に陥っている」。もともと朝鮮学校は補助金をもらえないため、バザーなどをして運営費を賄っているところそれができず、危機に陥っているようです。

―マイノリティの子どもへの影響 逃げ場を失う ③不登校の子どもたち

甲斐田 3つめのグループ、「不登校の子どもたち」についてお話します。これは、「東京シューレ」のスタッフから聞いた話ですが、学校が休みになるとほかの子どもたちも休みなので、昼間に出かけると会ってしまうのではないかという不安から、外出できなくなっているということです。また、同じ仲間であるフリースクールの友人たちと会えないことがつらいということ。「学校に行って当たり前」の観念があるため、学校に行けない自分を否定したり責めたりする子には休校はいい面もあるのですが、休みでもストレスを抱えてしまうのが不登校の子どもたちの現状ということでした。
 性的被害・性的搾取のリスクにさらされる子どもたちにも注目したいと思っています。例えば、「3Keys(スリーキーズ)」というNPOの代表の方によると、やはり家で虐待のあるところだと逃げ場がなくて追いつめられているという相談が多いとのこと。それから「Colabo」という中高生の少女たちを保護しているNGOでは、「バイトが減るとお金がなくなってしまって、親といるとメンタルが大変になってしまう」「ここ(Colabo)に来ると気持ち悪くなるくらい食べて帰る」「親から暴力を振るわれていることが、ここにくるきっかけ」といった声があるそうです。子どもポルノの被害者は毎年増えていて、昨年で過去最高になったのですが、オンラインで勉強したり遊んだりする子どもたちが増えたことで、巧みに子どもたちを狙った業者から性的搾取を目的として子どもを心理的に支配する行為「グルーミング」をされる子どもも増えているということが懸念されています。

甲斐田 チャイルドラインの理事の方に聞いたのですが、3月、まだ親が働いていたころに家で性交渉をもってしまったという相談が多かったそうで、最近のニュースで「子どもの妊娠増加」というデータが出てきています。これについて、「妊娠につながる家で起きていたことが、性暴力でなければいいのですが」と話しておられました。今までは、子どもがアクセスしなかったはずのところにインターネットでアクセスするようになり、「裸の画像を送ってください」と言われて「送っても大丈夫だろうか」という相談も来ているそうです。
 この方は、性暴力被害支援センターでも活動をされている方なのですが、チャイルドラインの相談の際に性のことはなかなか話すことができず、実際は、親に連れてこられる子どもが多いとのことでした。日本では性教育が非常に不足しているがために、リプロダクティブ・ヘルスとライツについて学ぶことができず、この時期に中高生の妊娠の相談が急増しているということです。

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