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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2020/08/23

【街の灯トーク#6】コロナ禍で追いつめられる子どもたち⑦


子どもの声が社会を変える力になる

井上 盛りだくさんな内容を駆け足でお話しいただきありがとうございました。では、皆さんからの質問を受けていきたいと思います。まず、国際子ども権利センター(C-Rights)は、インドあるいはカンボジアで取り組みをされてきたのが、日本国内に着目するようになった経緯を教えていただけますか。

甲斐田 いくつかきっかけはあるのですが、ひとつはSDGsが採択され、私たちNGOが途上国だけでなく先進国国内の問題も解決していかなくてはならなくなったことです。そもそも日本でも、子どもの権利が守られていないことはずっとC-Rightsは言い続けてきましたが、具体的な活動をするにはSDGsが大きなきっかけになりました。
 もうひとつ大きかったのは、私も所属する「子どもの権利条約総合研究所」のイベントで 、「多様な背景を持つ子どもたち」というシンポジウムがあり、それぞれのマイノリティのグループの代表の方たちから、今のマイノリティの子どもの現状を聞いたことです。LGBTの子ども、難民の子ども、障害を持つ子ども、外国にルーツを持つ子どもの4つのグループからの現状報告が、子どもたちがありのままの自分を出せないと、聞いていてすごくつらくなる話ばかりでした。たとえば、LGBTの子どもは「カミングアウトするのも地獄だし、しないのも地獄だ」という話や、川崎の朝鮮人集住地域である桜本保育園の近くでヘイトスピーチに苦しんでいる子どもたちの話を聞いた時、カンボジアやインドも大変だけれど、国内でもこんなにいまだに権利侵害されている子どもがいるならなんとかしたい、と思ったのが、ふたつめの大きなきっかけです。

井上 海外での経験は、今の活動にどう生かされていますか。

甲斐田 途上国の経験を活かせるのは、子ども自身が大きな発信者になれること、子どもたち自身が抱えている問題を発信できるし、変えていく力になることを知っていることです。子どもから子どもへ伝えていくことで、人身売買・児童労働をなくしていった子どもがインドやカンボジアにいたということがあります。子どもから子どもへのメッセージのパワフルさを、日本でもぜひ生かしていきたいと思っています。

井上 次の質問です。「日本政府は勧告に反して、子どもへの差別解消処置を十分に対策していないということですが、なにが妨げる要因になっているのでしょうか」。

甲斐田 ひとつには、日本政府のあり方が、移民を「ともに暮らしていくパートナー」というよりは、労働力としてしか見ていないことがあります。労働力なので、親は来てもいいが子どもは連れてこないでほしい。超過滞在者の親が祖国に帰らなくてはならないとき、子どもが残される。子どもが家族といっしょに暮らす権利を考慮しようとしていません。非常に保守的な「日本は日本人だけでやっていくのだ」という考えがとても根強いんじゃないかなと。だから難民も認定しませんし、朝鮮学校だけが高校や幼稚園の無償化から外されます。非常に民族的な差別感覚を持った政府の政策があると思います。

井上 やっぱり、ほかの国と比べても日本が遅れている部分が多いですが、教育のあり方の影響が大きいでしょうか。

甲斐田 そうですね、教育の問題に加えて文化的な「和を重んじる」というか「空気を読まないとだめ」「違っていることはダメ」「出る杭は打たれる」、そういった考え方が根強く、違っていたら排除されることが、子どもの差別問題にも大きく影響していると感じています。
 人権教育は「思いやりを大事にする」ことだと思われることがありますが、それは和を重んじることになり、不当な扱いをされたときに我慢することにつながってしまいがち。人権とは、「思いやり」ではなくて、「一人一人が違っていい」「ありのままの自分でいい」ということを大事にすることです。「相手のことを思いやろう」という道徳的なことばかりを重視するのではなく、子どもたちが泣き寝入りをしないように「ノー」と主張できる教育が必要だと思います。

井上 先ほど、コロナ禍でのたいへんな事例を伺いましたが、公的なサポートを充実させようとか、そういう動きは最近でも見られませんか。

甲斐田 わたしは川崎に引っ越したんですが、LGBTの相談窓口があります。神奈川県にもありますね、NGOと提携して研修などもやっています。子どもの権利条例ができているところだと、子どもの意見も聞きながら、マイノリティの子どもを守ることも進んでいますが、自治体によって大きく差が出ているのではないかと思います。教育委員会によっても違いがありますね。外国につながる子どもたちに対してきちんと教育を保障しようというところと、そうでないところがあります。
 世田谷区などは、子どもの権利条例ができてから、職員が「子どもの最善の利益」という原則を言うようになったと聞きました。このように自治体ごとで違いが出ないように、国できまりができて、すべての自治体で守っていくことを当たり前にしていかないといけないと思います。

井上 次の質問です。「国内で子どものアドボケイトの仕組みをつくっていくうえで、行政で設置されるのがよいか、外部がいいのか、望ましいシステムについて伺いたい」。

甲斐田 いま、児童福祉協議会のなかでアドボケイトの仕組みをつくろうという動きがあるようなのですが、私は両方あっていいと思っています。大阪や名古屋の子どもアドボカシーセンターのようにNGOが携わってもいいし、行政がやるのも大切で、両方とも関わる人をきちんと養成することが大切だと思っています。
 例えば児童相談所って、そこで働きたくて働いている人と、しかたなく働いている人とがいますよね。しかたなく働いている人に子どもが虐待を受けて相談に行ったときには、子どもにとってものすごくしんどい状況になると思います。「もう二度と児童相談所に行きたくない」と子どもが言ってしまうようになったりする。ですから、きちんと子どもの声を聞き、子どもの心に寄り添える人を養成したうえで、行政にもNGOにも子どもアドボケイトの制度をつくっていくことが大事だと思います。

