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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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国際協力の寺

国際協力の寺2014/10/27

お寺でつくる「ホンモノのチョコレート」ワークショップ


IMG_1041台風が日本列島を縦断していた10月13日、「お寺でつくる『ホンモノのチョコレート』ワークショップ」が名古屋市にある西光院と櫻誓願寺で開催されました。

今回の取り組みは、西光院の大関住職、櫻誓願寺の近藤副住職、講師を務めてくれたAPLAの野川さん、それにアーユスが企画段階から協力して進めました。

「お寺でNGOがチョコレートを作る必然性があるのかな」という疑問を持たれた方もいるかもしれません。しかし、実はチョコレートって、国際協力を考えたり、食べものと私たちの間に展開している縁を考えたりするのに最適な食材なのです。

さて、ワークショップは1回2時間で、午前と午後にそれぞれのお寺で1回ずつ行われました。参加者はお檀家さんだけでなく、ご近所の親子、女子大生、NGO関係者、社会人、違う宗派のお坊さんなどバラエティに富んでいました。名古屋テレビさんも取材に来て下さったので、参加者のテンションも上がりました。

ちなみに、これまでもお寺でセミナーなどを行うことは多かったのですが、そのときと決定的に違っていたのは、ご住職・副住職のお子さんを始めとするご家族がフル参加されていたこと。準備から終了まで、がっつりとご活躍いただきました。

チョコレート作りは、煎ったカカオ豆の皮を剥くところから始まりました。剥いたカカオはすり鉢ですり、砂糖と豆乳を加えてチョコペーストとしていただきます。

IMG_1040その一方、固形のチョコも同時進行で作ります。まずカカオマス(煎ったカカオをすりつぶして固めたもの)とカカオバター(カカオマスから脂肪分を抽出したもの)を包丁で刻むのですが、カカオマスは固いので、刻むというより、削るという感じになります。子どもたちも親御さんたちの力を借りながら上手にこなしていました。

 

次に湯せんにかけて溶かすのですが、ここで水が入ると固まらなくなるそうなので、みんな少し緊張しました。溶けたら砂糖(ミルクチョコの場合は全脂粉乳も)を入れて混ぜ、温度をいったんあげてから、少し下げ、さらにもう再び温度を上げます。温度管理が重要なので、チームワークが求められました。
あとは型に入れ、好みでナッツやドライフルーツを加えて冷蔵庫で冷やし固めるだけです。ボウルについたチョコは子どもたちがきれいにスプーンですくって食べてくれました。ボウルを抱えて嬉しそうにしていた彼らの顔が忘れられません。

チョコレートが固まるまで20分ぐらいかかるので、その間、野川さんがパワーポイントを使って、チョコレートやカカオの話をしてくれました。カカオの実はラグビーボールのような形をしていること、中身は甘酸っぱくて美味しいこと、カカオ豆はその種であること、実を運ぶ時は頭にカバンのヒモをかける形で運ぶと楽なことなど、大人も子どもも大喜びで話に聞き入っていました。

収穫されたカカオは、発酵や乾燥、焙煎や粉砕、すりつぶしなど、かなりの人手と手間をかけて、チョコレートの原料であるカカオマスになります。カカオマスからチョコレートになり、消費者のもとに届くには、さらにまた多くプロセスを経ることになります。

この複雑で長いプロセスゆえに、チョコレートにはいろいろな問題が入り込むのです。例えば、カカオ農園で一日中働かされている子どもたちがいることはご存じかもしれません。学校へも通えませんし、成長期に重労働をすることは体に大きなダメージを与えます。子どもたちを犠牲にしたチョコレートを自分たちが食べているかもしれないという事実は、参加者の皆さんにショックを与えていました。

また、カカオ豆を不当に安く買いたたかれ、生活が成り立たない人もいます。私たちが安さを追求することのしわ寄せは、遠く離れた人たちのところにいくことも分かりました。

食べものが世界規模で回っている現在、食べるという行為はある意味で国際協力です。それがよい協力になっているのか、または誰かを苦しめることに荷担しているのかを考えてみる場として、お寺という会場は最適でした。

10460208_720457678048784_4382318177770147877_nさて、それぞれに思いを馳せたあとは、チョコレートの試食タイムです。チョコを型から外すと歓声があがりました。ビターチョコやミルクチョコ、ナッツやドライフルーツ入りチョコ、チョコペーストなど、自分たちで作ったチョコはとても美味しく、感慨もひとしおでした。チョコは冷蔵庫で熟成させたほうがおいしくなるということで、残ったチョコはお土産としてみんなで分けあいました。

ところで参加者の皆さんが受け取ったのはチョコレートだけではありません。カカオのいのちも確かに一緒に受け取ってくださっていました。芽を出して、大きな木になれたかもしれないカカオ豆が、自分のいのちを私たちに差し出してくれたこと、その重さを実感できるワークショップだったと思います。

今回のワークショップは参加者の満足度も高く、イベントとしても大成功でしたが、チョコレートから社会やいのちのつながりを考えるための種まきとしても良いものになりました。そこから芽が出て、花が咲き、豊かな実りに結びつけばいいなと思っています。生産者や加工者、販売者、消費者・・・関わる人たちを幸せにするチョコレートが広がること、それこそが私たちにいのちを差し出してくれたカカオ豆の本願なのかもしれません。(三村紀美子)