スタッフ雑記帳
スタッフ雑記帳2016/06/24ツイート
2016年度総会&総会セミナーを開催しました
6月7日に東京・江東区の長専院でアーユスの2016年度総会と総会セミナーが行われました。総会には27名が、総会セミナーには40名が参加。それぞれ会員の参加が少なかったのは残念ですが、総会セミナーには、アーユスとご縁のあるNGO関係者や難民問題に関心がある一般の参加者に多く集まっていただきました。総会では、2015年度の事業・決算報告および2016年度の事業計画案・予算案、さらに役員選任案がそれぞれ承認されました。事業報告では、昨年に引き続きアーユスの五大ニュースを発表。各事業の担当者がパワーポイントで写真を見せながら要点を整理して報告し、2015年度の活動状況を大枠で理解いただけるような内容にしました。2016年度の事業計画では、2015年度から始まった中期方針の内容を確認しつつ、中東、難民、安保関連、原発に依存しない社会/福島などの課題を注視していくこと、難民を生み出さない社会作りの視点を盛り込んだ活動を推進すること、物品寄付の充実化を図ること、認定NPO法人の強みを生かした寄附キャンペーンを実施すること、等の事業方針が示されました。
続いて行われた総会セミナーでは、2016年度からNGO組織強化支援事業の対象団体となった「なんみんフォーラム(FRJ)」の檜山怜美さん、石川美絵子さんを講師に、難民の定義や世界の現状、日本の難民受け入れの状況等についてお話を伺いました。
はじめに檜山さんからは、世界中の様々な難民の様子を伝える写真を見せながら、現在世界中で紛争または迫害から避難を余儀なくされた人が6,000万人以上に達していることが紹介され、その大半が発展途上国から発展途上国に避難していることが示されました。ヨーロッパに逃れるシリア難民等に世界全体の注目が集まっていますが、それはごく一部であり、大半がトルコ、レバノン、ヨルダン等の近隣諸国に逃れています。また、難民条約上の定義から「難民」とは誰のことを指すのか、改めて認識を深めることとなりました。一方、日本と難民との関わりについてもインドシナ難民を契機として受け入れが始まった歴史や最近の状況についてお聞きしました。日本は11,319人のインドシナ難民を受け入れた実績があります。しかしながら、2015年に日本へ難民申請を行ったのが7,586人であるのに対し、難民として認定を受けたのはわずか27人。人道的な配慮が必要として特別に在留が認められた人も79人に留まっています。日本への難民申請者は近年急増しているのに対して、認定されるケースが微増であり、まさに難民認定の見直しが求められているといえるでしょう。さらに、FRJが支援した人たちの声が紹介されましたが、日本で平和で安心した生活を享受できることに喜びを感じる一方、難民認定審査にかかる期間の長さなど不安定な状況が続くことに耐えられないとの悲痛の叫びもあって、こうした難民や難民申請者の声が日本社会になかなか届いていない現状が、難民問題への関心が今ひとつ高まっていない背景にあるように思われます。
続いて、石川さんが参加者の質問に答える形で、特に現在の日本の難民受け入れ制度の問題点や受け入れを進めていく上で障害になっていること、ご自身が難民をめぐる問題に関わり始めた経緯などをお話いただきました。石川さんのお話を聞いて、インドシナ難民は国際社会からの圧力があって受け入れを始めた経緯もあり、以後の日本はその時にトラウマに縛られて難民受け入れに必要以上に慎重な態度を取ってきたことは否めないと感じました。また、先の戦争で民族の一体性や同質性が強調された過去を引き摺る形で、社会の中には異質な人たちに対する警戒心が未だに根強く残っているように思います。多様性を尊重するという部分で世界からは大きく後れを取っていることを改めて実感させられました。難民問題は決して遠い海外の出来事ではなく、身近に多くの難民や難民申請者が存在し、その数が年々増えている現状を直視することが求められています。こうした難民や難民申請者に対して、いかに温かい気持ちを持って受け入れていくことができるのか、まさに私たち自身が問われていると言えるでしょう。
今年度からFRJへの組織強化支援が始まりましたが、今後もアーユスは、難民をめぐる問題について学び議論する場を創っていきたいと思っています。これまでアーユスと関わりのある仏教者やNGO関係者のみならず、難民問題に関心のある多くの人たちとこの問題を考えていきたいと思います。(井上 団)