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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/中東

平和人権/中東2014/09/10

イラクは今 現地NGO代表に聞くイラクの現状と課題


 2014年9月8日に、港区の天光院で標記の報告会が、日本国際ボランティアセンター(JVC)とアーユスの共催で開催されました。スピーカーは、JVCのイラク支援事業のパートナー団体である、イラクNGO「INSAN(インサーン)」代表のアリーさんで、コメンテーターは、新潟国際情報大学教授で、国際政治学・現代政治理論がご専門の佐々木寛さんが務められました。

 アリーさんからは、イラク国内でイスラム過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIS)」の勢力が台頭し、イラク政府及びクルド自治政府との抗戦が続く中で、インサーンが活動するキルクーク県ではどのような状況になっているのかをお話いただき、今後のイラクの見通しやご自身のNGO活動について語っていただきました。

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 アリーさんはクルド系イラク人で、インサーンに参加する以前から様々なNGOで働きながらイラクの平和について考えてきましたが、2006年に乗っていたタクシーが検問所で止められ、同乗していた男性が車から引きずり出されて、彼がスンニ派であるという理由だけで殺されたという経験がきっかけとなって、以後、宗教・民族間の平和構築の活動に真剣に取り組むようになったと言います。現在、ISISによる住民の迫害や、アメリカの介入、政権交代など、イラクの情勢が混乱を極める中、多くの国内避難民への食糧・シェルター・医薬品などの支援を続けています。その一方、イラク及びキルクークの将来を考えた場合、子どもたちへの平和教育を継続的に行っていくことの必要性を以前から感じていて、様々な民族の子どもたちを対象にした平和ワークショップを開催してきました。JVCは2009年からその活動を支援し、アーユスも少額ながら協力してきましたが、2013年は資金的困難によってワークショップは開催されず、2014年は、それに加えて治安状況の悪化による避難民支援の必要性から実施にいたっていません.。

 佐々木さんからは、2013年にJVCのスタッフと共にイラク北部のアルビルでアリーさんと面談して、インサーンの活動に強い感銘を受けたといい、インサーンが行う子どもたちへの平和教育の取り組みを日本の市民としてエンカレッジしていく必要があることを強調されました。地域社会から平和構築を行っていこうとする取り組みを高く評価し、長期的な視点で多民族の共存、さらには平和秩序をどう守っていくかということは、日本でも重要なテーマとなっており、こうした点でイラクの人たちと一緒に考え、行動すべきであると述べられました。

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 最後に、アリーさんは、今後の自分たちの活動は「平和の庭」をめざしているとおっしゃいました。国内避難民の子どもたちが勉強に取り残されないように能力開発を行っていく場所を確保し、様々な民族の子どもたちが一緒に助け合いながらそれぞれの人生を切り開いていくことを応援したい、それによって平和な社会を実現させたいという強い思いを伺うことができました。佐々木さんの言葉を借りれば、今のイラクは「不信の構造を日常生活からいかに克服していけるのか」ということが試されているといいます。これは日本にも当てはまることだと強く感じました。