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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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その他の地域2011/09/11

クラスター爆弾への投資禁止キャンペーン


地雷廃絶日本キャンペーン

クラスター爆弾への投資禁止キャンペーン

地雷廃絶日本キャンペーン事務局長 内海旬子

 第2次世界大戦以降、ほとんどの戦争でクラスター爆弾が使用された。クラスター爆弾とは親爆弾に数十から数百個の子爆弾が内蔵されていて、一気に広い面積を制圧するための兵器である。一度に大量にばら撒かれる子爆弾はその多くが不発弾として残り、市民を酷く傷つけている。世界で最も被害者が多いのは、ベトナム戦争時に米軍のクラスター爆弾投下を受けたラオスである。彼の地では50年以上前に使われた爆弾が今も新たな被害者を出し続けているのである。

 そのクラスター爆弾を禁止する条約(通称オスロ条約)が、ノルウェーなどの有志国と国際機関やクラスター兵器連合(JCBLは構成メンバーのひとつ)に連なる世界のNGOの協力によって作られ、2010年8月1日に発効した。同条約には現在109カ国が署名、そのうち61カ国が批准国である(条約は署名後、国内法の整備など必要な手続きを終えてから批准できる)。この条約の制定過程では消極的であった日本政府だが、交渉過程の終盤に政策を変更し、2009年7月に14番目の批准国となった。

 オスロ条約では、クラスター爆弾の製造、使用、保有、取引等に加えて、「これらの禁止事項を奨励する活動」が禁止されている。その「奨励する活動」のひとつが、クラスター爆弾製造への投融資であり、オスロ条約批准国のベルギーやニュージーランドなど4カ国は、国内法でクラスター爆弾を製造する企業への投融資を禁止している。欧州では銀行や年金基金でクラスター爆弾製造企業への投融資禁止の方針を持つところも徐々に増えており、「社会的責任投資(SRI)」が一層注目されるようになっている。

 この流れをさらに広く進めるために、JCBLを含む世界17カ国のNGOが「クラスター爆弾への投融資禁止キャンペーン」を始めた。

 前述のように日本はオスロ条約批准国である。しかし、クラスター爆弾製造企業への投融資には規制がなく、実際に20以上の日本の金融機関がクラスター爆弾製造企業へ投融資を実施していることが、欧州のNGOの調査で既に明らかとなった。そこで、2010年4月から、これらの金融機関の実態調査や、預金者である一般市民を対象とした勉強会を開催し、合わせて各機関に投融資の停止を要請するハガキキャンペーン等を展開してきた。その結果、昨年7月末、大和證券グループが「クラスター爆弾製造への投融資禁止」をホームページで発表し、みずほ、三菱東京UFJ、三井住友の3銀行が内規でクラスター爆弾製造を使途とした投融資の禁止方針を持つに至った。さらに、10月8日には全国銀行協会がクラスター爆弾の製造を目的とした投融資の禁止の方針を示すこととなり、金融機関にある程度の変化が起こったことが感じられた。

 しかし欧米と比較すると、これらはまだまだ消極的である。他国にはクラスター爆弾に限らず非人道的な被害を及ぼす兵器の製造企業への投融資を禁止している例もあり、金融を通してより公正な社会を実現する努力が続けられているのだが、日本では未だSRIの考え方自体が広がっているとは言い難い状況にある。

 そこで、JCBLは、この投融資の引き上げがクラスター爆弾による将来的な被害を防ぐ有効な手段であることを広く人々に伝え、共に投融資について考え、金融機関には対話や情報交換等を通じて、投融資にかかる倫理と責任を求めるキャンペーンを続けることとした。JCBLが金融機関に求めていることは、 1)クラスター爆弾製造企業に対する投融資を引き上げること、 2)各金融機関が具体的取組みを明らかにし、方針等をホームページ等で公表すること、の2点である。

 投融資の禁止には、一般市民の行動が極めて影響力をもつ。私たちが金融機関に預けている「お金」の流れに関心を持ち、社会的に公正な形で使われることを求めることが金融機関の投融資を変化させるのである。社会正義と投融資の関係は、決して新しい視点ではなく、欧米における取組みには100年以上の歴史がある。企業、市民がそれぞれの立場で社会変革に貢献できる、しかも私たちが何気なく預けている預貯金が社会悪を改善する流れを生み出す、ということを多くの方々と一緒に広めていきたいと願っている。