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平和人権/アジア

平和人権/アジア2018/06/22

開発と政治は離れがたし・・・


 メコン河沿いの地域には、小魚を発酵させて作る調味料があります。ラオスではパデック、タイではプラッラー(発音の記載が難しい(;_;))、カンボジアではプラホックと呼ばれるけど、基本、同じもの。ただ、発酵のためにラオスでは米糠などを入れるけど、カンボジアは塩だけとか。メコン河流域では、河からの恵を生かした食べ物が豊富。小魚やナマズを焼いたのを、この調味料を使ったディップにつけたら、進む進む(ご飯がね)。

 しかし数千キロもある河であっても、そのどこかの流れが変わると生態系や自然のサイクルが変わってしまい、人々がそれまで当たり前に享受していた食料やライフスタイルが失われることにもなりかねません。残念なことに、メコン河本流・支流にできたダムは、メコン河沿いに住んでいる人たちの暮らしを変えてしまいました。

 と、文化人類学的な話から生態系や開発の話まで、わずか1時間程度でしてくれるのはメコン・ウォッチの木口由香さん。昨夜の、「【セミナー】カンボジアとメコン河_開発の現場で起きていること」では、開発や地域を多角的に包括的に捉えて語ってくれました。加えて、素晴らしい写真と映像付き。

 もう一つ、お話の中のとても大切なポイントは、開発と政治は切り離せないという指摘でした。理事の米倉さんから、野党が解党されるなど、現政権に反する存在が排斥されつつある、最近のカンボジアの政治状況への危機感についてお話がありましたが、つまり、最近のカンボジアでは市民が現政権に希望を伝えても、それが政権の方針に反するものなら、その人達の声は届かないばかりか、彼らが排斥される危険があるということです。
 カンボジアでも、ダムの建設により漁獲量が半減し、食料が少なくなった地域がでてきています。しかし、彼らは生活の補償を求めることも、新しいダム建設への反対をあげることもできなくなってきています。よく、利権絡みの公共事業といった開発の問題点を耳にしますが、それだけでなく、開発の影響を受ける人たちが、きちんと自分たちの意見を出せることができるかどうか、そういう視点が開発には不可欠なのです。

 そんな話を聞いた後、ふと目にした文章。アマルティア・センさんによる『自由と経済開発』からです。今の日本社会にも痛く突き刺さってきませんか。(M)

・・・政治的な参加や意義申し立てが「開発の助けになる」のか否かが問われることが多い。開発を自由とみなす基本的な見解に照らしてみるならば、この問いかけそのものに欠陥があると言えるだろう。なぜならばそれは、政治的な参加や異議申し立てが開発そのものの構成部分である、という極めて重要な理解を欠くものだからである。たとて非常な金持ちでも、自由に発言することや、公開の議論と意志決定に参加することを拒まれるなら、その人は自分で大事だと考える何かを奪われているのである。・・・(『自由と経済開発』アマルティア・セン著 より)