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平和人権/アジア

平和人権/アジア2014/04/07

ビルマ:ビルマ(ミャンマー)・開発ラッシュの影で


ビルマ(ミャンマー)・開発ラッシュの影で
 ~ティラワ経済特別区開発の立ち退き問題~

「この事業のために立ち退いた後、通学費を賄えず、子どもたちが学校に通えなくなりました。」
             ――ティラワ経済特別区開発事業の予定地から立ち退いた30代男性

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ティラワ経済特別開発事業フェーズ1地域 

 2011年に始まった「民政化」の流れをうけ、国際社会の経済制裁が軒並み解除されたなか、ビルマへの「投資・援助ラッシュ」が始まっています。日本国内でも、「アジア最後のフロンティア」という言葉が飛び交い、様々な企業の進出が見込まれていますが、なかでも注目を浴びているのは、官民を挙げて推進中の「ティラワ経済特区開発事業」です。

 しかし、ビルマでは、環境・社会面への悪影響を防ぐ法律等が依然として整備されていないため、こうした開発事業によって、地元住民の生活や環境に取り返しのつかない影響が起こることが懸念されます。

 私たちは昨年から「ティラワ経済特別区開発事業」に伴う住民の強制立ち退き問題について、現地での調査を重ね、日本が進める事業で住民の生活が悪化しないよう、日本政府・国際協力機構(JICA)に適切な対応を求めてきました。

 ビルマの最大都市ヤンゴン近郊で約2,400ヘクタール(東京ドーム513個分)を経済特別区とする同事業の第一期(400ヘクタール分)は、三菱商事・住友商事・丸紅など日本企業の関わる共同企業体が、2013年11月に土地造成作業を開始しています。JICAは現在、政府開発援助(ODA)の民間向け「海外投融資」制度で、私たちの税金を使って同事業へ出資しようと検討中です。

 この事業の立ち退き問題が明るみに出たのは、2013年1月末でした。住民らの家に突然、「14日以内に立ち退かなければ、30日拘禁する」という書面が貼られたのです。このときは、事態を問題視した住民とNGOの働きかけで、あまりに急な強制移転という最悪の事態を回避することができましたが、その後、「合意」手続きを踏み、補償金を受け取って移転したはずの住民の生活の回復は難航を極めています。

mekon14_burma2 現在、私たちが現場へ足を運ぶと、第一期(400ヘクタール)工事の現場から立ち退きを強いられた68世帯(約300人)のなかでも、生活の糧を失い、以前より苦しい生活を余儀なくされている住民が、「話を聞いてほしい。」と窮状を訴えます。

写真左:2013年1月31日に各世帯に出された通知「14日以内に立ち退かなければ、30日拘禁する」;

mekon14_burma3 写真右:住民らは、1/31付の立ち退き通告を拒否する旨を記した抗議の横断幕を農地の真ん中に何本も立てた

「補償金でまず家を作りました。その後、仏壇と台所を作るのに補償金を使い切ってしまいました。今は仕事もなく、娘のアクセサリーを売ったり……借金だらけです。」(60代男性);

「土地がなくなってしまったので、家畜を飼育できません。その分、収入が減りました。」(40代女性)

「以前は、雨季のときにカエルや魚など、食べるものを簡単に探せたり、薪も家の周辺で探せました。家の周辺で野菜や果物もとれましたが、今はありません。」(30代男性)

「今は収入が足りないので、ストレスがたまり、家族のなかでの喧嘩が増えました。」(40代女性)

「(移転・補償に関する)会合などはありましたが、意味のある話し合いはしてもらえませんでした。」(20代男性)

 以前、日雇いの仕事をしながら、家の周辺で野菜等を作ってきた世帯は少なくありませんでした。しかし、元の場所から約6キロ強離れた移転地で、新たな日雇い仕事を見つけるのは難しい現状があります。移転地で各世帯がもらった116平米の区画もお互いに密接しており、野菜等は植えられません。当局が始めた職業訓練等も成果はまだあがらぬままです。

mekon14_burma4 農家は作物に対する補償金をもらっており、まだ手元に幾ばくかの補償金が残っている世帯もありますが、農地を失ってしまったため、新たな生活の糧をみつける必要があります。

写真右:第一期の地域で暮らしていた住民68 世帯の移転地。一つの区画は約116平米。隣家との間もなく、家畜の飼育や野菜・樹木等の栽培もできない。

 地元住民らは、JICAにもレターを提出し、生活水準の回復を訴えてきました。しかし、JICAは移転の一義的な責任は現地政府にあるとし、レターへの回答をしていません。

 民政化後、ビルマで初の大型案件となる同事業は、国際的な関心も高く、国連特別報告者も2014年2月に同現場を視察し、懸念を表明しています。JICAは住民の声に耳を傾けるべきではないでしょうか。(メコン・ウォッチ 土川 実鳴)