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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2013/10/11

ポストMDGsの議論でNGOが果たすべきこととは


 昨日、早稲田で行われた「第68回国連総会 報告会〜ポストMDGsに関する国際動向から見るNGOの役割」に参加しました。国連総会の中で行われた「MDGs特別イベント」での議論の様子が紹介され、今後日本のNGOとして、これらの議論にどのように関与していけるかを話合うのが目的でした。

 意外に思ったのは、「MDGs特別イベント」に参加した先進国の首脳は安倍総理のみだったこと。日本のODA政策の基本理念である「人間の安全保障」をポスト2015開発目標の指導理念にすべきであり、日本として、保健、特に「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」と「災害対策」について積極的に取り組んでいくことが表明されるなど、日本政府としての立場が明確に示されました。「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ」とは、「保健システムの強化」を特に保健財政からみた概念で、基本的な保健サービスに無料もしくは低価格でできるだけ多くの人がアクセスできるように保健財政を設計しようということです。つまりは、「誰でも等しく保健サービスを受けられるような制度を維持できるように資金を配分していくことを全ての国の共通政策にしていく」ということでしょうか。

 こうした安倍総理の行動を五輪招致をめぐる一連のパフォーマンスとの捉え方もあるようですが、日本がポストMDGsの開発課題に前向きに取り組む姿勢を示したことは、国際社会の中でも高く評価されているとのこと。これに対して、JANIC及び「動く→動かす」は、日本のNGOの共同所感(声明文)を表明し、こうした姿勢を評価するとともに、「人間の安全保障」に加え「人権」をポスト2015年開発目標の指導理念にするように求めたり、「自然災害」のみならず「人災」を「災害対策」の中に盛り込むように要望しました。 

声明文 http://www.janic.org/mt/pdf/UNMDGs_NY.pdf

 

 当日はいろんな議論が行われて全ては紹介しきれませんが、特に気になった点としては、ポスト2015開発目標では「障害者」の視点が明確に盛り込まれようになったことです。これまで「障害」はチャリティや個別の課題として捉えられてきた面がありますが、これからは分野横断的な課題として、障害者が抱える問題をより多くの人が共有し、障害者が積極的に議論に参加していける環境が重要であること、障害者をいかにエンパワーメントしていけるかという視点でポスト2015開発目標を議論すべきという意見が出てきていることは前向きに捉えられることと感じました。

 あとはNGOが「シンクタンク化」しているとの指摘です。NGOも様々な分野での高度な専門性が求められ、それぞれの分野に関する豊富な知見を備えるようになっている一方で、シングルイシューへの共感や賛同、動員ができなくなりつつあることへの危惧が表明されたことは自分自身も強く実感していることです。開発と環境をとってみても、それぞれの分野でのNGO同士の交流は限られており、ポスト2015などの国際的な議論において、日本のNGOは乗り遅れてしまうとの懸念はむしろ広がっているといえます。NGOとしてできることは、それぞれが持っている現場での経験や事例を持ち寄り、それを政策に結びつけていくための連携や協働をいかに作っていけるか、こうしたネットワーク化がこれからのNGOにとって一番求められている事ではないかと思いました。いかに日本の市民社会としてひとつにまとまって議論していけるか、この難しい課題を乗り越えられれば、NGOはより多くの市民に受け入れられる存在として、一般社会の中である一定の影響力を持つことができるようになると思います。

 ポスト2015年開発目標の策定にあたっては、これから2014年までの議論が特に重要であり、アーユスもこの議論に参加しつつ、その動向をこの場でも随時ご紹介していきたいと思います。

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