文字サイズ

特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

会員になるには

その他の地域

その他の地域2018/12/12

やっていれば支え合うようになるものだ:加賀・能登ST3


 加賀・能登スタディツアーの最後のキーワード、「やっていれば支え合うようになるものだという暮らしの摂理」について書かないまま既に1ヶ月以上経ってしまいました。やっていれば忘れてしまう摂理に則ってしまいそうです・・・。ごめんなさい。

 能登では、「自然栽培の里@のと」と農家民宿「春蘭の里」を訪問し、農業に関わる人たちとも交流することができました。案内をしてくれた、元アーユス・スタッフの三村さん自身、能登にUターンをしてから「自然栽培の里@のと」の土地を借りて自然栽培による畑を始めています。

三村さんの畑。自然栽培♪

三村さんの畑。自然栽培♪

 主に初期メンバーの4人が七尾市の七原という谷間の里に土地を借り、自然栽培による農業を営んでいます。それぞれの名前の頭文字を繋げて「結の手」と名付けて、農業だけでなく、アーユスヴェーダーのカウンセリングやマルシェと活動も拡大中。そう、彼らはヨガのインストラクターに外科医などと専業農家というわけではありません。1人を除いて元々農家に生まれ育ったわけでもなく、1人が始めた自然栽培農業を手伝う内に今のような形になっていたようです。「自然のルールで生きる」というアーユルヴェーダの実践でもあり、自然とのつながりによって暮らしが営まれているんだなと、感じる場所でした。

18st12 ツアー2日目の午前中にお邪魔し、お昼までご馳走になりました。お昼には、猪肉での焼き肉! 外科医メンバーの手によって裁かれた肉は、ほんと臭みがなく、今でも時々食べたくなるくらいの美味しさ。近所のお家から届いた野菜の料理や、自然薯のトロロや、三食分くらい食べてしまいました。いや、ほんとに。

自然栽培の里@のと のメンバーと

自然栽培の里@のと のメンバーと

 

 自然栽培なので、周囲の農家さんが嫌がることが多いのかなと思っていたのですが、特にそういうこともなく、むしろ後継者がいない農家さんにとっては若い世代がやってきたことは歓迎すべきことだったようで、今でも「うちの畑もやらない?」というお誘い?お願い?が絶えず、農地は広がる一方だとか。そのために、4人のうちの1人は仕事を辞めて今年から専業農家になるなど、新規参入であっても、地域の中で支え合う関係性ができていくのは、得がたい宝だなと感じ入りました。時々、これ(農薬や肥料)を使った方がいいよとささやかれることはあっても(笑)、そしてお互い様的なところもあるかもしれないけれど、新しい人たちを受け入れる地域も、そこに入って行く人たちも、すごいなと思うのでした。

月並空間。七尾市の町中に温かい空間を生み出しています。

月並空間。七尾市の町中に温かい空間を生み出しています。

 それは、三村さんが自身が始めた「月並み空間」にも言えるかもです。亡くなったお母様が経営していた薬局を閉じ、そこを改装して地域に開いた空間(実は「結の手」のまちなか出張所でもある)。ワークショップや英会話教室など、催し物があるときだけ開いているそうですが、最近はペレットストーブを導入し、エネルギーの地産地消のモデル的存在にもなりつつあるとか。三村さんも、能登に戻った時はどんな生活が待ち受けているのか不安だったと思うのですが、さすが持ち前の感(センス)の良さで、地域で動いている人たちとつながり、彼女自身が活動のスペースを作っています。

 動くと出会いがあり、つながりがうまれ、支え合うことで生きる力を得る/増やすことができるところって魅力的ですよね。私自身、もっと地方色の強い(つまり田舎)の生まれ育ちですが、心のどこかで「田舎に帰ってもすることがない」と勝手に思い込んでいるところがあります。でもそれは「すること」を都会の生活視点で見るからであって、その土地土地にできることも、やることもあるんだろうと、能登は教えてくれました。

 ただ一方で、人手不足/後継者不足の深刻な問題をないがしろにしてはいけないとも思います。農家民宿「春蘭の里」は、奥能登の里山にある51軒の農家が集まり、農家民宿や様々な体験コースを提供しています。私たちは、2日目の夜に泊まりました。ほぼあぜ道と思われる農道を車で進むと、大きなおうちが迎えくれます。ご夫婦と少々太めの柴犬リリーが宿主。
 さすが、北陸。おうちの中には幅が一間近くある大きな仏壇があり、まずはお参りからさせていただきました。そして夜は、囲炉裏を囲んでの食事です。輪島塗の御膳に輪島塗の食器が並ぶという豪華なしつらえにまずは圧倒し、そして食べきれないほどの里山の恵みを堪能しました。
 修学旅行生が泊まりにきたり、学生グループが一週間ほどホームステイしたりと、様々な形で春蘭の里の農家民宿は活かされているようです。しかし、後継者がいる農家は少ないとか。泊まらせていただいたお宅も、お子さんは町に出たまま戻る予定はないとか・・・。

18st13 他人様のお宅に、しかも農家さんに泊まらせていただき、いろいろと体験し、美味しい物を食べるといのは、特に町に住む人には貴重な体験です。里山はそこでの営みが続かなければ荒廃するので、美しい里山とそこから生み出される恵みを味わうためには、農業が続かないといけません。

 支え合いの輪ができる地域があれば、存続が心配な地域もある。しかし、小さくとも多様な動きが始まっているのは素晴らしいことではないでしょうか。能登・加賀には、また足を運びたいと思います。今回お目にかかった方たちがどうしているのか、もしかすると新しい何かが始まっているかもしれない。まだ足を運んでいない地域や取り組みもある。また行かないといけませんね。次回は、みなさんもぜひツアーに参加してください(M)。