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平和人権/アジア

平和人権/アジア2020/12/25

【街の灯トーク#9】コロナ禍のフィリピン、大都会の陰に暮らす子どもたちの未来②


路上の子どもたちが置かれている現状

寺西 では、活動地の様子を教えてください。

西坂 フィリピンは日本から飛行機だと4時間くらいで行けて、時差も1時間しかないので、すごく行き来もしやすい国です。その中でも首都圏マニラが活動地です。

寺西 フィリピンで路上生活をする子どもたちやゴミ山の子どもたちの話は、ずいぶん昔から耳にします。その背景、問題の根本はどこにあるのでしょうか。

西坂 貧困はひとつの大きなポイントになると思います。事業地の様子をみてください。

西坂 大きな格差を感じる写真だと思います。フィリピンはアジアの中でも経済成長が著しく、19歳以下が国民の40%いて、生産人口がどんどん増えている国でもありますし、英語を母国語のように話す国でもあるので、多国籍の事業が入ってきて経済も後押しされています。しかし、やはりそういうことから取り残された人、子どもたちも存在します。みなさん、マニラというとこの写真の奥に見えるような高層ビルが建ち並ぶイメージを持つ方もいらっしゃると思いますが、少し離れるとこうしたトタン屋根をつぎはぎして何とか生活している状況があります。

寺西 象徴的な写真ですね。こういう地域は、首都圏が広がったりすると、立退きにあったりしないのですか。

西坂 はい、強制的な立ち退きはあって、「ここにビルを建てるから」と言われているところもありますね。

寺西 アイキャンの活動地はいわゆる首都圏ですか。

西坂 少し離れています。

寺西 では、そこで暮らす子どもたちのお話をお伺いしたいと思います。

西坂 フィリピンには路上で暮らしている子どもが25万人いると言われています。子どもたちが路上に追いやられる背景には、先ほど貧困が1つのポイントと言いましたが、理由は様々あります。ひとつは経済的な貧困、あとは家庭内暴力や育児放棄もあります。子どもたちはそういうものから逃れて生きのびるために路上に飛び出していき、政府の社会保障などが十分に機能していないなかで、路上に暮らす他の子たちとグループを作ったりしてなんとか生きのびている状況です。
 路上は危険と隣り合わせの場所で、寝る場所も螺旋階段や土管の中だったりするため襲われることもあるので、常に暴力とも隣り合わせと言っていいと思います。
 レストランなどに行くと、オーナーから汚いからあっちへいけと差別されたり、暴力を振るわれることがあって、どんどん路地裏など人目につかないところに逃げて暮らしています。

寺西 親や家族がいても、路上で生活しているのでしょうか。

西坂 家族も家もあるけれど路上で暮らしながら働いている子が一番多く、次に家族と一緒に路上で暮らす子ども、そして親も家もなくてひとりで暮らしている子という順番になります。

寺西 稼ぎ手として期待されて家から出されるのでしょうか、それとも家に居づらいから?

西坂 両方あると思います。貧しいから仕事をしてほしいといわれて、路上に出る子どももいれば、親の暴力から逃げるために外で暮らす子どももいます。
子どもたちは慢性的な栄養不良で身体も小さいのですが、中でも大きな問題がシンナー、薬物の使用です。路上生活する子どもの半数以上は薬物を使ったことがあり、その理由は、空腹や辛さをマヒさせて忘れることができるのと、一食30円くらいかかるところをシンナーなら10円くらいで買えてしまうからです。

寺西 その中でアイキャンが取り組まれてきたことを教えてください。

西坂 これまでの大きな取り組みはふたつあります。ひとつは子どもたちを守る施設の運営、ふたつめは子どもたちの力を引き出す活動です。
ひとつめの活動では、子どもの命と権利を守って将来を切り拓いていくために、長期保護施設を運営しています。

寺西 立派な建物ですね。これはどこにあるんですか。

西坂 サン・マテオ市というマニラ首都圏から少し離れたところになります。この子どもの家では、寮母さんや寮夫さんもいるので、愛情をいっぱいうけて安心して栄養もしっかりとって生活することができる場所です。
今は、7人くらいと少ないです。新型コロナウイルスの影響もあって、元々入る予定だった子どもたちの入所が遅れているのですが、新たに10人くらい増える予定になっています。

寺西 通常20人くらいということですね。長期というといくつまでですか。

西坂 18歳までです。路上で生活してきた子どもたちは学校に通っていないので、復学しても学年がずれ、周りよりも身体が大きくて恥ずかしいなどと、最初は行きたがらないのですが、自分たちのペースで頑張って、復習したりスタッフに聞いたりして勉強し、生徒会に入っている子もいます。そういうのをみると誇らしいというか、嬉しい気持ちになります。

寺西 本当ですね。子どもの施設以外の活動は?

西坂 子どもたちの力を引き出す活動として、路上教育をおこなっています。生きていくためのスキルを得る道徳教育や識字教育、自分自身を守っていくための保健衛生教育などです。ほかに路上ではないのですが、自分自身のスキルを磨いて路上から抜け出していくための技術訓練をこれまで行ってきています。
 路上教育は路上に出て、子どもたちにいろいろなことを教えていく場なのですが、もっと地域の協力を得られないかと、地域の最小単位であるバランガイと呼ばれる行政単位の役場の協力を得て、一緒に課題解決に向けて取り組もうと会場を借りるなどしています。

寺西 路上教育の写真にうつっている大人は現地のスタッフですか。

西坂 紙芝居をしているのは現地のメンバーです。

寺西 スタッフは何人くらいいますか。

西坂 子どもの家に住み込んでいるスタッフとあわせると10名くらいです。

寺西 長く携わっているベテランのスタッフも多そうですね。

西坂 そうですね、長く働いてくれる人が多くてとても助かっています。

寺西 すでに現地NGOですね。

(続く)

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