平和人権/中東
平和人権/中東2014/04/02ツイート
イラク:平和の創り方ワークショップ
「平和の創り方ワークショップ~内なる平和からつながるイラクの平和~」
平和ってそもそも創るものなのでしょうか。平和構築という言葉は仕事上でも頻繁に使いますが、この言葉が意味するものがわからなくなることがあります。しかし、平和な関係が一度崩れてしまった場合、つまり敵対する関係ができあがってしまった、もしくは無関心が蔓延した社会では、平和な関係、平和な社会を目指して、少しずつ、意識的に築いていく必要があるかもしれません。
3月23日に、日本国際ボランティアセンター(JVC)と共催で、「平和の創り方ワークショップ」を開催しました。イラクでは、長年にわたって続いている内戦が民族間の信頼関係を崩し、異なる民族の間の緊張感が高まることが頻繁におきています。これは、子ども達の間でも同じように見られる状況です。
安心して暮らしたいということは、誰しもが願うこと。特にこれからの社会を担う子ども達にとっても、平和な社会への道が閉ざされることはとても辛いことです。
JVCは、民族的・宗派的・政治的な立場の違いから厳しい対立の起きているイラク北部の街において、さまざまな民族の子どもたちが一緒に参加し共に平和を築くための礎となるワークショップを数年にわたりおこなってきています。そして、日本に住む私たち自身も、「平和って何だろう」ということを、当事者として考えていくことが大切だろうと、今回のワークショップを開催するに至りました。
さて、平和の創り方ワークショップって、具体的にはどのようなことをするのでしょうか。ファシリテーターは、新潟国際情報大学の佐々木寛先生。これまで新潟で、非暴力トレーニングを実施してきた実績をお持ちの方です。
たくさんのアクティビティに挑戦しましたが、その中で強く印象に残ったものをご紹介します。
●誕生日順に並んでみよう。
- 参加者は言葉を使わずに、誕生日順に並んで輪になる。
- 起点と方向も予め決めないまま始める。
ワークショップのアイスブレーキング(場の雰囲気をほぐすための導入のアクティビティ)でよく使われる手法です。言葉を使わずに相手の誕生日を知り、自分の誕生日を伝えていき、順番通りに並ぶ。言葉を使う以上に、相手が伝えようとすることを受け止める努力が必要ですし、こちらも丁寧に伝えようとしないといけなません。簡単なようでもありますが、普段のコミュニケーションが言葉に頼っていることに気づかされます。
● iMessage
各人が、これまでしたケンカで相手に投げつけた言葉を思い出します。それをペアになって、その時の気持ちを思いだしながら、相手に再現します。
次に、先ほどのケンカ言葉の主語を「私」にして言い換えてみます。
例:私はあなたにふざけないで欲しいと思う。
私はあなたをバカだと思う。
言った言葉に「私」を付けるだけでは、このような文章ですが、次のような発表にははっとさせられました。
子どもの時、親から勉強をしろと言われて 「自分だって頭が悪いくせに!」と言い返したけど、その時の本心は「わたしだって頑張っているの。なんでわかってくれないの」ということだったと気づきました。
ケンカ言葉の多くの主語は「あなた」になっています。
おまえバカだ。あんた何してんの? うるさい、おまえ、黙れ。
多くが、youの何かを指摘しています。でも実は、「私の話を聞いて」、「お願いだから止めて欲しい」など、心の底で求めていることの裏返しの表現に過ぎない場合が多々あるのだと思いました。
ちなみに私自身はアクティビティに参加せずに記録をとりつつ考えていましたが、何も思い出せなかったです。うーん・・・でもなぜか言われた言葉は思い出すという、いい気なもの。都合のいい記憶しか残していないようです。
iMessageのポイントは、言葉の暴力をコントロールするところではないでしょうか。怒りの感情や相手への不満というのは、人間誰しも持つ感情です。それを思うままに発露するのではなく、ちょっとコントロールすることで、それからの関係性ががらりと変わるのでしょう。そのためには、自分の感情と少し距離をとることができるようになるといいのかもしれません。そういう気づきを得たアクティビティでした。
以前、エンゲイジドブッディズム研究会でも、平和づくりのワークショップを行っていました。その時は、苦・集・滅・道の教えに基づき、何が集諦(苦しみを生み出す原因)なのかを考えることを中心に行い、むしろ問題分析に近かったかと思います。ポイントは、社会の中にある構造的暴力、それを支持する文化的暴力(信仰や文化に長く根付いた人々の考え方や慣習など)の両面から考えるところでした。自分の願うことが、文化や社会にどのように影響を受けたものであるかを整理して考えることができたのですが、まだ未完成な面が多々ある手法です。今回のワークショップを受けて、もっとブラッシュアップしたものにできるのではないかとも思いました。
ワークショップをおこなって、すぐに平和が生まれるとは思いません。参加者が何らかの気づきを得て、次のステップに進むヒントを得る事ができる。そんな機会になるといいなと思います。