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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/中東

平和人権/中東2016/09/29

パレスチナ訪問:日々をどう生き抜くのか


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ガザのビーチ。夕方になるとたくさんの市民が遊びにくる

 今回のパレスチナ訪問の一番の目的は、日本国際ボランティアセンター(JVC)によるガザ地区での活動のこれからを一緒に考えることだった。二年半ぶりに訪ねるガザは、この間に50日間にわたる攻撃を受けるなど、まさにさんざんな思いをまた経験している。そう、「また」なのだ。イスラエルによる攻撃を受け、瓦解し、そして瓦礫が片付けられてなんとなくそれまでの風景を取り戻したかと思うと、また攻撃を受ける。積み上げても破壊されることが繰り返される場所が、ガザ。
 前回訪問したのが、ちょうど50日間の攻撃を受ける数ヶ月前だったこともあり、あの攻撃の最中は毎日がほんと気がかりだった。直接会った人たちの顔が目に浮かび、彼らが砲火にさらされていると想像してしまう。とりあえず、JVCを通じて会った人たちは全て無事であったが、多くは家を壊されていた。爆弾が炸裂する音を耳にしながら、自身や家族の身の安全確保に必死な日々が50日間続いた。
 アマル、彼女はJVCのパートナー団体AEIの中心的スタッフであり、私たち日本人が訪問したときも一緒に案内をしてくれる。今回も、彼女と再会したときは、思わず抱き合っていた。言葉を交わすことはなく、ただ自然と抱き合っていた。

閉じられている場所

エレツ検問所

エレツ検問所

 ガザに入るには、3つの検問を通る。まずはイスラエルが管理しているエレツ検問所。なんか飛行場みたいねというくらい大きく強固な建物に入ると、空港の入出国管理局のようなブースでまさに入域審査を受ける。そこで、イスラエルに入った時にもらったビザも失うことに。次は、1.5キロほどの道を通ってファタハが管理している入管へ。この道はけっこうな距離なのだが、トルコが支援したカートが待機していたらそれに無料で乗って移動することができる。Thank you a lot, Turkish government. 直線ではなく、途中で曲がるし、とにかく長いのだ。

トルコ政府ありがとう。

トルコ政府ありがとう。

 そして、ファタハで審査を受けると、次はタクシーに乗って移動してファタハの検問所へ。それぞれの審査は簡単に済むのだが、とにかく移動に時間がかかる。ファタハでは荷物検査もあるので、仮にアルコール類が入っていたらそこで没収。
 イスラエルとの境界近くにいくと、頭上に白い飛行船が飛んでいるのが見える。これには監視カメラが搭載されているので、境界に近づくとすぐに攻撃される。狭いガザの中でも使える土地がさらに狭められている。ガザ地区の西側は長い海岸となるが、領海がおよそ6キロまでしかなく、その先に出ると攻撃の対象となる。夜には多くのイカ釣り漁船が沖合に見えたが、全て6キロ以内のことだ。

イスラエルとの境界にある壁が見える。

 つまり、ガザ地区というのは3方を壁と監視カメラにより、そして一方を6キロの制限海域を持つ海に囲まれた場所ということ。よほどのことがない限り、壁を越えて外に出ることは許されない。人々は、その中で生きている。

 

ガザでできること

 閉塞的なガザの中で、海外にいる私たちにできることは? 今回、現地のパートナーNGOの所長や担当者との会合、現地で活動している日本のNGOの人とのおしゃべり、JVCスタッフとの対話を通して感じたことは、「ガザの人が日々を少しでもいい形で生きていくためのお手伝い」が、現時点で私たちにできることだろうということだった。いますぐに、この封鎖政策が変わることにはならないだろう、というのは悲観的な意見かもしれないが、少なくとも短期的にそれが期待できないのであれば、その間に人々が生きていくための力をつけ、地域の耐久力をあげることが大切じゃないかということだ。

AEIでの会議

AEIでの会議

 JVCがこれまでパートナーとしてともに栄養改善のプログラムをおこなってきているのは、人間の大地「AEI」というNGOだ。プライマリヘルスのクリニックがメインの活動であり、ガザの人たちの健康状態の基盤づくりを担ってきている。
 そこの所長と担当のアマルが、これから必要なのは地域の人たちの意識を高めることだと、口を揃えて語っていた。疾病予防の取り組みも、健康を保つための環境作りも、住民が意識的に取り組まない限り根付くことはなく、いつまでも対処療法をし続けないといけなくなる。子どもの栄養状況が改善されるためには、配給される食糧の改善なども必要だろうが、同時に住民の意識が高まらないと前に進めない。
 資源も限られている中、ガザの人たちがあの地域に生きていくには、彼ら自身の生きる力が高まることが求められている時期なのかもしれない。

173x115幼稚園での栄養についてのアクティビティ。 173x115栄養不良の母子がいる家庭を定期的に訪問する。

 そういえば、今回はエジプトとの国境にあるラファの検問所までいくことができた。閉鎖されているのだが、たまたまメッカへの巡礼が始まるということで数日間開けられていた。出国を拒否された男性達が、数人帰りのバスを待っている傍を通り、検問所を案内してもらった。って、これはたぶん滅多にない、レアな機会だと思う。
 ここはエジプトへの道も通じているが、イスラエルからの物資が運ばれてくる場所でもあった。大型トラックにたくさんの物が積まれて運びこまれる。その中で特に目にとまったのは、スクラップ。イスラエルで廃車にされた車がガザに運び混まれているのだろうか・・・。経済の複雑な絡みを視た気がした。(M)