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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2025/03/24

【3月】誰にとっての善? 悪?


 『オズの魔法使い』のスピンオフ映画「ウイキッド ふたりの魔女』。舞台はオズ国。そこのシズ大学に、グリンダとエルファバが入学します。グリンダは一見して華やかで自信に溢れ、誰からも注目される存在です。一方エルファバは、生まれつき皮膚が緑色だっただけで、親からも愛されません。実はエルファバにはある特殊な能力があるのですが、それさえもコンプレックスになり、能力が発揮されることはありませんでした。大学寮で同室になったふたりは、全く相容れません。

 シズ大学の学生たちは実に多様です。人種も。性別も。障害を持つ学生もいます。それどころかヤギの教授もいます。オズ国では人間と動物が共生しているのです。

 しかしある時から突然、動物は職を解かれ、ケージにさえ入れられるようになります。動物は動物扱いせよ、との上からのお達しにより。しかし実は以前のシズ大学では教授は全員動物だったのです。その過去がなかったことにされてしまいます。同時に図書館が閉鎖され、数多の本が足げにされます。ここで描かれているのは、歴史を軽視し都合のいいように書き換えさえする歴史修正主義と、知性を嘲笑し敵視さえする反知性主義です。また、多様性を誇っていたシズ大学の学生たちが、緑の肌を持つエルファバを躊躇なく差別する様子も描かれます。

 この情景、馴染みがありませんか。現在、世界各地で見られるような・・・?

 エルファバは次第に、自分の能力を受け止め、存分に発揮しようと決意します。それは、為政者にとっては都合の悪い「悪」でしかありませんでした。善も悪も、誰にとってなのかを立ち止まって考える必要を知らされます。

 現代の課題をこれだけエンターテイメントに仕上げたスタッフに敬意を表します。社会課題を語る時の材料として、いろいろと使わせてもらう予感がします。(アーユス)