天皇即位の礼に際して来日した韓国の李洛淵首相が10月22日、東京のJR新大久保駅を訪れました。同駅構内にあるイ・スヒョン(李秀賢)さんの顕彰碑に献花をするためです。
スヒョンさんは今から18年前の2001年1月、ホームから転落した人を救助しようと、日本人カメラマンの関根史郎さんとともに線路に降りて電車に接触、命を落としました。スヒョンさんのご両親のもとには日本全国から弔慰金が寄せられます。そのお金は、息子が願っていた日韓相互理解のために生かしたいとの考えから、日本で日本語学校に学ぶアジア諸国からの語学留学生を対象としたエルエスエイチアジア奨学会の設立に至るのでした。
その後、奨学会は毎年学生たちの支援を続けており、昨年までに奨学金を受けた学生は約900人にもなりました。
これらの活動と、韓国の若者たちが日本で民間交流する模様を収めた『かけはし』というドキュメンタリー映画が、自主上映会により全国で静かに感動を広めています。今年6月には、韓国でも上映をされました。それでも、事故についてもスヒョンさんについても、一般にはもう忘れられていると言っていいでしょう。遺族による奨学金活動を知る人はほとんどいません。今回の李首相の献花がほとんど報道されなかったのも、嫌韓ゆえというより無知が先に立ったように思います。それは残念なことでした。顕彰碑への訪問は韓国政府が友好を志向しているとのメッセージと受け取るべきでしょうし、その場には日本政府関係者が同席する懐の深さを見せてほしかったと思います。
日韓両政府の対応はともかく、人と人とのつながりで関係性を感じる感覚が弱くなっている気がします。○○人と一括りにカテゴリー化するのではなく、ひとりの人として認めつつ相対する場を大事にすべく、アーユスは活動を進めています。