文字サイズ

特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

会員になるには

スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2017/09/28

勉強会「NGOにとってのブレークスルーとは」


 2017年9月12日に長専院にて、「NGOにとってのブレークスルーとは」と題した勉強会を開催し、アーユス関係者も含めて22名が参加しました。今回の勉強会は、アーユスが昨年度から実施しているNGOブレークスルー支援事業について説明し、国際協力NGOが組織運営や事業実施の面で抱えている課題や行き詰まりをどのように打破(ブレークスルー)することが出来るのかを考えること。さらに、アーユスが現在ブレークスルー支援を行っているNGOの取り組みを学び、様々なNGOの経験を共有しながら困難を克服するためのヒントを得るという目的で行われました。現在支援中のコリアNGOセンターとシャプラニール=市民による海外協力の会から中間報告をいただき、参加者がそれぞれに所属する各NGOが抱えている様々な課題や克服すべき問題を共有しあいました。

IMG_0140 のコピー  IMG_0167 のコピー

 まず、コリアNGOセンターの郭辰雄さんからは、これまで活動の対象としてきた在日コリアンの立場からヘイトスピーチをどのようになくせるのかを考えるとき、マイノリティが繋がっていくことで日本社会にもっと声を発信していくことが重要との認識のもと、そういう空間を作っていくために反差別や多文化共生をテーマにしたフェスティバルを開催し、反ヘイトスピーチ・多民族共生のためのプラットフォームを創っていく取り組みをご紹介いただきました。昨年行われたイベントでは3000人ほどの来場者があって、様々なマイノリティの人たちが集まって音楽、踊り、食べ物など思い思いの自己表現の場として大いに盛り上がりました。マイノリティ同士の新しいつながりが生まれ、相互理解が進み、今年はダイバーシティ・パレードの実施を予定しているとのこと。当初から思い描いてきたプラットフォームが少しずつ形になりつつあるという手応えが得られるようになっています。このブレークスルー支援事業によって、コリアNGOセンターとしての活動領域が広がり、ネットワークの質的な拡大が団体としての立ち位置を見つめ直すきっかけになっていると前向きに捉えており、今後のプラットフォームの進展が注目されます。

 一方、シャプラニール=市民による海外協力の会の宮原麻季さんからは、長年バングデシュやネパールの女性たちが作る手工芸品に特化してフェアトレードを行ってきましたが、売上が横ばいから減少へと転じている危機感がある中で、食品商材の開発が必須と考え、食品の生産・販売に取り組み始めたとのこと。この活動が本格化すれば、シャプラニールの経営基盤が安定するのみならず、現地での雇用が確保出来ることや地域の産物を活かした地域作りまで考えられるようになると強調されました。そして、コーヒー、ドライフルーツ、スパイスなどの可能性を追求した中で、まずはネパールのコーヒー「太陽とヒマラヤの恵みハニープロセス珈琲」の製品化を実現。6月から販売を開始したところ売上が順調に伸びており、さらにコーヒー商品のラインナップの充実化を図り、ワンステップ進めた新商材の開発を進めていることが紹介されました。今後は、手工芸品が大半を占める南アジアのフェアトレードの中で食品商材による新たなブレークスルーを起こしていくために、ネパールのフェアトレード団体に食品商材への参入の共有を図り、生産者と消費者を繋げる取り組みにも力を入れて、ゆくゆくは生産地の現状を伝えていくためのスタディツアーを企画したいとの抱負が語られました。

IMG_0174 のコピー IMG_0176 のコピー

 続いて参加者から自己紹介と各団体で抱えている課題やブレークスルーの必要性があることなどを挙げていただきました。特に課題として挙がったのは、人材不足をどう克服できるのか、世代交代をいかに進めていけるのか、自己資金をどう確保していけるのか、事務作業が増えてクラフトの販促や広報まで手が回らない状況をいかに打破できるか、外部の専門家を巻き込んで理事会をいかに活性化できるのか、ネットワーク団体としてメンバーの問題意識の共有をどう図っていくのかなど。常にヒト・モノ・カネで苦労するNGOのあり方自体を問い直す必要性や日本社会の中のネガティブな空気をどのように変えていけるのかが重要との意見、NGOも政治的なアプローチから社会の様々な課題にどう立ち向かってくべきなのかが問われているとの発言もでました。これらの課題について話合う時間はありませんでしたが、各NGOがどのような課題や問題に直面していて、どのような問題意識を抱えているのか。NGOを取り巻く環境の変化とそれにNGOとしてどのように対応していくべきなのかを常に模索していることなどをざっくばらんに共有しあえたことで、様々な視点を得ることができたのは多くの参加者にとって収穫だったと言えるのではないでしょうか。

 今後アーユスではパートナーNGOとともにこうした勉強会の機会を定期的に設けて、今回十分に掘り下げられなかった課題を集中的に学ぶ場を作り、各NGOが抱える困難・課題が少しでも良い方向に解決・克服していけるような機会を作っていきたいと考えています。それとともに、NGOからの意見を参考に、アーユスが行うNGO支援事業や教育・交流事業の改善にも繋げていきたいと考えています。