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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/アジア

平和人権/アジア2020/04/10

隣人を思いやることから


COVID-19への警戒が高まり始めた3月上旬。感染防止のために幼稚園や保育園に備蓄マスクを配布しているさいたま市が、埼玉朝鮮初中級学校の幼稚部を配布対象から外していたことが報じられました。民族教育をおこなう朝鮮学校は、学校教育法では各種学校に分類されます。市が指導監督する施設ではないため、担当者が「不適切に使用された場合、指導監督できない」「(転売を含む)不適切使用の恐れがある」と説明したとの報道には、あまりにあからさまな差別ではないかと抗議の声があがりました。それ以前に、どんな人にも等しく行きわたらせることがより効果的な感染防止となることは、公衆衛生の大原則です。

これは韓国でもニュースになり、さっそく韓国では「朝鮮学校にマスクを送ろう」のムーブメントが起き、3月末にはさいたまの朝鮮学校に1万6千枚のマスクと支援金が届くことになりました。

アーユスが関わる「南北コリアと日本のともだち展」の韓国のパートナー団体からも、問い合わせがありました。
「韓国では大変だ!となったら、みんなすぐ動きたがるじゃない?うちにも『なにか協力できませんか』と問い合わせがあったり、『ぜひ使ってください』と2枚とか3枚とかマスクを送ってくる人がいるんだよ。最近、韓国ではマスクが手に入るようになったけど、日本はまだマスクが買えないって本当なの?送る手段さえ見つけられれば、別に朝鮮学校でなくても、ふつうに学校でも病院でもいいから、日本で必要としている人にマスクを送るんだけど…」。

2月29日に記者会見を行った安倍首相は「来月(3月)は、月6億枚以上の供給を確保します」と話していました。わざわざお金をかけて海外から送ってもらわなくても、何とかなるのではないか?4月の新学期が始まるころには、さすがにマスクを手に入れられるかも?そんなことも頭をよぎりましたが、私の知る限り、マスクを売っている店は周囲にひとつもありません。「心配してくれて、本当にありがとう」という言葉が口をついて出ました。

3月末には、中国の友好都市からマスクが届いたというニュースが次々に入りました。中国の感染拡大が大きく報じられたとき、備蓄のマスクや防護服のなかから支援を送っていた豊川市には「10倍返し」、備蓄からは出せないからと一生懸命買い集めて送った北九州市には「769倍返し」だったといいます。

今や感染拡大は、東アジアだけでなく全世界的に深刻な問題となりました。国際線の運航が停止されているために身動きがとれなくなってしまった人も多いなかで、ケニアにチャーター便を飛ばした韓国政府は、ケニアに滞在していた日本人50人も出国できるよう席を融通してくれました。「感染拡大が深刻な韓国からの入国者は、入国制限措置をとって、発給したビザも無効!」「それなら、日本にも同じ措置をとる!」とやりあっていた3月初旬の荒んだ空気を思うと、やっと冷静に双方のためになる外交ができるようになったと、ほっとするニュースでした。

今回、「中国で新型肺炎が爆発的に流行している」と報じられた当初は、対岸の火事と思っていた人も少なくないでしょう。しかし、もともと中国と関係を築いていた人たちは、自分の「友人たち」のためにいち早く動いていたのだと思います。韓国の友人からかかってきた電話も、純粋に自分の知る「友人たち」が心配になったからでしょう。「国」という枠や「我々とよそ者」という壁にとらわれつづけることは、世界的な問題に向き合うときに何の助けにもならないと痛感します。ここまでグローバル化してしまったいま、「私たち」だけが安全でいられることは、ないのです。

中国製マスクは質が悪いからむしろ危険。韓国人は同胞のことになるとすぐ政治的に動く。日本人の税金で外国人まで助けるなんて。・・・SNSに日々流れていくそんな文字を見つめながら、「大変なときは、おたがいさま」と心のなかで何度も唱え、深呼吸する毎日です。(〒)