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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2020/08/23

【街の灯トーク#6】コロナ禍で追いつめられる子どもたち④


コロナ禍における子どもたちの状況

―コロナ危機は子どもの権利の危機だ

甲斐田 さて、ここからコロナ禍における子どもたちの状況をお話ししたいと思います。
 まずユニセフが「コロナ危機というのは、子どもの権利の危機である」と言っています。つまり、既に暴力、搾取、虐待の危機にさらされている子どもたちが、さらに弱い立場、脆弱なところにおかれて影響を受けやすくなる、ということですね。また、子ども自身が孤立していると、家庭やオンラインで暴力に直面したとき、ますます助けを求めにくくなる。さらに、国連子どもの権利委員会は、新型コロナに関する11項目の声明を発表しました。7番目には「脆弱性が一層高まる子どもたちを保護しなくてはならない」ということ、11番目には「意思決定の際に子どもたちの意見が聞かれ、かつ考慮される機会を提供しなくてはならない」とあります。
 もうひとつ、子どもに対する暴力について(これをなくそうとする世界的なムーブメントがあるわけですが)、21の団体がコロナ危機に対して「子どもへの暴力がますます増えている、それが見えづらい危機なのだが深刻になっている」ということを訴える共同声明文を発表しました。特にインターネットにおける性的搾取のリスクが高まっていること、そのためにプロバイダやIT技術にかかわる企業はもっとオンライン教育をおこない、有害な性的虐待の画像などの製作・配布を発見した場合には、中止しなくてはならないということも盛り込まれています。

―日本の子どもが直面するリスク 暴力・性的被害・強度のストレス

甲斐田 では、日本国内でコロナ禍の中、子どもたちにどのようなリスクがあるか、アンケート調査などから見ていきたいと思います。
 ひとつは、国立成育医療研究センターが出した第1回オンライン調査「コロナ×子ども」は、たくさんの子どもと親に対しておこなったもので、非常に包括的な調査結果が98ページくらいある報告書にまとめられています。それによると子どもたちがかなりのストレス反応を起こしていること、親から怒鳴られたり叩かれたりされる割合が高いと報告されていて、私自身もびっくりしたのが、小学校1-3年生の子どもが親から怒鳴られている割合が30%近くになっているということです。
 そういったことに対して、子どもたちの声もていねいに報告されています。どんなことが必要かという質問には、「心を落ち着かせる方法を知りたい」とか「どうしたらイライラしなくなるかを知りたい」、深刻なものには、「自殺念慮がひどいが、病院に行ってもいいか」というものもありました。ポジティブな面では、「こういったアンケートで自分の意見が言えてよかった」「アンケートを出したことで心の整理ができた」というものがあって、子どもが気持ちをあらわすことがとても大事だということがわかると思います。また「このアンケートを少しでも多くの人に読んでもらって役立ててほしい」とか「虐待を受けている子どもはこういうサイトにアクセスできないし、できたとしても回答できないのではないか」と、自分以外に辛い思いをしている子どもたちに思いを馳せているものもありました。
チームの中心的なメンバーである田中恭子さんによると、実際に虐待や性被害をうけているケースが一気に増加しているのに、それが調査結果にはあらわれにくいそうです。また、元々存在していた家族の脆弱性がコロナ禍によって子どもに向けられ、子どもの身体面が悪化して受診に至るケースや、食事が不十分で体重が減ったり飢餓状態で万引きなどをして警察に保護されるなど、非常に深刻な状況も病院では相次いで出ているとのことでした。
 2つ目の調査が、私も評議員をしているプラン・インターナショナルジャパンのものです。若い女性、15歳から29歳までの女性に対するオンラインでのアンケート調査で、これによると12.8%が「家族や恋人のけんかや不和が増えた」と回答しています。政府に行ってほしい対策として、41.8%が「DVや子どもへの虐待防止の強化」と答えています。家に居場所がない10代の女の子が休校で行き場を失って、SNSで知り合って性被害のリスクを受けるということが報告に書かれてあり、ネットカフェの休業やアルバイトがなくなったことで、また性的被害のリスクが高まっているということです。
 このアンケート結果をもとに、プランはジェンダーに基づく暴力防止のための相談・保護活動を継続してほしいという要望書を政府に出しました。また、自分がマイノリティである(朝鮮半島や中国にルーツを持っている人)ために、不安を感じているという人もいました。
 実際にチャイルドラインの相談業務をされている理事の方に話を伺ったところ、チャイルドラインも2月28日から4月30日までの相談からコロナのどんな影響があったかを報告書にまとめています。そこにはやはり、「不安」という言葉が非常に多く並んでいます。また、家庭が安心できる場ではない状況がうかがえる内容も書かれています。親もイライラしている、ケンカが多い、お父さんの暴言や罵倒がひどくて耐えられないなど。子どもたちが、耐えられず、将来も不安で、何も手につかないという声が報告書にあがっています。

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