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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2013/03/18

3/15 イラクNGO関係者とのトークイベント


 3月13日のイベントにも出演したイラク人ゲスト3名を招いて、3月15日には新宿の常圓寺で、アーユスと日本国際ボランティアセンター(JVC)の共催イベント「イラク戦争から10年 混迷の中から生まれ出る希望」と題したトークイベントが行われました。こちらには関係者を含めて25名の参加がありました。

 JVCは、2010年よりイラク北部のキルクーク市のラパリーン地区で、地元NGOであるINSANとともに地域社会支援の活動を行っています。キルクークは、アラブ、クルド、トルクメン、アッシリアなど多様な民族が集住し、歴史的な経緯と埋蔵資源(石油)の利権がらみで対立が懸念される地域です。JVCはINSANと協力しながら、様々な民族の住民が対話と相互理解を進める場作りを行っており、その一環として、異なる民族出身の子どもたちがアート作品を共同で作り、音楽や演劇ワークショップを通して互いを知り合い、関係を深めるとともに対立を緩和する方法を学ぶことを目的とした事業を展開しています。

 今回のイベントでは、INSANの関係者がゲストとして、イラクの平和に対する思いやキルクークでの活動の様子についてお話がありました。特に強調されていたこととして、長年にわたる民族間の対立の歴史から、対話の場を設定することが難しく、まずは地域を代表する人々に対して平和構築のやり方を学んでもらうプロセスに取り組んでいることが報告されました。そのためには、相手に対する嫌悪感を吐き出させる機会を作った後に真の対話の場を設定するというアプローチの事例が紹介されました。そして現在特に重視しているのが、子どもたちに対する働きかけです。異なる民族の子どもたちが、アートや音楽、演劇を通して一緒に遊び学ぶプロセスから、地域の平和と共存について考えるきっかけを作っていくこと。そして、子どもたちの行動の変化から新しい考えが出てくることをが期待されています。こうしたアプローチの参考になっているのが、JVCもアーユスも関わっている「南北コリアと日本のともだち展」の事例です。絵画を通して南北コリアと日本の子どもたちが同じテーマで絵画を描き、相互に対する理解や共感が生まれる中で、ひいては北東アジアの平和と安定を実現していこうとするプロセスに賛同して、それを応用する形でイラクでも実施しているとのことでした。

 戦争や紛争で民族間の対立が助長されてしまっている中で、いかに平和と寛容の精神を育てていくことができるのか。そのプロセスは限りなく遠い道のりかもしれませんが、それを地道に愚直に進めていくことがやがては民族間対立を和らげ、地域に平和と安定をもたらすことになることを改めて実感しました。JVCとINSANのワークショップを体験した子どもたちが平和を実現していく希望であり続けることを願わずにはいられません。