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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2017/09/20

墨田区の「雨水寺」フィールドスタディ 1


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昨年・一昨年とアーユスがご一緒させていただいた、連続講座「めぐる・めぐみの水カフェ」でお世話になった雨水市民の会の笹川みちるさん、髙橋朝子さんのご案内で、墨田区内の「雨水ポイント」をめぐるフィールドスタディを実施しました。雨水活用を実践をされているお寺が墨田区にあると聞き、会員の皆さんと訪ねてみることにしたのです。

久々の好天に汗しながら、東武スカイツリーラインの鐘ヶ淵駅に集合。「雨水寺」の別称をもつ多聞寺さんを皮切りに、曳舟駅まで約5キロの道のりを辿ります。

まず、駅から北へ向かって多聞寺さんへ。
お住まいの改築の際に、雨水を活用できるようにと、1トン入る雨水タンクを11個設置したほか、参詣者用お手洗いの地下にある10トンのタンクに本堂の屋根に降った雨を雨樋を通して貯めているとのこと。境内の散水、お手洗いの水、墓参用のお水などに使われているそうです。

大きなタンクが並ぶ

大きなタンクが並ぶ

右は雨水の蛇口、左手奥の蛇口は水道水。雨水で手を洗いたくない人も、水を選べる

右は雨水、左手奥の蛇口は水道水

まだ雨水活用が一般的ではなく、補助金などもない時期から、ご住職の岸田さんは志をもってこの大事業を敢行されました。
「水の問題もエネルギーと同じですよ。身近には原発を置かずにはるか遠くで作られたエネルギーを使っているのと同様に、私たちは山奥で貯水された水を惜しげもなく使っているのです。これは都会人のエゴであって、せめて自分の使う水の一部だけでも、自力で供給できたらと思ったのです」。

本堂の前で説明してくださった岸田ご住職と雨水市民の会の笹川さん

本堂の前で説明してくださった多聞寺の岸田ご住職と雨水市民の会の笹川さん

雨水をフル活用しようと思うと「10年に一度はタンクの掃除などメンテナンスが必要ですし、ポンプをはじめとする設備も必要なため、コストはトントンか赤字」とおっしゃるものの、「このお寺が水神さまをお祀りしていることもきっかけでしたが、タンクをおいたことで雨のありがたさを考えるようになり、また雨水に含まれる汚れを実感することで、自然環境にも敏感になりました。空気が汚れていると、雨水も汚れるんです」

そして何より「こうして関心を持たれた方が訪ねてきてくださるのが、設置して良かったことです。海外からも来られることもありますよ」と、ご縁を尊ぶお寺のご住職らしいお言葉が飛び出しました。

岸田ご住職が書かれた文章の中には、持続可能は開発についてふれてある箇所があります。「私たちは自己実現・自己拡大のために、自己以外を利用し排斥しがちです」という一節は、つい利便性や安さを求めるために、私たちの暮らしが環境や地球の一部であることを忘れて、それを大切にする気持を置き去りにしていることを突きつけてきました。雨水寺という一面を持つ多聞寺は、損得勘定からではなく、寺として当然すべきことをし、そこから私たちの暮らしが多くのものに支えられていることへの気づきを促してくれています。

多聞寺さんの取り組みはかなり大規模ですが、雨水を溜めて、打ち水やお墓の水に活用するだけであれば、どんなお寺でもできるのでは・・・?と、この活動を広められたらなと思っています。

なお、お寺の敷地にある空き地には、これから江戸野菜を植えてみよう!という、たもんじ交流農園の取り組みが進行中。「墨田区は農地がゼロという地域。農園を開設して江戸野菜を栽培するとともに、様々な人の出会う場が生まれればとの思いに賛同しました」と、空き地を貸し出されることにしたそうです。

この企画をすすめている寺島・玉ノ井まちづくり協議会ではただいま、クラウドファンディングもあわせ、仲間を大募集中です。

後編はこちら:墨田区の「雨水寺」フィールドスタディ_2