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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2020/08/23

【街の灯トーク#6】コロナ禍で追いつめられる子どもたち①


コロナ禍で追いつめられる子どもたち

ゲスト:甲斐田万智子さん(国際子ども権利センター:C-Rights)/ 聞き手:井上団(アーユス仏教国際協力ネットワーク)
とき:2020年7月7日(火)

井上 今日は、国際子ども権利センターの甲斐田万智子さんから、コロナ禍のなかで子どもの権利についてどんな取り組みをしようとしているのか、その対象となるマイノリティの子どもたちは、どんな状況にあるのかを伺ってまいります。

甲斐田 こんにちは。ではさっそく自己紹介と国際子ども権利センター(以下、C-Rights)のことを紹介させていただきます。
 私は大学卒業後に、日本ユニセフ協会で「子どもの権利」に出会いました。その後、大学院などを経て1996年に帰国し、国際子ども権利センターのスタッフになりました。その後、インドプロジェクトを開始したんですけれども、これは、インドに4年間住んでいたとき、働く子どもたちが声をあげることの大切さを知ってそれを多くの人に知ってほしいと思い、また、子どもの声を通じて児童労働の問題を解決したいと思ったからでした。その後、2003年からはカンボジアに滞在して人身売買や児童労働の活動に携わり、それが現在も続いています。
 2010年に帰国し、2012年からは大学で子どもの権利と国際協力を担当しながら、C-Rightsの活動を続けています。「子どもに対する暴力撤廃のためのグローバルパートナーシップ」という国際的枠組みがあって、2007年からはその日本フォーラムにも参加して、アドボカシー活動を行っています。
 昨年は、子どもの権利条約が国連で採択されて30年ということで、合同出版から『世界中の子どもの権利を守る30の方法』という本を多くの方のご協力を得て出版しました。同時に、マイノリティの子どもの声を聴くプロジェクトも開始しました。
 C-Rights自体は1992年に設立され、(1)子どもの権利の普及、(2)南の子ども支援、(3)開発教育を三本柱に活動してきました。具体的には、日本人とフィリピン人の親から生まれたJFC(Japanese-Filipino Children)の子ども支援や、インド児童労働プロジェクト、カンボジアでの活動です。
 ミッションに、子どものエンパワーメント、大人のエンパワーメント、社会のエンパワーメントを掲げています。「子どものエンパワーメント」は、ご存知の方も多いと思いますが、子ども自身が権利を知って権利意識を持ち、何か嫌なことをされたときは「これは嫌だ」と言ってもよいということを知ったうえで行動する、そして自分だけでなく仲間も守ることができるようになることを大事にしています。

子どもが自分の気持ちを声にだせるよう支える

甲斐田 カンボジアは「親には逆らうな」という文化がありますが、子ども自身が家庭内で親や家族に自分の権利を主張できるようになること、性的搾取が深刻な中、人身売買の被害にあわないように危ない出稼ぎに行かない、もっと勉強したいということを中学生が言えるようになることなどを大切にしてきました。

問題分析 どうして学校に通えなくなっちゃうの?

 子ども自身が地域の問題を分析して、なぜ子どもが出稼ぎに行かなくてはいけないのかを学んだうえで、地域の人にわかってもらうよう声をあげる必要があります。その背景としてこの地域は、ベトナムに物乞いに行くことが多いんですが、そのため親から物乞いに行くように言われたときに、親に「行きたくない」「学校に行きたい気持ちをわかってほしい」と声をあげられるようにしてきました。十分な教育を受けることが難しい地域でもあるため、物乞いでお金を稼ぐより、教育の大切さを理解してもらう活動もしました。物乞いに行き、ベトナムから帰ってこない子もたくさんいるのですが、「帰ってきて学校に通いましょう」と子ども自身が訴え始めています。

子どもを物乞いから学校に戻って欲しいと、約200名の子どもたちがタナオコミューンの約6キロの距離を2時間かけて行進

 子どもたちが自分の人生を選び取っていくこと、大人が子どもの気持ちや意志を無視して利用するばかりではいけないと考えるようになること、それが私たちの目指す「子どもにやさしい社会」につながっています。子どもの権利をまもるシステム、制度がとても大切で、カンボジアではコミューン評議会という町村議会のようなところに、子どもクラブの代表が定期的に参加して意見を言える仕組みもできています。
 こうしたカンボジアでの事業を参考にしながら、日本の子どもたちのことにも関わっていきたいと昨年からは、ソーシャル・ジャスティス基金の助成によって活動を始めました。3つのグループ(LGBTの子どもたち・外国につながる子どもたち・不登校の子どもたち)に子どもの権利を伝えながら声を発する機会を提供します。どんなことで辛い思いをしているかを話してもらい、それをアドボカシーカフェというイベントで発信してきました。そこでわかったのは、親だけでなく、学校の先生の無理解で苦しんでいる子どもたちが多いということでした。そして、そのことが権利侵害だということも理解されていないということでした。

甲斐田 今日は、5つの点についてお話ししたいと思っています。これからお話する事業は、アーユスから助成をいただいて始めることができるものです。私自身、1990年にアーユス創立者の茂田さんにお会いしたのち、組織強化などいろんな場面でご支援いただいてきました。今回は大人とパートナーシップをもって社会を変える力を持っている子どもたちの声、特にマイノリティの子どもたちの声がきかれていない状況に、光を当てていただいたと思っています。
 今日は、コロナの影響で子どもたちがどうなっているかに関心を持って参加されている方も多いと思いますが、やはり日ごろの日本社会でそもそも子どもの声が聞かれてこなかった、それが今のコロナ禍での厳しい状況につながっていると思いますので、その前提についても時間を割いてお話ししたいと思っています。

 


60万円集まれば、もうひとつ、コロナ禍で光が当たらない人たちや課題に取り組む活動に協力することができます。ご協力宜しくお願い申しあげます。