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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2024/06/21

スラムの人たち自身の実践が、平和といのちを守る


アフリカ南東部に位置するモザンビーク共和国北部のスラム地区で、紛争被災者支援や平和教育活動などを現地の人たちと取り組む「モザンビークのいのちをつなぐ会」。アーユスの『街の灯』支援事業では、2023年度まで3年間にわたりこの活動を応援してきました。この間の活動を通じて、どんなことに光を当てることができたのか──代表の榎本恵さんに伺いました。

▼全編はyoutubeでご覧いただけます。こちらからどうぞ!▼

モザンビーク北部のカーボデルガド州は、貧困率が高い中でもとくに支援の手が届かない「忘れられた岬」と呼ばれています。その州都・ペンバを拠点に活動する榎本さんは、ベンチャー企業立ち上げのお手伝いでモザンビークで働いたことをきっかけに、2013年に自らNGOをたちあげました。

「先進国の開発により土地収奪が起きているが、契約書が読めないのに現金を積まれてサインしてしまっている。資源が豊富で外資の流入が止められないのなら、契約書くらいは読めるようにしておきたい」と2014年に寺子屋の運営からスタート。「自分がやるならスラム地区のど真ん中に入って信頼関係をつくり、納得のいく『まっとうな』活動をしたい」という思いから、スラムに住まいと事務所を構え、現地の人たちと共に生活しながら活動を組み立てました。

しかし2019年頃からイスラム過激派の活動が激化し、コロナ禍もあって現地に滞在しながらの活動が難しくなってきました。モザンビーク北部では、日本企業もかかわる天然ガス開発が行われています。その基地となる町が過激派に占領され、農村部でも襲撃が相次ぐなか、活動地のペンバに流入する避難民をスラム地区の人々は自主的に受け入れました。ひと家族が30名くらいに膨れ上がり、食料不足に加え疾病の流行にもつながったといいます。

こうして寺子屋には、紛争避難民の子どもたちが加わって350人が通うようになりました。アーユスの『街の灯』支援は、まず一日一食しか食べられていなかった子どもたちに配食し栄養状態を改善することに役立てられました。

寺子屋ではまた、多くの子どもたちが連れ去られ少年兵となる例も増えてきたことから、「知らない人についていかない」という防犯意識や「戦いが何を生み出すのか」を学ぶ平和教育も実施しました。こうしてこの間、子どもたちが1日2食を食べることができ、また暴力や連れ去りの例も3年連続ゼロという実績をあげることができたそうです。

今後進めたいこともたくさんあります。性暴力などを受けて寺子屋に相談に来る避難民のために2021年に始めた「平和の家」。そして、スラムの中でお金がまわるような、現地の人たちが必要とするサービスを商いとして起こす「小さな商いプロジェクト」を確立し、住民の自立を促す構想は、これからの10年で取り組む予定です。

榎本さんは、「アーユスがいう『光のあたらないところに光を』は、認知経済(いわゆる認知をされればされるほどお金が儲かりそのお金で広報をしてまたお金がお金を生む)が主流になってしまっている今、まさに大切」と言います。「本当にやるべきなのは、支援の光が当たっていないところ。国連や大きなNGOなどとの役割分担はあるが、光の当たらないところで素晴らしい活動をしている知らない団体はたくさんある。それがもっと知られるようになれば」と話され、「私は現場で直接活動することが大切だと思っています」と結ばれました。今後も、もっと「知られていない」大切な活動に目を向け、光を当てられるアーユスでありたいと思わされるお話でした。(〒)