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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2022/05/31

【5月】活動が不要になる日をめざして


 ヘアドネーション。長く伸びた頭髪をカットして寄付し、病気などで頭髪を失った人のためのウィッグに役立てる活動です。一般には尊い活動として認識されていると思われますが、日本で最初にヘアドネーション団体を立ち上げ、現在も活動を続けている渡辺貴一さんは、そういう世間の見方に大きな違和感を感じていると言います。

 渡辺さんは美容師です。仕事で大量に生じる頭髪という「ゴミ」の再利用として考えたのが子ども向け医療用ウィッグでした。

 活動の中で渡辺さんは大きなジレンマを抱えます。ウィッグを必要とされるのは、髪がないと社会生活が困難になるからです。社会の中で差別やいじめや奇異の目を受けないためです。ということは、ウィッグの提供は、脱毛を差別する社会を認めていることにならないか。社会生活では髪が必要だという押し付けになっているのではないか。渡辺さんは、必要とする人へウィッグを提供する一方で、この活動があることで傷ついている人がいる可能性も常に意識しているといいます。そして、「自分たちの活動が必要ない社会がきたら、初めて僕らには存在価値があったと言えると思っています」とも。

 同様なことばをかつて、フードバンク団体を運営している方から聞いたことがあります。その団体は行政と協力関係を結んでいるのですが、ある行政の書類に「持続可能なフードバンク事業への協力」という文言をみつけ、怒って削除させたそうです。フードバンクはフードロスと貧困という社会の歪みの象徴なのに、それを「持続可能」とは何事かと。自分たちはフードバンクが必要ではない社会を目指しているのだと。

 国際協力においても、たとえば難民への人道支援と、難民が出ない社会をつくるための平和活動、もしくは国家暴力を抑えるためのアドボカシーの両面が必要です。それは昨年来の、ミャンマーへの取り組みにおいて強く感じます。

 当該者が抱える苦しみの解消と、その苦痛を生み出している社会課題の解決の両方を同時に目指すものでありたく思います。振り返りつつ振り返りつつ、前に進んでいることを確かめながら。(アーユス)


■アーユス・スペースで、このメッセージについて語り合いましょう。

日時: 2022年6月5日(日) 21:00〜 (30分〜40分程度、出入り自由)
こちらのURL ( https://twitter.com/i/spaces/1ynJOZwLdvqGR )から参加ください。 詳しくはこちらのページをご参照ください。