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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2021/10/29

【10月】ただいま、おかえり


  この10月末まで放送されていた、NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』。このところ質の高い作品を連発している朝ドラですが、その中にあっても印象深い作品となりました。安達奈緒子氏による繊細かつ力強い脚本。それを演じきった俳優陣。彼らに全幅の信頼を置いた演出。作品に関わった全ての方に拍手を贈ります。

 時代は現代。宮城県気仙沼市“亀島”で育ったモネが、自分の居場所を見つけていく姿が縦軸となっています。登場するのは皆善人ばかりです。しかしそれぞれが胸の内に深い痛みと欠落を抱えています。それをもたらしたのは東日本大震災でした。触れることさえ許されない悲しみを前に、人びとは戸惑いながらも手当てを試みます。人の癒やしはどうもたらされるのか。自分の居場所はどこにあるのか。自分の罪は許されるのか。そんな問いから生まれた、珠玉のセリフが満載です。

「あなたの痛みは、僕には分かりません。でも・・・、分かりたいと思っています」

 モネへ、後に恋人となる菅波が伝えた言葉。相手の何がしかが「分かる」と思えてしまうのは傲慢なことかもしれません。また、人は何かを「分かった」と思った瞬間に、その対称への関心を無くしてしまいます。「分からない」からこそ続き、深められる関係があるのです。

「もし、助けてもらってばっかりだったとしても、それはそれでいいっていう世の中の方がいいんじゃないかな」

 生きづらさを感じている中学生に、モネが語りかけた言葉。これは次の言葉の世界観に通じます。

「その山の葉っぱさんたちが、海の栄養になるのさ。山は海とつながっているんだ。なーんも関係ねえように見えるもんが、何かの役に立つってことが世の中にはいっぺえあるんだよ」

 モネの祖父・龍己がモネに語った言葉。Mr.Childrenの『彩り』という歌の一節を思い出しました。〈僕のした単純作業が、この世界を回り回って、まだ出会ったこともない人の笑い声を作っていく〉。自分の存在が無意味であり、居場所などないと思ってしまうことがあります。でも、自分の存在は自分の想像を常に超えています。思いがけず何かを支え、知らずに誰かに支えられています。それは国の境を越えての事実です。アーユスの諸活動は、誰にも用意されている居場所を、誰もがきちんと受け止められることを願ってのものと言ってもいいかもしれません。そういえば、『彩り』の歌詞にはこんな一節もありました。〈ただいま おかえり〉。(アーユス)