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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/アジア

平和人権/アジア2022/06/29

見知らぬ国からまた会いたい人がいる国へ


コロナ禍のなか、スタディツアーや対面での交流はほぼ遮断されて2年が過ぎました。今ではオンラインでのやりとりが広く普及したことから、ネットにつながることさえできれば、大きなお金をかけずにほぼ世界中とのやりとりが可能にもなっています。オンラインツアーが企画されたり、同じ関心を持つ人同士が直接つながったり、と一気に世界が広がった人も多いことでしょう。

しかし、アーユスが参加している「KOREAこどもキャンペーン」は、オンラインで繋がれないためにコロナ禍の影響を大きく受けました。まさに日本から近くて一番遠い朝鮮民主主義人民共和国とは、往来はおろか郵便物のやりとりすら難しくなったためです。

国交もなく、日本に暮らしていると接するのは否定的な情報ばかり、話が通じないし安全を脅かす存在でしかないと思われている「北朝鮮」ですが、KOREAこどもキャンペーンは私たちの足元である東北アジア地域の平和を「国」と「国」との関係改善にのみ求めるのではなく、「人」と「人」とのつながりや信頼を積み重ねることで危機的な状況となっても助け合ったり暴力を止める手段にならないだろうかと考えてきました。1990年代の北朝鮮人道支援からつながったパイプを、実際に往来はできなくても人同士の関係からつなごうと子どもの絵画交換を続け、2012年からは直に会って同世代の人たちと対話をしてみようと考える大学生とともに平壌をほぼ毎年訪問し、朝鮮の学生たちと交流してきたのです。

メールやSNSでのやりとりも難しい場所だからこそ、「人」同士がつながるには実際に足を運ぶしかありません。心理的にも経済的にも負担は軽くないなかで、それでも足を運んだ学生たちはどんな「交流」を積み重ねてきたのでしょうか。その過程を振り返り、今さらに情勢が厳しくなってくるなかでもなお、信頼関係づくりをあきらめないのはなぜかをいま一度考え、これからの礎としようと、KOREAこどもキャンペーンは、2012年から2019年までの軌跡をまとめた冊子「日朝大学生交流の軌跡」を過去の参加学生たちの協力のもと作成しました。

日朝の交流は、事前打ち合わせも十分にはできないといった事情もあり、交流できる時間が少ない、思いもよらない話題が出て受け止めきれない、話し合ってみようと思っても慎重になってしまう…いろいろな葛藤がありながらも、日常のあるある話をたくさん交わして「そうだよね!」と共通点を見つけ、「また会いたい人、ともだちができた」「よし、戻ったらもっと勉強して、次はこんな話をしてみよう!」と前向きな思いを抱いて別れた日朝双方の学生の様子が掲載されています。
見知らぬ国、敵対する国であっても、「そこにひとりの友人がいることで、その国を身近に感じる」ことの積み重ねが、平和な未来をつくる土台になるのではないかという希望を抱かせてくれます。

2年の間、実際の交流はお休みせざるをえない状況にあります。でも交流自体が途絶えているこんなときだからこそ、対話不在で不信感を募らせる時期とするのではなく、過去の学生たちの経験を共有しまた日本のなかで学べることを吸収していく準備の時期と考え、2022年度は「東アジア大学生ピースフォーラム」を進めています。日本周囲の脅威がことさら喧伝される現在ですが、それでも対立に与するのではなく対話に挑戦する仲間が集える場になればと願っています。

※冊子「日朝大学生交流の軌跡2012-2019〜見知らぬ国からまた会いたい人がいる国へ」や、東アジア大学生ピースフォーラムにご関心のある方は、KOREAこどもキャンペーンまで。