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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2022/06/29

総会セミナー「JFCとして生きる-尊厳が守られる社会へ」


 2022年6月16日(木)に行われた会員総会の後、2022年度からアーユスのNGO組織強化支援の対象団体になったNPO法人JFCネットワーク事務局長の伊藤里枝子さんを講師に、「JFCとして生きる-尊厳が守られる社会へ」と題した総会セミナーを開催しました。

 

 JFC(Japanese-Filipino Children)とは、日本人とフィリピン人の間に生まれた子どもたちの総称で、日本人男性の父親から養育を放棄され、母子家庭で経済的・精神的問題を抱えているケースが多くあります。「JFCネットワーク」は、こうした子どもたちの人権を守る活動を行う目的で1994年に設立されたNPO法人で、フィリピンの現地事務所や日本国内の弁護士と連携を取りながら、法的支援を中心に、生活・教育支援、普及啓発活動などの取り組みの他、親や国から遺棄された状態から回復するための人権擁護活動など様々な支援を行っています。

 講演では、JFCが増えた背景やフィリピン人の新規入国者数の推移が示された上で、フィリピン国内のNGOにフィリピン人女性からの相談が殺到する状況を深刻な問題を捉えた日本全国約60名の弁護士により1993年に「JFC弁護団」が結成され、その翌年に市民がかかわる体制として「JFCネットワーク」が結成された経緯などが紹介されました。特に、経済的問題を抱える母子家庭では、父からの養育放棄が貧困に結びついている事例が多く、さらにこうした窮状が、アイデンティティの危機や自己肯定感・自尊心の欠如などの精神的な問題を生んでいる実態が紹介されました。また、JFCをめぐっては、2009年1月の国籍法改正によって国際婚外子の日本国籍取得の道を拡げ、フィリピン在住のJFC母子にとって権利や機会の促進に繋がりましたが、受け入れる側の日本の社会政策の在り方や、日本行きを目指すJFC母子の急増に伴って違法な仲介を行う悪徳業者への対策などが大きな問題となっていることが報告されました。

 講演で特に印象に残ったのは、私たちが持つ「無意識の偏見」を意識化することの大切さを指摘されたこと。日常生活で「日本人」という言葉の使われ方を考えると、そこには肌の色、髪の毛や質、眼の色、日本生まれ日本育ちで日本語を話す、謙虚で個人の意見を主張しない、など文化的、精神的、社会的な面など様々な要素が結びついて「日本人の常識」として社会に定着し「こうあるべき」という「規範」を作っているのではないか。この「常識」や「普通」「当たり前」を問い直していくことが、無意識に身に着いた偏見に気づき学び捨てることになるというお話は、まさにJFCの問題を考えていく上でとても大切な視点であると改めて感じました。(井上 団)