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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2013/02/14

2/1 作家・柳美里×南相馬ひばりFM・今野聡


 2月1日に女子栄養大学で行われた上記の対談イベントに参加しました。主催は、南相馬市の臨時災害FM局である「南相馬ひばりFM」の運営をサポートしている日本国際ボランティアセンター(JVC)。

 柳美里さんは2011年4月から南相馬に通い、2012年3月から南相馬ひばりFMでレギュラー番組「柳美里のふたりとひとり」が週1回放送されています。これは柳さんが南相馬で暮らす人たちに直接聞くというスタイルで、1回の放送に2〜3名が出演し、震災以前の南相馬の様子や震災の体験談、現在の生活や暮らしの様子、そしていま考えていることなど、話したいことを話してもらうという形で構成されています。お互いにノーギャラ。収録場所はスタジオではなく、学校や公民館、お寺などさまざま。柳さんと南相馬ひばりFMの今野聡さんの2人で訪問して気軽に話してもらうことを心がけているそうです。これまで47回ほど放送されており、南相馬のごくふつうの人たちの生の声が発信される番組として毎回大きな反響を呼んでいます。

 そもそも柳さんは福島に縁があり、母親が会津の只見出身とのこと。同じ福島でこのような震災と原発事故による放射能汚染という状況が起こって何かしないといけないと思い、まずは南相馬で警戒区域に設定されて立ち入りができなくなる地域に入って現場をみてみようと市南部の小高区に入ったそうです。その後も何度も南相馬に通い、相馬の野馬追を見物したときに発したツイッターを、たまたま今野さんが見ていて連絡を取ってみたところすぐに返信があり、そこから相互のやりとりが始まりました。そうこうしているうちに、柳さんの希望で南相馬の人たちと対談する場を設けることになり、2012年2月に「南相馬ダイヤローグ」というイベントが行われました。会場では震災直後の生々しい出来事が話されたり、震災の体験を30分も延々と語る人がいるなど、とにかく話したいという切実な空気で被われていたそうです。これがきっかけで柳さんが南相馬を訪れた際に地元の人たちを訪問して話を聞くという番組をやってみようということになり、回を重ねながら現在に至っています。

 番組開始から1年ほどが経って、柳さんは、震災や原発事故によって生じた問題が波状攻撃のように押し寄せていてより複雑化している。見えるラインと見えないラインがはっきりと分かれ、人の心がさいなまれていると感じるようになったと語りました。今野さんも南相馬から東京に来ると、まるで想像上の人が立っているような印象で人間味が感じられず違和感を覚える、などと感想を述べられました。

 現在、南相馬ひばりFMは存続が危ぶまれる現状にあるそうです。もともと災害FMは特別に2ヶ月の放送免許が臨時で交付されるもので、特例として1年ずつの延長が認められて現在に至っています。しかしながらその免許が更新されるかは予断を許さないそうです。また、現在コミュニティFMへの移行を目指していますが、5年間の運用計画やなによりも今は「きずな事業」で賄われている人件費などの資金が必要で、その確保の目処が経っていません。また市では災害FM以外にも防災無線やコミュニティテレビなどを持っているため、必ずしもFM局の存続を優先項目に挙げていないという現実もあるそうです。今野さんは災害FM以外の新たな制度作りの必要性を今後も訴えていきたいと述べています。

 柳さんの番組は開始から1年余りが経過して、これから声を発信していきたいという人たちがまだまだ大勢いることを強く実感するようになっているといいます。南相馬の人は引っ込み思案でなかなか声を出さないとよく言われるそうですが、きっかけさえあれば発信力のある人は多いとのこと。最後に、柳さん、今野さんとも、これからもそうした声を番組で発信できるように最善を尽くしていきたいと述べてられて対談は締めくくられました。

 

「南相馬ひばりエフエム」ウェブサイト

http://minamisomasaigaifm.hostei.com/