スタッフ雑記帳
スタッフ雑記帳2018/08/06ツイート
「国際協力NGOにとっての評価とは?」7/2開催
2018年7月2日に、シンポジウム「国際協力NGOにとっての評価とは?」を聖心女子大学で開催しました。当日はアーユス関係者も含めて46名が参加し、国際協力NGOの評価のあり方について、アーユスが支援したNGOの事例をもとに活発な議論が行われました。
当日は、まず前半にアーユスが評価支援を行ったACE、およびシャンティ国際ボランティア会から事例紹介をしていただき、後半は、その内容をもとに、明治大学教授でアーユス専門委員でもある源由理子さんがコーディネーターを務めて、事例を発表したACEの田柳優子さんと太田まさこさん、シャンティ国際ボランティア会の山本英里さん、アーユスから事務局長の枝木美香が登壇してパネルディスカッションが行われました。
ACEの事例は、インドのコットン生産が盛んな農村で子どもが児童労働から解放され、教育を受けられるようにして村の生活環境の改善を図る目的で、2010年から2015年まで行われた事業を評価するというもの。事業終了後、数年が経過した後に児童労働がない状態が継続されているのかを検証し、事業の自立発展性について教訓を得ることや、今後同様の事業を運営する際の参考/教訓として活かす目的で評価が行われました。妥当性、有効性、効率性、インパクト、自立発展性の評価5項目に基づいてインタビューやワークショップが行われ調査した結果、農民の収入向上やステークホルダーの能力強化に課題はあるものの、児童労働がない状態はほぼ継続されており、児童労働をなくして子どもに教育を受けさせるべきだと考えるなど、住民の意識啓発は順調に推移している点や、子どもが教育を受けられるような制度や仕組みが整いつつあることなどが確認されました。
一方、シャンティ国際ボランティア会の事例は、緊急救援事業における教育支援に係る評価を実施するという意欲的な取り組みであり、2016年のネパール地震の緊急救援事業で行われた教育支援に関する評価活動での経験や課題が共有されました。実際に緊急期の事業を行いながら成果目標と指標を立てるのが難しい点や、実施計画や定量データの取得が困難であることなどが提起されましたが、事業計画は緊急であっても開発課題を考慮すべき点や、事業フローの中で調査・計画・M&Eを明確にする必要があること、平時からのアクティビティツールのパッケージ化が有効であることなどが挙げられました。また、こうした評価の結果はインタビューに協力した住民にも共有されるなど、参加型で行われた点も特質すべきものがあります。
続いて行われたパネルディスカッションでは、特に、①評価を行ったことで活動の見直しや改善に結びついたか、②評価を行ったからこそ気づいた点、③評価を行う上で困難だったこと、の三点について議論が行われました。
評価を行ったことでよかった点として、評価を行った事業に関する新たな気づきや改善すべき点が得られたこと。評価結果が組織としての蓄積となり、評価を実施したスタッフのキャパシティ・ビルディングにも結びついたこと。事業の中でどのような取り組みが有効だったかを判断できる材料が得られたこと。評価で出された結果を次の事業で活かすことが出来た点などが挙がりました。逆に、困難を感じた点について、評価を一緒に実施した現地のパートナーNGOに当初は評価の意義や目的を理解してもらうのが大変だったという点や、ドナーが期待する成果と団体自身が求める成果にズレが生じ、どこに焦点を定めて評価を行うべきかについて試行錯誤を繰り返していることなどが紹介されました。こうした問題点を克服するには、評価を何回か実施することで評価の学びのプロセスと評価結果を共有することが大事との指摘がありました。さらに、評価を行う上でかかる費用をどう賄っていくかについても議論され、2017年度で一旦終了したアーユスの評価支援事業の復活を願う声が多数聞かれました。
こうした議論を踏まえて、NGOにとって評価を行うことの意味や評価を行った先に見えてくるものが活動のさらなる発展に必要不可欠であることを改めて認識することになりました。評価をひとつの文化として創っていくこともNGOに期待されることなのかもしれません。アーユスではこれまで評価支援を行ってきた経緯から、今後は評価について様々な角度からとらえ直すような取り組みを行っていきたいと考えています。