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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2018/08/14

7/19「朝鮮半島の緊張緩和と地雷問題」シンポ開催


 今年4月に、韓国と北朝鮮による南北首脳会談が板門店で行われ、朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言が表明されました。その後、6月12日には初の米朝首脳会談も開催され、かつてなく朝鮮半島の情勢が大きく動いています。こうした中、南北緊張緩和を議論する上で重要なテーマである韓国の地雷問題について、韓国対人地雷対策会議(KCBL)の創立に関わり、NGO「Peace Sharing Associeation」の理事長である趙載国氏の講演会を、7月19日に地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)と共催で早稲田大学にて開催しました。激動する朝鮮半島情勢を韓国の人たちはどう受け止めているのかをお聞きし、韓国の地雷対策(埋設地雷や貯蔵地雷の処理、地雷の被害者への支援等)に関する最新情報を伺い、余り知られていない韓国の地雷問題の実情を知る機会となりました。なお、趙氏の講演に先立ち、朝鮮半島情勢に詳しい金敬黙氏(早稲田大学文化構想学部教授)より2つの首脳会談の評価と今後の展望についてお話を伺いました。金氏は首脳会談を「当面は成功」と評価しつつ、非核化に向けたプロセスは不透明であり、さらに今回の会談がメディアを巻き込んだ劇場型演出の側面が強いことに留意しながら、東アジアでどのように平和プロセスが築かれていくのか、日韓・日朝関係も含めて今後の動きに注目しているとコメントされました。

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 趙氏の講演で特に注目されたのが、軍事境界線の南側(韓国)にはいまだに127万発もの地雷がDMZ(非武装地帯)およびその周辺を中心に埋設されていて、これまでに民間人だけで1000人ほどの地雷被害者が存在すること。地雷の多くが1950年代の朝鮮戦争の際に埋められたと思われがちですが、その数は約20万発で、実は韓国も参戦したベトナム戦争の際に北朝鮮のゲリラ浸透を食い止めるため約107万発の地雷が埋設されたそうです。この中には、記録が残っていない未確認の地雷原も含まれます。一方、軍事境界線の北側(北朝鮮)には約80万発の地雷が埋設されていると推定され、その大半がロシア製の地雷であり、実際に南側に流れてきた地雷に触れて被害に遭う人もいるそうです。現在、韓国内にある地雷の除去作業は韓国軍が担っていますが、年間500個ほどを除去するのが限度で、未確認地帯の地雷も含めて完全に除去し終わるまで489年かかる計算になります。しかも地雷の埋設や撤去などの権限は国連軍(米軍)にあって、地雷を除去するにも国連軍の許可が必要となっています。

 韓国で地雷除去が急がれている背景には、南北間の交易を盛んにするために南北を繋ぐ鉄道を復元する上で地雷除去が不可欠なこと、DMZ内に韓国軍と国連軍合わせて1万2千名の遺骸が埋葬されていると推定され、その発掘には地雷を除去する必要があること、文化財の発掘調査のためにも地雷を取り除かなければならないこと、などが挙げられます。こうしたこともあって、現在韓国では、軍だけでなく民間団体/民間会社も地雷除去が出来るように法改正が議論されています。また、民間人の地雷被害者への支援は長年行われてきませんでしたが、2003年になって初めて「民間人のための地雷被害者のための報償法」が発議され、「支援法」と改名された後、2014年に施行令が公表され、2015年にようやく施行されています。これまでに536名の申請に対し、356名の審議が完了して約171億円の支援金が出されていますが、まだ資格がありながら支援を受け取れていない人や十分な額を得られていない人が多く存在し、継続的な支援が必要な状況が続いています。

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 今後、朝鮮半島の南北関係は少しずつ良い方向に前進していくと思われますが、その際に南北合わせて約200万発が埋設されているとみられる地雷の問題をどのように解決していくのか、関係改善に向けての大きな試金石になるだろうと思われます。この大きな難問を南北双方が乗り越えてこそ朝鮮半島に新たな希望の未来が見えてくるように思います。対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)への南北同時加盟は決して夢物語ではありません。