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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2023/12/27

【12月】聞き継がれる曲


 一昔前はクリスマスには街中が華やかに飾られ、道行く人も浮かれがちだったものですが、年々「クリスマスらしさ」は街から消えているような印象があります。それでもクリスマスソングが流れると、どこか年末の慌ただしさと年の区切りが近いことを感じずにはいられません。

 クリスマスソング、名曲名盤が数々ありますが、定番のひとつとして挙げていいのが、『A Christmas Gift for You from Phil Spector』でしょう。1963年の発売以来、さまざまなレーベルから何度もリリースされ、そのたびにヒットチャートに載る人気作です。

 この名盤をプロデュースしたフィル・スペクターは、1960年代に大活躍をし、ビートルズの曲にも携わりました。華々しい実績を持つ彼は、2003年に自宅で女優のラナ・クラークソンを射殺した容疑で逮捕されます。2009年には禁固19年の有罪評決を受けて刑務所に収監、そのまま2021年に病死します。

 さて『A Christmas Gift for You~』、フィル・スペクターが事件を起こした後もリマスタリングなどを重ねて売れ続け、最も最近では今年1月にビルボードの8位にまでなりました。この事実は、日本社会の有様を振り返るひとつの教材になりうると思うのです。

 過去、思い出しても、ミュージシャンや芸能人が事件を起こすと、その作品は店頭から下げられて販売を自粛するのが日本の通例になっています。

 ある映画の出演者が罪を犯したとして、その作品への文化庁からの助成金が不交付になったことがありました。それを不服として起こされた裁判では、最高裁で「交付は適法」との判決が先月ありましたが、出演者の不祥事により作品がお蔵入りになる例もめずらしくありません。

 作品の流通が犯罪者の支援になる、という見方もあるでしょうし、テレビ作品などでは、不意に被害者が加害者の姿に触れてしまうかもという配慮もあるでしょう。しかし少なくとも、罪を問われ、刑を受けている場合は、徒に責を広く問うことに意味があるとは思えません。人の罪を問うこととその人物の創作物の評価をすることは別立てで両立します。

 また、罪の軽重と報道量の大きさのバランスが合っていないようにも思います。特に、芸能人が違法行為を行った場合と、公務員や政治家が違法行為を行った場合では後者の方が報道の意義はあるはずです。しかしそれが報道量に比例していないような。見るべきところをきちんと見、切り分けて判断するのは、社会の中で問題に相対し解決に向かうための第一の作法だと思うのです。日本で広く行われ求められる「自粛」は、誰のため、何のためなのか。それにより何を守り、何を糾しているのか。それらを押さえることなく思考停止による自動的な「自粛」しているうちに、本当に問うべきものを見失ってしまうこともありそうです。

 アーユスは無検討な自粛を自粛します。常に考えつつ、新しい年を迎えます。来年が少しでもいい年になることを願いつつ。(アーユス)