「人の命を救うことが医療者の本分だとするなら、医療者は戦争を起こさないことに全力をあげるべき」
医療に携わる人たちには、アジア・太平洋戦争の時に医療者が行った行為を振り返りながら、戦争がいったん始まると、医療者であっても殺す側に回らざるを得なくなる、医の倫理を堅持するなら戦争そのものを起こしてはいけない、と声をあげる人たちがいます。
その声を集めて作られたのが、ドキュメンタリー映画『医の倫理と戦争』(※)。
アジア・太平洋戦争の時の医療関係者による戦争犯罪の代表が、「731部隊」。中国において部隊員である医師たちは中国人捕虜に様々な非人道的人体実験を行いました。その医師たちは戦後、実験データを国へ渡すことと引き換えに免責されて日本医学界の中枢に戻り、医療や医薬分野で重責を担い続けることとなります。その罪責は森村誠一氏を始めとする作家や民間研究者が発表してきたもののタブーとされてきました。人権よりも国益や経済が重視され、それを損ないそうな行為は「反日」認定される空気が日本社会には通底してきたからです。日本医学会が731部隊の存在と人体実験を公式に認めたのは、戦後実に77年経った2022年のことです。
この作品で、「医の倫理」を重んじる医療関係者の一人が、今年度のアーユス大賞(茂田賞)を受賞された沢田貴志さん。沢田さんは「日本では経済の論理が優先されてしまい、本来こうあるべきだという『医の倫理』を医師たちが主張しにくくなっている。医療だけではなく社会全体がそうした流れにいるのが日本社会ではないかと感じています」と語ります。
各地で続く戦争は、果たして他人事で終わるのでしょうか。どんな戦争においても、仮想敵を作り、存在を非人間化させて殺しても良い対象にしています。排外主義の流れです。
沢田さんの危機感をアーユスも強く同意します。そして、仏教系NGOとして「宗教の倫理」、「NGOの倫理」を受けとめた上で、現状に向き合うことを突きつけられています。
※医の倫理と戦争
全国順次上映中、自主上映会も各地で展開中。https://inorinri.wordpress.com/