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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2017/09/20

墨田区の「雨水寺」フィールドスタディ 2


すっかり長居してしまいましたが、隅田川沿いの東白鬚公園を南にたどります。

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墨田区は条例で、雨水の地下浸透のための透水性ブロック利用の推進や、一定の敷地面積を超える開発の場合、雨水の貯留と積極的な活用に努める旨が定められているほど、雨水利用の意識が高い地域です。
そもそも海抜が低く浸水被害を受けやすい地域であるうえに、都市化に伴って地表がアスファルトで覆われたため、降雨があると下水に大量の雨が流れ込んで溢れる事態に。雨水をいっときためておいて、少しずつ流していく。防災上なくてはならない知恵を尽くして雨に向き合ってきた歴史があるためです。

川沿いに大きくそびえる通称・防災団地は、災害時に水を防ぎ、火を防ぐことを目的にした大きな仕組みがあります。まさに墨田区ならでは。

明治通りを渡り、広い墨堤通りから白髭神社の先を少し湾曲した道に入りました。中学生が路地に腰掛けてひとやすみしています。「ここはかつての堤防のあとです」という話を聞きながら、住宅地のなかへ。ちいさな路地がたくさんあって迷路のようです。

住宅密集地域でもある墨田区では、火災が起こると消防車が急行できない場所もあるため、地域での防災設備「路地尊」があちこちにおかれ、その数は21カ所にもなるそう。

そのひとつが、向島百花園のすぐ裏手にある「会古路地(えころじ)」。小さな路地と路地が出会う場所を広場として、雨水タンクと手押しポンプがあり、昭和調のレトロな黒板塀と電灯が趣を添えています。タンクにたまる水は雨樋をつたって隣家から供給されているとのこと、まさに地域の資源活用です。

会古路地。頭上に見える白いパイプをとおって、隣家から雨水ひかれている

 

小路のあちこちで出会う「路地尊」。今にも井戸端会議が開かれそうな雰囲気?!

 

そのほか、広場に置かれた「天水尊」(雨水タンク)や、集会所の雨水活用設備などをまわりましたが、街中のちいさな一角であっても、周りが囲われていないので裏にも抜けられる構造になっていたりして、まさに防災に叶った場所と見受けました。子どもたちにとっては、路地から路地へと抜けられ、ちょっとした水あそびもできてしまう、遊び場の天国のようなところかもしれません。

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古くは都電の終着駅から隅田川に抜ける道にあたっていた界隈へ。
戦前から続く商店街の一角に、今回ご案内をいただいた雨水市民の会の事務所もあります。酒屋さんのあとに入ったというおしゃれなたたずまい。壁際には絵本から専門書まで、雨や水にかかわる書籍がぎっしり。
この事務所でも、雨と水にまつわるお話のサロンをはじめ、すてきな催しが折々にひらかれているそうですので、ぜひチェックしてみてください。

こうして一行は曳舟駅へ。
お寺こそ雨水活用の拠点になりそう!と、会員のお坊さんたちに呼びかけたフィールドスタディでしたが、ちょっとした雨水タンクの設置などは一軒家の軒先でも十分にできそうなこと。集合住宅ではどんなことができるかな?など、雨水をヒントに楽しい想像が広がる一日となりました。(〒)

前編はこちら:墨田区の「雨水寺」フィールドスタディ_1