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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2022/02/08

【街の灯Talk21#1】コロナ禍の難民申請者に必要な支援④


難民の尊厳を守り社会に働きかける難民支援協会

井上 過酷ですよね。日本にいながらきちんとした行政サービスも受けられず、働くこともできず大変な状況だと思います。難民が過酷な状況にあるなかで、難民支援協会はどういうことをされていますか?

松田 難民支援協会だけで日本にいる難民申請者を支援できるわけではなく、難民問題への関わり方も人それぞれあるかと思います。私達の活動を参考にみなさんもできることを考えていただければ幸いです。
 難民支援協会は「難民の尊厳と安心が守られ、ともに暮らせる社会へ」というビジョンのもとに活動しています。
 三本の柱として、①難民への直接支援(法的支援、生活支援、就労支援、コミュニティ支援)②、政府、自治体などに対する政府提言、③社会に対する広報活動を行っております。

 難民支援協会のミッションは2つあります。 
「日本に逃れてきた難民が厳しい状況を乗り越え、自らの力を生かして希望を持って生きられるよう、一人ひとりに向きあい支援します。」
「日本で生きる難民を取り巻く制度や仕組みを改善し、難民への理解と共感が社会に広がるよう活動します。」
 1999年の設立以来、難民の尊厳と安心が守られて暮らせる社会をめざして、難民ひとりひとりと向き合い活動してきました。
 その根底には、ひとりひとりが直面している状況を傍観できないという思いとともに、難民を取り巻く制度や仕組みを改善することは、社会に暮らす私たちに問われていることだという考えがありました。日本に暮らす難民は、自ら声をあげて、活動するのは難しいです。

 法的支援と生活支援を行っているのが支援事業部です。法的支援については、弁護士と連携し、保護されるべき人が速やかに難民認定をとれるよう支援をおこなっています。逃れた先で難民と認定されることは迫害が待つ母国に送り返される恐怖から解放されることを意味しています。人としての権利を回復し、新たに日常をたちあげるためには認定を得ることはとても重要です。
 生活支援は、一人一人の力を引き出す支援を通じて来日直後の厳しい時期から自立への道筋を支えています。難民申請の待機期間は平均4年4ヶ月、その間の公的支援は十分ではありません。多くの難民は、来日して間もなく今日明日をどう生きのびるかという厳しい状況に直面しています。ホームレスにおちいる人もいます。物を与えるだけではなく、その人の力を引き出す支援を通じてひとりひとりに向き合っています。
こちらは、食料棚の一部です。コロナ禍においては、食料支援も充実させています。トマト缶、オイルサーディンやパスタ、レトルトカレーや牛乳、アフリカの食材のクスクスなどをお渡ししています。来訪される方の好みやアレルギーや宗教的制限にあわせつつ、栄養価の高いものや調理しやすい物を渡しています。

井上 こういう食料や物資はどういうところから調達されていますか。

松田 業務スーパーなどでもハラル食品を扱っていらっしゃるので、スーパーが購入先のひとつ。ムスリムの方もたくさんいらっしゃるからです。ビーフカレーでもポークエキスが入っているなど、豚肉や豚のエキスが入っているものがけっこうあるんです。豚のエキスや肉が入っていないものを週末にスタッフが近くのスーパーなどで探して調達してきます。

井上 調達担当のスタッフがいるわけではなく、スタッフ全員が手分けして調達する感じですか。

松田 基本的には支援事業部のスタッフが購入にいきますが、他のスタッフにも協力してもらいながら、食料を担当しているスタッフが金曜日になるとこれこれが不足していますと他のスタッフとも共有して分担して、補充しています。

井上 基本的にはこれらの食料や物資は取りに来てもらうのですか。

松田 私達も感染のリスクを避けて来訪者数に制限をかけています。事務所にくるのが大変な方には郵送もしています。毎週というわけにはいきませんが、3週間に1回くらい連絡があるとお送りしています。
 事務所に来訪された方には、手渡しして、お話を聞いています。相談室に入って伺うお話はシリアスな内容が多く、時には怒りが溢れたり涙されることもあります。でも、食料をお渡しするところでは笑顔で喜んでくださっています。アフリカ食材をいれていると、誇らしげに調理の仕方を教えてくださる方もいらっしゃいます。この食料が充実しているのは、アーユスからの支援をはじめ、助成金などを頂戴できたからです。(続く)

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