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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2014/12/09

揖斐川流域で取り組まれている地域づくりを学ぶ②


 アーユス国内スタディツアーの2日目は初雪が舞う中でのスタートとなりました。最初はちらほらと降っているぐらいでしたが、標高の高い徳山ダムに着いた頃には吹雪になっていて、ロックフィルダムを一望できる展望台は一面が銀世界。皆さん寒さに耐えながらの見学となりました。

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 この徳山ダムは、総貯水容量が6億6千万立方メートルという多目的ダムとしては日本で最大規模を誇り、当初は揖斐川の治水と東海三県の水がめとして1950年代に建設が計画されました。その後、発電用ダムとして計画が改められ、再度多目的ダムに改められるなどの紆余曲折を経て、2008年に完成しました。この間、水の需要が大幅に減少し、ダムそのものの必要性が問われ続け、ダム建設に反対する声が高まりました。そうした中で住民への補償交渉と住民の集団移転は続き、それらが完了した2000年に本体工事が始められ、その8年後に完成したのでした。こうして、3500億円もの建設費用と466戸約1500人の移転という代償を払って作られたダムですが、いまだに本格運用には至っておらず、悪天候で視界が悪い中で浮かび上がったとてつもなく巨大なロックフィルダムは、まさに無駄な公共事業を象徴するような印象を受けました。

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 続いて、徳山ダムが建設される経緯やダムに沈んだ旧徳山村で営まれていた昔ながらの暮らしを紹介する徳山会館では、運営を担当する徳山村の元住民の方から移転が始まった当時の様子を伺うことができましたが、言葉の端々から生まれ故郷を去らなければならなかった無念の思いを感じました。徳山村を記録したいと60歳を過ぎてからアマチュア写真家となって、8万枚もの写真を残した元住民の増山たづ子さんの写真が館内の至る所に掲げられていて、農作業に精を出すいきいきとしたお年寄りの表情や、運動会で颯爽と走る子どもたちの姿、お祭りで汗だくの青年たちの写真などをみると、厳しい自然環境に置かれていたとはいえ、徳山村の人たちは平和で豊かなコミュニティを築いていたことがよく分かりました。いかにダム建設によって多くのものを失ったかを思い知らされます。

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 最後に、徳山ダムからほど近い旧坂内村の限界集落と言われている地域を訪問しました。外部から来た人たちの宿泊にも使われているという古民家で、元村長の田中正敏さんから集落の現状や毎年行っている秋祭りの様子についてお話を聞きました。秋祭りに来た人には自慢の米で炊いたおにぎりが振る舞われ、スタンプラリーで集落の至る所を巡れるようになっており、行く先々で住民の歓待を受けるそうです。また、とびっきり新鮮な野菜や焼きたてのパン、手作り品を買ってのんびりと散策を楽しむことができるなど一日中楽しめるように工夫されているそうで、当日は遠方からも多くの人が来るとのこと。こうした取り組みを通じて、少しでも集落に活気をもたらそうと奮闘されている田中さんの姿に感銘を受けました。訪れた日は辺り一面が雪で覆われて、集落の美しい晩秋の風情を楽しむことはできませんでしたが、逆に冬場の厳しい生活の一端を体験することができたかなと思います。

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 以上、2日間のスタディツアーでは地域づくりについて様々な気づきや学びがありましたが、こうした経験をアーユスとして日本の地域社会とどう向き合っていけばいいのか考えるきっかけにしたいと思います。さらに、アーユスがいまもお付き合いさせていただいている福島の人たちとの関係づくりにも活かしていければと考えています。