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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2022/02/08

【街の灯Talk21#1】コロナ禍の難民申請者に必要な支援①


コロナ禍が続く中、難民申請者に必要な支援とは

ゲスト:松田寛史さん(難民支援協会)/ 聞き手:井上団(アーユス仏教国際協力ネットワーク)
とき:2021年12月15日(水)


松田 改めまして、このたびはこのような機会をありがとうございます。アーユスのみなさまのご支援より、難民の方々の食料や住居支援ができました。
 わたしは、認定NPO法人難民支援協会の支援事業部で、難民の方々ひとりひとりへの法的支援や生活支援に携わっています。タイトルにあるように、コロナ禍が続くなかでの日本国内での難民支援の現状と課題をお話したいと思います。ぜひ、この街の灯トークを通じて、難民問題を知る、考えるきっかけになればと思います。
 お話に入る前に、2つお伝えしたいことがあります。
  1つは、難民は特別な存在ではないということ。ひとりひとり人間であって、日本にも難民申請者が身近に存在していること。もうひとつは、難民申請者を守る法制度にまだまだ多くの課題が残されていることです。

井上 松田さんが、難民支援協会のスタッフになってからどのくらい経ちますか。

松田 新型コロナ禍の2020年5月に入職したので、1年8ヶ月くらい経ったところです。

井上 これまでどのような活動をされてこられたのでしょうか。難民に関わることになったきっかけは?

松田 難民問題に関心をもったきっかけは、大学のゼミの先生を通じて当時のUNHCRのインド事務所の代表からお話を聞いたことです。インドにはアフガニスタンやビルマなどからの難民が多くいることや、彼ら彼女らが厳しい環境におかれて必死に一日を生きていることを知りました。難民をはじめ脆弱な立場におかれた人たちのことを、いかに自分がわかっていないかを自覚しました。
 その中で、ソーシャルワーカーとして難民分野で働きたいと思うようになり、社会福祉士の資格を取りました。しかし現在の社会福祉士のカリキュラムでは、難民をはじめ外国人の内容はほとんど取り扱われていないため、社会福祉士を取得するだけでは難民のことは十分に理解できませんでした。そのために、支援の土台となる知識を身に付けた上で現場にいきたいと思い大学院に進みました。主専攻で共生社会の実現に向けた多文化国際ソーシャルワークを学び、大学院在学中にUNHCRのインド事務所で国連インターンシップに参加しました。そこで出会った難民の方々のことはよく覚えています。UNHCRで登録するためにアフガニスタンやビルマのほか、カメルーンなどアフリカの国々から来訪されていました。ほんとうに食べ物、着るものが十分にない、寝る場所がない、働けない、安定した在留資格がない、様々な条件が重なって、厳しい状況に直面している人と多く出会いました。そのとき、何もできない私に虚無感を抱いたことも覚えています。
 その後、UNHCR駐日事務所でのインターンシップにも参加して、その際にハッと気づかされたのが、日本にも同じように難民がいて、同じような課題に直面していることでした。私は日本社会で二十数年生きてきたのですが、そのような状況にあることをほとんど知らなくて、恥ずかしい気持ちとともに、同じ社会に暮らしている難民のために何かできることはないかと強い責任感をいだきました。そこで国内の現場でも、ソーシャルワークの資格を生かせると思い、難民支援協会で働くことを決めました。

井上 大学生の頃から難民問題への関心が急速に高まり、海外や日本のUNHCRの事務所で活動されて、そののちに難民支援協会に入られたと。ご自身の中での関心の高まりが今の仕事につながっている感じがします。
 最初に基礎的なところで、難民問題を考えることの意味や難民の定義、難民申請の手続きや認定数の推移、そしていま日本にいる難民や難民申請者がどのような状況に置かれているのかを教えていただけますか。

松田 難民問題を考えることがなぜ必要なのか、難民支援をすることが重要なことなのかといえば、それはシンプルに人の命に関わることだからだと思っています。難民になる人は特別な人ではなく、私たちと同じで、故郷があって家族友人がいる普通の人で、生活していた母国の状況に翻弄され、逃れざるを得ない状況に追い込まれている。それ以外は私達となんら変わることのない人たちです。
 逃れざるを得ない状況で文化や言語が違うところにきているために、彼ら、彼女らが安心して暮らせるには様々な配慮や多角的なサポートが必要となっています。様々な状況にいる難民の人たちと関係性を作るのは極めて重要ですが、母語の違いや文化の違いから簡単なことではありません。でも丁寧な関係をつくることで、彼ら、彼女らにとって難民支援協会が拠り所の1つになることを願っています。また難民の方特有なことかもしれませんが、同じ国、文化圏の人たちに接触したくないという人もいらっしゃいます。同じ国から逃れてきていても、抱えている背景は様々。同じ国だからとか、同じ民族だからこういう対応をしようとか、この人とあの人をつなげようとは絶対にならず、ひとりひとりにあった対応が求められていると入職して1年半と少しで強く感じるところです。
 ここからスライドもお見せしながらお話したいと思います。(続く)

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