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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2021/06/24

総会セミナーでアクセプトの活動を伺いました


 2021年6月16日(水)に行われた会員総会の後、2021年度からアーユスのNGO組織強化支援の対象団体になったNPO法人アクセプト・インターナショナル代表理事の永井陽右さんを講師に、「テロを止める、紛争を解決する」と題した総会セミナーを開催しました。

 冒頭、永井さんは自身の社会との関わりはいじめをしていた後悔と反省にあり、それが今の活動にもつながっていると語ってくれました。勉強ができずに落ちこぼれていた過去を振り返りつつ、大学に入学してからすぐに「比類なき人類の悲劇」であるソマリアの現状を知ることとなり、日本を含め世界中から見捨てられたソマリアのためにできることを考え、すぐに行動を起こした経緯などが紹介されました。「危険すぎるから行くな」「君には何もできないよ」「もっと英語ができるようになって経験を積まないと無理」「別の国から始めたら」などという大人たちの反応に対して、「そういう大人は危険だからといってソマリアを見捨てているではないか」と反発しつつ、「何ができるか分からないけどやるべきことであることはわかった」と一念発起。大学の仲間を募り、ソマリア紛争孤児の留学生から情報を得て「学生だからこそできることをやろう」と、アクセプト・インターナショナルの前身である「日本ソマリア青年機構」を2011年9月に立ち上げた経緯を話してくれました。

 最初の活動は、日本への留学斡旋とサッカー用品を集めて現地へ送るプロジェクト。でもそれをやる意味が本当にあるのか疑問を感じるようになり、とにかく諸問題を生み出しているテロや紛争の実態をこの目で見るために、まずは現地でテロ組織と関係のあるギャングたちの素顔を知ろうと飛び込んだのが今の活動に繋がる大きな転機になったといいます。多くの危険を伴いながらも彼らとの交流を通して脱過激化に関わる意味が少しずつ分かるようになり、イギリスの大学で紛争研究を学ぶ中でテロと紛争の問題に組織として取り組んでいくことの必要性を痛感し、2017年4月に団体名を「アクセプト・インターナショナル」に改称し、テロ組織投降兵・服役者の受け入れを開始して、テロと紛争の問題解決に取り組み始めました。今では、過激化防止と脱過激化・社会復帰の2つを中心に、対話を通じて、脱過激化ワークショップ、宗教再教育、和解セッション、カウンセリング、職業訓練、ライフスキルトレーニングなどを行いながら、テロと紛争の問題解決に取り組んでいます。現在は、ソマリアだけでなく、イエメン、ケニア、インドネシアでも活動を展開しつつ、新型コロナウィルス対策などの緊急人道支援や日本国内での更生支援や在日外国人の支援なども行っています。

 SDGs(持続可能な開発目標)は、「誰一人取り残さない」という標語を掲げるものの、ソマリアの多くの若者たちは世界から取り残されていることに絶望と増悪の念を持っているとのこと。だからこそ刑務所から釈放後も決して一人にはしないことを基本に、日本人というポジショナリティを活かしながら社会側との和解を促進するために、独自の脱過激化・社会復帰のアプローチ/モデルを構築し、それは国際社会からも高く評価されるようになっています。これまでの活動で、テロ組織の投降兵89名、逮捕者88名の脱過激化・社会復帰に成功し、ソマリア人ギャング171名の脱過激化・社会復帰と一つのギャング組織を解散させるという成果をもたらしています。それらの活動のソーシャルインパクトは約21億円とイギリスの統計調査機関から評価されています。

 これまでの10年の活動を振り返ると、前例はない中で常に手探りの状態から始め、理解されにくい分野・対象・場所であり続けてきたにもかかわらず、裏技もなくひたすらまっすぐ歩いてきた結果、活動に参加する人も少しずつ増えており、確かな手応えがあるとのこと。これからも日本からテロと紛争のない世界の実現に向けて、そして真の「誰一人取り残さない」社会に向けて行動しつつ提言も積極的に行い、新たな前例を創る気概を持ちながら常に前に進んでいきたいと力強く抱負を語ってくれました。

 今や国内外から注目される「アクセプト・インターナショナル」。アーユスも組織強化支援を通じてその動向を注視しつつ、互い学びあいながら活動を高めていきたいと考えています。(井上 団)