井上 次の質問です。「マイノリティと一言にいっても、多くの背景があることがわかりました。それぞれにサポートする団体があり居場所も生まれていることがわかりましたが、マイノリティ同士の連携はあるのでしょうか」。

甲斐田 さまざまな属性を持っていることでさまざまな差別を受けることがありますね。遠藤まめたさんが言うには「LGBTだから不登校になることもある」と。関係していることはたくさんあって、LGBTで外国ルーツの子どもが不登校になることもあると思うのです。そこには三重の差別があるわけです。なので、私はもっとマイノリティグループがいっしょにやっていくことは大切で、一緒にたたかえることって、たくさんあると思うんですね。これからは、そういうグループ同士でつながることも大切でしょう。
 一方で、それぞれのグループで問題は山積しており、解決しなくてはならないことがたくさんある。ネットワークには労力がとてもかかります。ネットワークは大切だと思った人がやるべきで、必ずしも当事者がやる必要はなく、C-Rightsが必要に応じてそういったネットワークをつくっていけたらなとも思っています。

井上 「子どもの権利条約を実現するためには、政治家にも働きかけも必要と思いますが、関心をひく取り組みをされていたら教えてください」。

甲斐田 子どもに対する暴力撤廃フォーラムの一メンバーとして、政治家に働きかけることがあるのですが、例えば知人の山内康一さん(元・JICA、ピースウィンズ・ジャパン)が衆議院議員をされているので、SDGsのターゲット16.2である子どもに対する暴力の撤廃のための政府の行動計画について相談したところ、最終的に野田聖子さんにご協力をいただけることになりました。野田さんも子どもポルノ撤廃に熱心な方なので、子どもに対する暴力撤廃の議連をつくったらいいとアドバイスいただきました。ネットワークは大変ですが、ワールドビジョン・ジャパンやセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンなどのNGOとともに、議連結成を働きかけられるかどうか悩みながら検討しているところです。
 これからは、子どもの権利基本法ですね。元厚生労働大臣もされた塩崎さんを通じて議連を作ろうという話も出ています。政策を変え、法律をつくるために、政治家への働きかけは大切と思っています。

井上 「子どもたちが声をあげることは、少数者でなくても、日本社会ではとても難しいと感じています。まずはそれに気づかなくてはいけないので、違う文化に触れる機会を子どものころからつくるべきではないかと思います。学校・自治体・政府に働きかけて、教育システム自体を変えていくために、具体的にどのような活動をしていますか」。

甲斐田 子どもの権利条約第12条の「子どもは意見を言える」「大人は子どもの声を聞かなくてはならない」ことが知られていない。だから「子どものくせに」と言われてしまいます。学校で、もっと子どもの権利教育や人権教育がなされるべきだということは発信しています。
 また、自治体が何かをするときには子どもにも影響を及ぼすのだから、子ども条例を作り子どもの声を聴く仕組みを整えることが大切です。毎年、「地方自治と子ども施策シンポジウム」というのがあり、子どもの権利条約総合研究所がかかわっていますが、そこには「こんなに頑張っているのか!」と思うくらい熱心な自治体の方が集まっていますので、お互い刺激し合えると思います。

井上 ありがとうございます。話はつきませんが、そろそろお時間ですので、いったん終了したいと思います。最後に甲斐田さんから、皆さんへのメッセージをお願いします。

甲斐田 はい、3つあります。1つは、日本では19歳以下の死亡原因の1位が自殺なんですね。これは他の先進国にはないことで、今日お話したマイノリティの子どもたちは、自殺願望がとても高い状況です。そういう命を救うために、子どもの声を聴く人を増やしたいのです。関心のある方はぜひボランティア活動に参加してほしいと思っています。
 2つめは、子どもたちは辛い思いをして抱えているだけでなく、自分も役立ちたい、貢献したいと思っていることです。差別されていると自尊感情が低くなって自分はできないと思ってしまうのですが、自分もできるんだと知ること、仲間がいることを知ることでエンパワーされて、社会を変える力を得ることがあります。そのような子どもたちのパートナーになってほしいと思います。
 3つめは、C-Rightsが2年前から開いている子育て講座です。特にコロナで自粛になって、お母さんもお父さんもイライラし、それが子どもにも伝わって不安になって暴れたりということが起きています。4月から法律で体罰が禁止されましたが、どうしたらいいのかわからない親もたくさんいると聞いています。そんな親に向けてオンラインでも講座を始めました。この運営にも人手が必要です。「子どもの脳を傷つけないためにはどうするか」「自分が子どもを叩いてしまうかもしれないリスクを回避する」ということを中心にお話していますので、このオンライン講座の実現のためにも手を貸してください。
 また、カンボジアにもコロナの影響を大きく受けている子どもたちがいます。皆さんが日頃着ているかもしれない服を縫製している工場が、いまどんどん閉鎖されています。そこで働くお母さんが仕事を失って子どもたちにも影響が及んでいるので、お米や魚の缶詰など、まずは食料を支援する、そして、オンラインで学ぶことができるようにスマートフォンなどを提供したいと考えて寄付を募っています。

井上 ありがとうございます。関心を持たれた方は、ぜひC-Rightsのホームページもごらんください。では、短い時間でしたが今日は有難うございました。

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