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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2013/04/16

4/11-12 アーユス春合宿が行われました


 2013年4月11日から12日にかけて、毎年恒例のアーユス春合宿が京都市内の閑臥庵を会場に行われました。今回のテーマは「自然エネルギーの取り組みから持続可能な社会を考える」。アーユス会員やNGOスタッフなど関係者を含めて27名が参加し、2日間にわたって自然エネルギーについて学び白熱した議論が繰り広げられました。

 講師は、 全国小水力利用推進協議会理事で環境フォトジャーナリストでもある古谷桂信さん。以前、アーユスが支援したこともある、日本ラテンアメリカ協力ネットワーク(RECOM)の代表をされていたことがあり、意外なところで接点があったことに驚きました。

 古谷さんからは、まず日本で自然エネルギーがどのように活用されているかというお話を伺いました。日本は、森林資源や降水量が豊富で火山も多く、急峻な地形の国土で被われているなど、地熱・小水力・風力・波力・バイオマス等の自然エネルギーを利用した発電を推進するための好条件がいくつも揃っているにも関わらず、なぜ本格的に取り組んでこなかったのか。自然エネルギーの中でもなぜ太陽光発電ばかりを注目するのか。世界のエネルギー関係者からは奇異の目で見られているそうです。その反面、長年にわたり大規模な工事や設備投資、保守管理、資源調達などが必要である火力・水力・原子力発電にエネルギーの大半を依存してきた構造は「いびつ」としかいいようがありません。今後、日本がこれまでのエネルギー政策を改め、自然エネルギーの技術開発・普及啓発に本腰を入れていかない限り、世界からますます取り残されていくことになるでしょう。

 続いて、数ある自然エネルギーの中でなぜ小水力なのか、という点を説明いただきました。ひとことで言うと「設置・管理コストが安くて24時間いつでも発電が可能でありながら長持ちするから」。太陽光発電のパネルや風力発電のプロペラは20〜25年余りで交換が必要になりますが、小水力発電の設備は大事に扱えば100年ぐらいの寿命があるそうです。太陽光発電の稼働時間は年間およそ1200時間であるのに対し、小水力は6000時間余り。太陽光の5倍、風力の2〜3倍にもなります。さらに、地域住民でも何とか手が届く規模で、管理していくことが他の発電方法よりも容易であり、地域の共有資産となり得ること。住民が協力しながら管理することで地域住民のコミュニケーションツールになり得ること、などが利点として挙げられます。

 このように、小水力発電は大きな可能性がある一方、初期費用の回収などの経済性や発電事業としての継続性に難点があり、さらに水利権や様々な規制の壁が立ちはだかっている現状をどのように変えていけるかが今後に向けての大きな課題になっています。

 次に、メコン・ウォッチの木口由香さんから、国策として「東南アジアのバッテリー」を目指している内陸国ラオスの水力発電の事情や、メコン河流域国の一部では大型ダム建設に伴う環境破壊や少数民族の人たちの強制労働、強制移住、性暴力などが発生していることが報告されました。現在、一時中断していたラオス南部のセカタム水力発電ダム計画がJICAと関西電力の協力で実現可能性調査が再開され、新たな環境破壊や人権侵害が発生しないか懸念が広がっています。あわせて、水力発電所建設予定地に暮らす住民たちが自前の小水力発電装置で電気を作っている様子が紹介されました。

 これらの話を受けて、参加者の間で自分たちの周りにある資源を活かしていく方法や、身の回りで自然エネルギーとして使える資源について語り合い、持続可能な社会に向けたアイデアを出し合いました。振動で発電する装置をスポーツジムに設置して発電とダイエットを組み合わせる方法、高温の熱に耐えうるペットボトルを利用して太陽熱温水器を作ったという情報、高層ビルから流れ落ちる排水を利用した発電の可能性、などユニークな意見やアイデアが出されました。こうして自然エネルギーを考えることによって自分の住んでいる地域や環境とのつながりがよりよく見えるようになり、参加者にとってもお寺やNGOの活動に何らかのヒントになったことと思われます。

 2日目は古谷さんの案内で、嵐山の渡月橋の近くにある小水力発電設備を見学に行き、この設備を運営している地元の嵐山保勝会の方から説明を聞きました。それによると、この設備は日本国内で初めて1級河川(桂川)に設置されたもので、それまで前例がなかったため、認可が下りるまでにあの巨大な黒部ダム建設と同じぐらいの分厚い書類・審査が必要で何度も修正して出さなければならなかったそうです。機械は日本国内では調達できず、3000万円余りで購入したチェコ製を一部改造して使用しているとのこと。平常時は約4キロワットの出力で一般家庭3〜4軒分の電気を作り出しています。この電気は渡月橋の歩行者用のLED照明に使われており、余剰分は関西電力に売電されています。

 お話を伺って感じたのは、日本では前例がないことに風穴を開けるのがいかに大変かということ。何度もくじけそうになったそうですが、必ず実現させるんだという嵐山保勝会の方々の熱意が実を結び、7年ほど前にようやく設置にこぎつけました。今では毎月3〜4件ほどの視察があり、以前より設置に向けてのハードルは確実に下がっているので、ぜひとも自分たちの後に続いて欲しいという思いを込めて説明を続けているとのことでした。

 

 今回の合宿では自然エネルギーの中でもとくに小水力発電について学びましたが、話を聞いて現場を見て感じたことは、将来的に小水力発電が全国に普及することによって私たちの環境やエネルギーに関する意識は確実に変わるであろうということです。自然エネルギーの取り組みの一つ一つは小さくとも、点が線になり、やがては面になることで社会に大きなインパクトを与えていくことが可能になります。もしかしたら10年後には原子力発電が終焉を迎え、自然エネルギーによる発電が全体の半分を超えている。そんな時代が夢物語ではなくなっているかもしれません。

 あわせて今回の合宿では、2013年度からアーユスが組織強化支援を行う「アクセスー共生社会をめざす地球市民の会」のフィリピンでの貧困削減や日本国内での活動が紹介されました。また、閑臥庵の名物である普茶料理のフルコースを堪能し、法要や勤行に参加して仏教を体験する機会が設けられるなど、アーユスならではのプログラムになったと思います。

 また来年も4月頃に合宿が行われる予定ですので、テーマは未定ですが、関心ある方は奮ってご参加いただきますよう、お願いいたします。