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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2020/07/14

【街の灯トーク#3】新型コロナで生活困窮に陥る移民・難民③


政策提言で国の方針を改善する

井上 移住連はもともと移民や難民、外国にルーツのある方々への支援を中心にされてきましたが、何か新たな動きを始めているのでしょうか。

山岸 3月末くらいから、通常の活動をがらっと切り替えました。政策提言や情報発信以外の活動を全部キャンセルして、緊急に必要なことから優先してやることにしました。理事や事務局のほかに当会の運営委員が全国に30人ほどいるのですが、そのメンバーが週に1回はコロナの対策会議を行うなど、フル稼働するようになったという変化もありました。

井上 そういう方々がいるからこそ、今回の基金で支援を迅速に出すことができたのでしょうね。ネット環境は大きいですよね。

山岸 基金も別途ワーキンググループをつくり、課題別に、労働分野、出入国管理分野、社会福祉分野、とチームをつくって、普段以上に積極的に活発に活動し、移民や外国ルーツを持つ人への権利が守られるような形で制度改善を働きかけています。
 政策、法制度への働きかけは、移住連のホームページのほうをご覧ください。
 例えば、出入国が制限されて帰国困難になっている人、在留資格の変更が困難になっている人について要請を行いました。「在留資格の受付期間の延長はしているんだけれど、その期間の在留資格の扱いはどうなりますか?その間、就労ができなくなりませんか?社会保障はどうなりますか?」などといったことを確認しました。
▼在留申請在留申請受付期間延長の間の扱いに関する質問

 あるいは、政府は学生支援緊急給付金を決めましたが、対象は43万人だけで枠組みが少ないのではないか、留学生にだけ成績要件が課せられているがこれは差別なのではないか、朝鮮大学校の学生には支給されないのはこれも差別ではないかと、こういう3つの点を確認しました。本来ならば貧困で生活困窮している学生全員に支給すべきだ、特に国籍による差別をなくすべきだ、と要請して、いろいろなやりとりをするなかで制度の運用が少し柔らかくなったという効果もありました。
▼「学生支援緊急給付金」に関する要請についての報告

 特別定額給付金に関しても、もともと4月27日を基準日に住民登録をしている人のみが対象だったのですが、そうなると外国籍の人のなかではこぼれ落ちる人も一定数いたんです。わたしたちは、本来は日本にいる全ての外国籍の人に支給してほしい」と少しでも枠組みを広げるために要請活動をして、本当に一部ではありますが、帰国困難な状況にある元留学生や元技能実習生には適用を拡大することになりました。
▼新型コロナウイルス対策としての「国民一人当たり10万円一律給付」についての確認(特別定額給付金について)2020年4月17日
▼特別定額給付金の対象拡大について(帰国困難な状態にある技能実習生、留学生、難民申請者の子ども等)2020年5月20日

 生活困窮でも、アパート代が払えないとき日本人は制度を活用して住宅確保給付金をもらえましたが、外国籍者は利用できなかったり、生活の貸付金なども永住者でなくてはダメだと窓口で言われるなどがありました。しかし、「そうではないのです」ということを国の見解として確認し、各地で外国籍のもっと幅広い人に制度を適用できるようにと活動を工夫して進めました。
▼新型コロナウイルスの感染拡大に伴い生活に困窮する外国人への支援策について 2020年4月20日

井上 そういった要請が、国を動かしているという実感はありますか。

山岸 今回のことでは、驚くほどに国も制度を柔軟に運用しています。「こういうところが問題だ」と少し言えば「いくらでも」とまではいきませんが、いつもなら全く変わらないのに、コロナ禍では制度が柔軟に運用されています。

井上 どうしてでしょう。

山岸 日本人にとっても、今回のコロナ禍はこれまで経験したことがない大きな事態だと思います。そうした中で、根本的にいろんな政策変更が行われていると思います。経済支援策も、全く新しい施策がつくられていますし、従来の制度もある程度柔軟に運用されていると思います。外国籍の人の声は届きにくいので、全国ネットワークの組織としての移住連の役割は大きいと思います。
そして、それを情報発信すること。給付金のことでも、「こういう人たちに対象が拡大されましたよ」ってなかなか知られないじゃないですか。国のホームページにも一応書いてはありますけど、わかりづらい。なので、私たちは三団体で一緒になって、給付金がこういう人に拡大されましたよと、やさしい日本語や多言語で発信して使ってもらえるツールをつくりました。支援者を通じて情報提供をできるようにと、Q&Aのサイトも作って情報発信をしているというのが二番目ですね。
▼新型コロナウィルス 困ったときのQ&A
▼新型コロナウイルス感染症に関する労働問題Q&A(多言語版)

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