文字サイズ

特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

会員になるには

スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2013/11/25

11/5 アーユス創立20周年記念シンポジウム報告


 11月5日に、アーユス創立20周年記念シンポジウムが東京・五反田の本立寺で開催されました。副題は「エネルギーの視点で考える、地域の力、人の力」。基調講演を環境ジャーナリストとして著名な枝廣淳子さんにお願いし、その後のパネルディスカッションでは、枝廣さんをモデレーターに、NGOである日本国際ボランティアセンター(JVC)の谷山博史さん、出版社コモンズの大江正章さん、日蓮宗経王寺の互井観章さんをお迎えして、エネルギーを中心に私たちの取り巻く社会がどのように変化してきているのか、それぞれの立場から日頃感じていることや自らの取り組みなどを通してお話しいただき、こうした環境の変化の中で、NGOやお寺に求められる役割について考えました。

 枝廣さんのお話でキーワードに挙げられていたのは「レジリエンス」という言葉。人類は地球の限界を遙かに超える規模でエネルギーを消費し、経済成長への飽くなき追求が過去の遺産を食いつぶして未来から前借りをしているという現状を数々の指標をもとに分かりやすく解説し、問題が次々と生まれる構図自体を変えないといけないと強調されました。「経済成長」という言葉に惑わされている(いいイメージが植え付けられている)ので、「経済拡大」とか「経済膨張」という言葉に置き換えるべきと。さらに、経済は「成長」させるべきものから「持続」させるものと発想を変えることの大切さを訴えました。「レジリエンス」とは、回復力、復元力、再起力と訳されますが、これからの社会は竹や柳のように、強風にあおられてもやがては立ち直るようなしなやかな強さが求められており、それを実践できるのが「地域」であり、その地域を支える「人の力」であると力説されたのが印象に残りました。

DSC09154 のコピー

 谷山さんは、海外の人たちの地域主権を取り戻すためのグローバルな連帯が必要であると強調した一方、途上国では農地やエネルギー源をめぐる争奪戦が始まっていて社会的弱者はますます困難な状況に置かれていると指摘。「脱原発」でさえも権力側にいいように利用されてしまう恐れがあると訴えました。さらに、JVCの働きかけで、山形県の置賜地域で続けられている「レインボープラン」(生ゴミから堆肥を作り、それを使って安全安心な農産物や付加価値のある加工品を作り、地域で流通させるという循環型の仕組み)がタイの農民の間で始まるなど、国を超えた地域連携の重要性を強調されました。

 大江さんは、「地産地消」を一歩進めて「自産自消」を追求すべきだと提唱されました。食べ物だけでなくエネルギーも自分たちで作っていくことの大切さを訴え、福島県内では自然エネルギーの取り組みが盛んになっており、会津にある酒造の社長が中心となって進めている自然エネルギーのプロジェクトや中通りでの地熱発電の動き、コミュニティ電力やオーガニックコットンで地域作りを進める「いわきおてんとSUNプロジェクト」などの取り組みが紹介されました。

 互井さんからは、お寺が閉鎖的なところに愕然としたというエピソードに始まり、NGOの活動を通して海外の知らなかったことを学んだ経験から、お寺でNGOと協力して映画会やコンサートなどのイベントを開催し、お寺でのNGOのアンテナショップ的な役割を果たしてきたことが紹介されました。少ないエネルギーで生きていくという考えは仏教の考え方に通じており、もっと活かしていけるのではないかと述べられました。

DSC09177 のコピー

 パネリスト同士の議論では、私たちの生活と海外がどう結びついているのかを理解することが大事であり、海外への関心が薄くなっている今の日本の内向き傾向を懸念する声が上がる一方、内向き傾向は必ずしも悪いことではなく、実際に日本の地域作りにおいてIターン(その農村部に縁のない都市部の人が移り住むこと)の人間が重要な役割を担っていることが多いという指摘が出されました。一方、最も危惧しなければいけないのが、エネルギーと農業、海外と日本、など、いろいろな分断が起きていること。これらをどうつなぎ合わせればいいのかを考えていくことが今後最も重要なテーマになるという点では一致しました。

 最後に、3.11以後、お寺でダラダラと過ごす人が多かったという互井さんのお話が他のパネリストや多くの参加者の印象に残ったようです。直接被害を受けていなくても不安に思う人が増えているのが背景にあるようですが、こうしたダラダラと過ごすことが許されていたのが本来のお寺であり、行政ではできないこと。全てが効率・スピード重視になって、不経済なものは切り捨てられる今の社会のあり方が改めて問われているように感じます。相手のことを受け入れるという姿勢や小さくても多様なものを尊重するという意識が本当の豊かさに結びつくのではないかと思いました。もっとお寺でダラダラとできるようになるといいのかもしれませんね。

DSC09193 のコピー