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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2014/07/17

「曲がり角」にある政府開発援助


2014年7月16日に上智大学で行われた標記のテーマのシンポジウムに参加しました。政府開発援助(ODA)大綱の見直しに関して、先月末に「ODA大綱見直しに関する有識者懇談会」から報告書が出され、それを踏まえて現在外務省で新大綱の素案作りが行われていますが、今回のシンポジウムでは、これまでのODA大綱見直しの動きについて、NGO、防衛省関係、企業のそれぞれの有識者がどう見ているのかを聞き、「ODA大綱」の見直し議論を通して、より効果的かつ持続可能な社会の実現に向けた連携のあり方などを考えるという目的で行われました。

有識者会議の報告書では、国際的な開発課題の多様化や複雑化にあわせて、従来のODA以外の協力にもスコープを拡大すべき点が強調されており、様々な主体・資金との連携強化を図ること、新たな対象・課題に柔軟に対応できることを指摘しつつ、平和構築、グッド・ガバナンス、法の支配の概念を強める必要性が提案されています。こうした方向性については賛同が得られている一方、NGO側からは、ODAの第一義的な目的は「途上国の開発支援」であり、日本への外交的・経済的効果(いわゆる国益の追求)は副次的な効果として、中長期的に還元されるべきとの指摘が出されました。また、ODAの「軍事的用途や国際紛争の助長への使用回避」が明記されつつも、「非軍事目的の支援であれば軍の関与を一律に排除すべきでない」との文言も含まれていることを捉えて、ODAの軍隊への関与の「グレーゾーン」が歯止めなく拡大する危険性があるとの懸念が表明されました。

防衛省関係の方からは、イラク派遣を例にとって、現行では自衛隊の派遣はあくまでの非戦闘地域への施設部隊等の派遣に留まっており、相手国の国づくりを支援することに限定されている事情が紹介されました。また、こうした自衛隊の派遣は多額の税金が使われているにもかかわらず、活動自体についての批判は出ていないと強調されていたのが印象に残りました。また、「オールジャパン」という概念には、日本としてのステータスを確保したいという思惑や排他的なニュアンスがあり、日本のミッションを優先させることに対する弊害があることへの言及があったことは特筆すべき点であると思いました。企業のCSR研究者からは、従来のODAによる援助のあり方と企業が行うBOPビジネス等との違いを明らかにした上で、今後の援助にはビジネスの手法とリソースを取り入れたものでないと世界の課題解決には結びつかないとの指摘がありました。

限られた時間の中で、それぞれの主張が述べられるに留まり、相互の連携のあり方までに議論が深まることはありませんでしたが、今回のODA大綱の見直しが、それぞれのアクターが行う援助のあり方を改めて考えるよいきっかけになったと思われます。さらに、互いの立場の違いを認識しつつ、一緒にできること、できないことの線引きを明確にしながら連携を考えていこうというスタンスについてはほぼ一致していたのではないかと感じました。また、「報告書」の中で、従来の「政府開発援助」から「開発協力大綱」へと名称が変わることが提言されています。ネーミングも重要ですが、いかに市民の積極的な議論への参加を経た形での枠組みが作れるかということがより重要だと思いますので、今月末から来月にかけて外務省から出されるという新大綱の素案が注目されます。パブリック・コメントでの意見表明も積極的に行っていきましょう。

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