文字サイズ

特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

会員になるには

国際協力の寺

国際協力の寺2015/07/17

NGOのための仏教講座@経王寺


lecturekyooji「海外の現場で仏教のことを聞かれても答えられない」
「現地の宗教を理解するための素地が自分の中にない」
そんな声をNGO職員から聞くことがあります。

そこでアーユスは6月30日、東京都新宿区の経王寺(日蓮宗)にて、「NGO職員のための仏教講座」を開催し、NGO職員に「教養/リテラシーとしての仏教」を学んでもらう機会を提供しました。

講師をお願いしたのは、経王寺の住職であり、アーユス会員でもある互井観章さん。日頃から上映会などで会場をお借りしたり、掲題でフェアトレード商品を販売させていただいたり、シンポジウムのパネラーになっていただいたりと、互井さんにお世話になっているNGOは多いのですが、あらたまって仏教の話を聞くのは、みんな初めてでした。

講義は、お釈迦さまが誕生したころの世界の様子からはじまり、仏教の誕生や他地域への伝播、上座部仏教と大乗仏教、日本への伝来、平安仏教から鎌倉仏教への流れ、そして日蓮宗の誕生まで、驚くべき密度で全体を俯瞰できるようにしてくださいました。とはいっても、落語のようにライブ感あふれる講義だったため、あっという間に2時間が経ちました。質問も多く出されたので、時間を30分延長したのですが、まだまだ皆さん、聞きたいことが山のようにある様子でした。

実は、これまで私は「日本の仏教やお坊さんって、ユルいんじゃないのかなぁ・・・」と、どこか釈然としない思いを抱えていたのですが、「法輪は東に転がりつつ変遷していく」という説明を聞き、日本には日本の仏教があるということが腑に落ちました。

また、観章さんの「お坊さんはツアコンのようなもの。一歩先を行って、みんなを案内するんだ」という言葉で、自分が勝手に作ったお坊さんのイメージから解放されて自由になりました。

この他にも、心に残ったものが二つあります。ひとつは、悟って仏になることもできるのに、敢えてこの世界にとどまり、苦しんでいる人たちを助けるという修行を続けている菩薩の存在。逆に言うと、菩薩でない私たち衆生が行う国際協力は、渇愛や煩悩のひとつの現れにすぎないのかもしれません・・・。少なくとも、その可能性については担保しておこうと思いました。

もうひとつは、「みんなで一緒に大きな船に乗って、悟りへ向かうのが大乗仏教」という言葉。なんだか楽しそうなアドベンチャーですが、私はヘブライ語の「シャローム」という言葉を想起しました。「シャローム」は一般的には「平和」と訳されますが、より厳密にいうと「どこにも傷がない状態」を指すそうなのです。誰かひとりでも、苦しんでいたり、取り残されたりしているのではダメなのです。すべての生きものが救われることを望んでいるのは、大乗仏教だけではないのでしょう。

さて、観章さんからもっと詳しい話を聞きたいという声がたくさん上がったため、別の機会を検討中です。また、秋には別のお寺の会員さんから、禅について教えていただく「NGOのための仏教講座2」も予定されています。概要が決まりましたら、フェイスブックやメルマガでご案内をいたしますので、どうぞお楽しみに。(三村紀美子)