スタッフ雑記帳
スタッフ雑記帳2012/08/15ツイート
8/10 JVCイラク&パレスチナ事業の報告会
先週のアフガニスタンに引き続き、今回はJVCのイラク及びパレスチナ事業の報告会が行われました。報告者は、原文次郎さん(イラク事業担当)と津高政志さん(パレスチナ事業担当)です。
JVCのイラク事業は、イラク中北部のキルクーク県で、普段は民族ごとにある学校で学ぶため、交わる機会がない異なる民族の子どもたちを集めてワークショップを行っています。演劇やアート作品を共同で製作することで相互理解を深め、異なる民族や文化を尊重する意識を持ってもらうことを目的にしています。この「子どもたちとつくる地域の平和」ワークショップは、今回で4回目。まずはやってみるという段階から少しずつ進展が見られ、今では活動を通して、子どもの保護者や学校関係者、地域のボランティアらも参加して、子どもの権利や紛争解決の考え方などを学ぶ機会が設けられ、地域の中でこの事業に対する理解が広がっています。
イラクの情勢は2007年までの内戦状態からは脱却して、一定の小康状態を保っているようですが、政治的・経済的な利害関係の対立は解決しておらず、相変わらず不安定な状況にあります。キルクークは、アラブ、クルド、トルクメン、アッシリアなど多民族が居住する地域で、石油資源が豊富なため利害関係が複雑に絡まっており、こうした地域で異なる民族同士の相互理解を進め、地域住民として一体感を持つことが対立を和らげる大きな鍵となります。JVCが現地NGOと進めるこの事業が、まずは子どもたちの間での相互理解に結びつき、やがては大人の間での信頼関係の構築になれば、地域全体の平和と安定が大きく前進するものと思います。
一方、パレスチナはどうかというと、こちらもイスラエルとの関係がなかなか進展しておらず、イスラエルによる封鎖によって特にガザ地区は深刻な経済状況のままで、失業率の増加と物価の上昇が人々の栄養・衛生・精神状況を悪化させています。JVCはガザ地域の子どもたちの栄養失調予防を支援するため、主に健康や栄養に関する意識を向上するための教育活動を実施しています。その担い手となるのが地域の女性たちのよき手本であり、相談相手でもある母親リーダーたち。JVCは現地NGOと協力して、母親リーダーを中心とした健康・栄養に対する正しい知識の伝授、そのための料理教室の開催などを支援しています。
母親たちはとてもパワフルで、過酷な環境の中で生活していく上で彼女たちの家庭内外でのリーダーシップがそうした状況を改善させていく希望であり、鍵になっているように感じます。JVCではうまく機能している実践例をもとに、2012年4月からはガザ地区の別の地域で同様の取り組みを開始しています。こうした輪が広がっていくことを願うばかりです。