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平和人権/アジア

平和人権/アジア2025/04/16

ミャンマーで行われようとしている選挙に関する共同声明


3月7日、ベラルーシを訪問したミンアウンフライン軍最高司令官が、「自由で公正な選挙を行う」と述べ、1年以内には選挙を行うことを示唆したことが報道されました。

4年前の違法なクーデターで権力を奪取し、多くの人命を奪ったり不当な拘束を繰り返しているミャンマー軍の実施する選挙が、「自由で公正な選挙」になりうるとは考えられず、アーユスを含むNGOのグループでは、下記の声明を2025年4月1日付で発出しました。

そして、4月16日に日本外務省に提出しました。

*本声明の内容は、3月28日に起きたミャンマー大地震以前の状況に基づき作成したものです。


2025年4月1日

日本政府はミャンマーで行われようとしている虚偽の選挙を認めず、
ミャンマーとの関係を再構築してください

●全文はこちらのリンクをごらんください。(呼びかけ団体のひとつ、メコン・ウォッチのページに移ります)

ミャンマーで軍によるクーデターが起きてから4年2ヶ月が経ちます。

この間、確認されているだけでもミャンマー軍によって6,435人が殺害され(2025年3月21日時点 政治囚支援協会)、350万人を超える人びとが国内避難民となっています(2025年3月3日時点)。不当に拘束されている人たちはここ数年、2万人以上で推移しています。独立系シンクタンクの戦略研究所(ISP)のデータによれば、軍の体制による「恩赦」が繰り返され10万人が釈放されていますが、そのうち政治囚の割合はたった8.6%でしかありません。

ミャンマー軍の統制下にある国営メディアは、ミンアウンフライン軍最高司令官が3月7日に訪問先のベラルーシの首都ミンスクで、「自由で公正な選挙を行う」と述べ、「今年の12月か来年1月に実施する計画だ」と発言したと報道しました。

各地で戦闘が激化し、数百万人が避難民となり住む場所を追われ、政治的な発言の自由もない上に、前回の選挙で圧勝した与党の国民民主連盟(NLD)は、2023年3月にミャンマー軍により政党登録を抹消されており、選挙に参加できません。また、地上戦で敗北を続けるミャンマー軍の支配地域は、国土の14%という指摘も出ています。軍は更に、支配を失った地域に空爆を繰り返しています。空爆は、クーデター以降2024年10月までに確認されているだけで7千回にも及び、今も続いています。

このような状況で、違法なクーデターで権力を奪取し2020年の選挙で選ばれた政権を崩壊させ、人々を殺害し、住む場所から追い立てているミャンマー軍が実施するものが「自由で公正な選挙」にはなりえません。また現状、多くの支配地域を失ったミャンマー軍には、全国で選挙を実施する能力もありません。

一方、ミャンマー軍に抵抗する人びとは、カレンニー州をはじめ各地で自治を確立しつつあります。日本政府は市民グループなどから積極的に情報収集を行い、人びとによる自治を積極的に支援すべきです。

日本政府はこれまで、バングラデシュでのロヒンギャ・ムスリムの難民キャンプ支援など、ミャンマーに関する人道的な援助を続けています。それらは評価されるべきですが、クーデター以降のミャンマー国内向けの支援については、ミャンマー軍を利する可能性もあり、ミャンマーの市民から懸念の声が上がっています。また、私たちは、クーデター以降、日本からミャンマーへの経済支援を一旦停止すべきだと主張してきました。現在、日本政府はおよそ7,396億円の政府開発援助(ODA)の円借款事業を未だに続けています。その中には、バゴー橋建設のように、サプライチェーンに軍系企業が含まれるものもあります。継続しているODA事業については、「クーデター前に、NLDを中心とする政権との間において国際約束を締結した案件」であり、「ミャンマー国民の生活向上や経済発展に貢献することや、また人道的なニーズに対応することを目的とする」ためと説明し、継続しています。外務省は同時に、受注企業が事業契約を一方的に解約すると、多額の違約金支払を求められたり、また法的に訴えられたりする可能性があることも指摘しています。

クーデター前の約束相手が既に消滅しており、また、ミャンマー市民が軍の行為でこれほどの困難に遭遇している中、「ミャンマー国民のため」という理由は詭弁でしかなく、日本企業の不利益を避けるためにODAを継続しているように見えます。また、現状での円借款供与は、軍の体制に異を唱えるミャンマーの多くの人びとにとって、不当な債務となる危険性のある資金の流れです。

また、軍の兵器などを調達する兵站局という部局と、現地企業を通して土地賃貸の契約を交わしているヤンゴンの軍事博物館跡地再開発事業(通称Yコンプレックス)には、国土交通省が所管する海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)が出資と債務保証を行なっています。2024年6月にJOINが2023年度の決算で約799億円の損失を計上したことが明らかになりましたが、これにはYコンプレックスの出資分約56億円と、民間銀行への債務保証約63億円が含まれています。JOINは未だに、ミャンマーの状況が改善されれば事業の実現に取り組むと主張していますが、Yコンプレックスが軍を利する構造のままであることは変わりません。この事業には、財務省所管の国際協力銀行(JBIC)が日本の民間銀行と協調融資を行なっています。

以上の点を踏まえ、私たちは日本政府に対し次の点を要請します。

  1. ミャンマー軍の体制が実施しようとしている「選挙」と称するものを、日本政府は支持しないと
    公式に表明してください。
  2. ミャンマー軍の暴力が停止し、軍が恣意的に拘束した全ての人々が解放され、かつ、国民統一政府(NUG)や民主化を求める市民、少数民族抵抗勢力等を主体とした民主化移行プロセスへの復帰が具体化するまで、ミャンマーに対する円借款事業は一旦これを全て停止してください。
  3. Yコンプレックスは軍に利益をもたらさない形でJOINとJBICの関与を終わらせてください。
  4. 国民統一政府(NUG)や少数民族地域の各グループ、また市民グループなど幅広いステークホルダーと対話し、生存を脅かされている避難民へ国境を越えた援助ができる体制を、国際社会と共に築いてください。
  5. 在外のミャンマー人コミュニティや市民社会グループと積極的に情報交換や交流を行い、ミャ
    ンマーの現状に合わせた外交を構築してください。

呼びかけ団体:
アーユス仏教国際協力ネットワーク、アジア太平洋資料センター(PARC)、国際環境NGO FoE Japan、日本国際ボランティアセンター(JVC)、武器取引反対ネットワーク(NAJAT)、メコン・ウォッチ