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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2014/04/14

メコン河と長良川を事例に、川の恵みと開発について議論


 毎年恒例のアーユス春合宿。今年は4月10日から11日にかけて、名古屋市昭和区にあるアーユス会員寺院の西光院で行われました。今回のテーマは「川は銀行〜メコン河と長良川のめぐみと開発」。アーユス会員やNGOスタッフなど関係者も含めて30名が参加し、2日間に渡って川がもたらす恵みや開発によって引き起こされるさまざまな影響について考えることとなりました。

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 1日目前半は、開発教育協会の八木亜紀子さんをファシリテーターに、まずは自分と水との関わりについて考えるアイスブレーキング。続いて、メコン河とともに暮らす人たちの写真を通して、彼らが水の恵みをどのように享受しながら生活しているのかを4つのグループに分かれて話合いました。さらに、メコン河の開発を巡って、開発を進める政府関係者、開発業者、現地に進出している日本企業の駐在員、開発に反対する地元市民グループ、開発の影響を被る地元農民、メコン河に住むオオナマズ、などの声を聞きながら、開発がそれぞれの暮らしにどのような影響を与えるのか、開発の影響を最も受けるのは誰か、グループごとに白熱した議論が行われました。最後は、メコン・ウォッチが制作したDVD『ムン川の経験ーメコンの暮らしとダム』の前半部分を視聴して、メコン河の様子や当事者の姿を通して各自がメコン河で進む開発についてイメージを膨らませることになりました。

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 1日目後半は、AMネット理事の神田浩史さんから日本におけるダム開発の歴史や長良川河口堰建設の背景などについて、ご自身の略歴もご紹介いただきながら、詳しく説明を聞きました。ODAの現場から入って、徐々に日本の地域の問題にも踏み込んでいく過程がとても興味深く、ご本人が提唱される「地域の問題への取り組みからグローバルな課題解決へというアプローチ」を自ら実践されている様子を垣間見ることが出来ました。川の上流域、中流域、下流域の自然や人の暮らしを「流域」という概念で一体としてとらえるべきとする神田さんの思いが結実した考え方として「穏豊(オンポウ)な社会」という概念が導き出され、これからはグローバルな視点を活かした地域づくりの必要性が強調されました。ODAやTPPに対する政策提言を行いつつ、生活する垂井町や揖斐川地域での地域づくりを地道に行っている神田さんだからこそ説得力のあるお話を聞けたと思います。

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 2日目は神田さんの案内で長良川河口堰を視察。総工事費約1500億円で1994年に竣工したこの堰の目的は治水(塩水遡上を防ぐことで上流部での浚渫を可能にして、水道利水、工業用水に使う)ですが、河口部の漁労や生物多様性に大きな影響を及ぼしていて、流れをせき止めることによる水質悪化が問題になっています。川の流れを分断している堰は無機質で、本当にこれほど巨大な建造物が必要だったのか疑問を感じました。周辺の眺めが良かったものの、城壁の上を歩いている感じでいい気分はしなかったのが正直な感想です。2種類の魚道が確保されていることがことさら強調されてましたが、魚はこんなの本当に使ってくれるの?という感じがしました。すぐ脇の施設では、当然のことから「河口堰ができてこんなにいいことがありました」のオンパレード。しかも子ども向け。社会科見学で訪れた小学生は河口堰について何の疑問も感じないようになっていて怖いなと思いました。

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 次に訪れた「輪中の郷」では、低い湿地帯で暮らす人々が水に苦しみながらも集落と農地を囲む堤防を築き、水を防ぐための組織体を作ってきた歴史が紹介されていました。堤防の上に母屋を築き、低い土地を農地にして水害に見舞われても、上流部からもたらされる肥沃な土砂の堆積のおかげで、水が引いてからすぐに農耕できる仕組みを作ってきました。先人の知恵や絶え間ない努力の積み重ねに思いを馳せつつ、こうした地道な営みが近代になって大規模な堤防建設を推し進めるようになり、その究極として長良川河口堰のような化け物が登場したんだなということがよく分かりました。

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 今回の合宿では、日頃は余り気にしていない川の恵みを再発見することになりました。そして、開発を巡る利権や「住民不在」の開発のあり方はまさに原発と同じ構造であることがよく分かりました。「輪中」のような集落ごとにコツコツと作り上げてきた生活の知恵を非効率なものとして軽視し、巨大な堤防やダムを造ることで洪水を克服し、人間の思うように水を利用してきた現代社会。開発は誰のためにあるのか、開発の過ちをどのように修正することが出来るのか、住民が主体となって進めていくこれからの開発のあり方とは何か。さまざまな課題が私たち自身に突きつけられていることを改めて実感させられた合宿となりました。CIMG1241 のコピー