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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2019/11/29

【11月のメッセージ】視聴者の支持と声が的確な報道を生む


 Unknown政権批判をした大手放送局の職員が大量解雇に。これは、2008年に韓国で実際に起きた事件です。当時、支持率低下に焦った李明博(いみょんばく)政権は、強力なマスコミ介入に乗り出しました。KBSとMBCの二大放送局から政権に批判的な経営陣が排除され、調査報道チームは解散、番組は打ち切り、記者たちは非制作部門へと追われます。両局の労働組合はストライキで対抗しますが、政権寄りの経営陣は解雇や懲戒を濫発。その結果、両局は政府発表を報じるだけの「広報機関」となります。一方、不当解雇された記者たちは、独立メディア「ニュース打破」を立ち上げ、言論弾圧の「主犯」である大統領と、韓国の報道を骨抜きにした放送業界内の「共犯者たち」にカメラを向けたのです。

 この事件を赤裸々に描いたのが、ドキュメンタリー映画『共犯者たち』。監督のチェ・スンホ氏は、まさにMBCを解雇された当事者。しかし、2017年にはMBCの社長に選任され、公営放送の建て直しを開始したのです。その背景には局内に残ってジャーナリズムの再生を目指した職員の踏ん張りと、無価値な報道に接している視聴者の怒りがありました。

 ひるがえって日本のマスコミ。韓国のような露骨な政治介入は見られません。しかし、理由は不明ながら結果的に「政府の広報機関」となっているような。今上映されている映画『i-新聞記者ドキュメント』は、東京新聞社会部の望月衣塑子記者を柱に、権力とマスコミの関係をテーマにした作品ですが、『共犯者』とは対照的な印象を残します。望月記者による空気を読まない(忖度しない?)取材姿勢が、政権のみならず、マスコミの政治部記者からも疎まれる様子が描かれます。望月記者が目立ってしまうのはなぜでしょう。目立たせている情況こそが異常ではありませんか。

 「記者が黙った 国が壊れた」というコピーが『共犯者たち』に付せられています。このコピーは今の日本にこそふさわしいようにも思います。「報道」の「報」という字には、元は「そのまま」という意味があります。聞くべきことをそのまま聞き、聞いたことをそのまま伝える。それをきちんと成立させるために必要なのは、マスコミの報道人としての矜持。そしてそれ以上に、視聴者の飽かざる眼です。