文字サイズ

特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

会員になるには

その他の地域

その他の地域2014/12/05

揖斐川流域で取り組まれている地域づくりを学ぶ①


 毎年恒例のアーユス国内スタディツアー。今年は12月1日と2日の2日間、4月の春合宿の時にお世話になった神田浩史さんにご案内いただいて、岐阜県垂井町と揖斐川町を訪問しました。神田さんは、両地域において、豊かな自然環境や資源を活かした流域単位の地域づくりに取り組んでおり、日本の地域社会が持っている価値を再発見するとともに、今後の地域づくりにおける展望や課題について考える機会となりました。

CIMG0880 のコピー

 まずはじめに訪問したのが、神田さんが副代表理事を務めているNPO法人泉京・垂井(せんと・たるい)の事務所と、同団体が運営しているお店「フェアトレード&地産地消 みずのわ」。古民家を改築して作られたお店には、自然の力と人の手仕事で丁寧に栽培されたコーヒーや紅茶、チョコレート、スパイスなどのフェアトレード商品の他、昔ながらの技法で地元産の草木染めの布を使った雑貨や工芸品、一番人気というハチミツなど、地産地消のこだわりの品々がきれいに陳列されていて、参加者もそれらに引き寄せられるように、店に入るやいなや買い物を始めていました。隣にコミュニティースペースも併設されていることから、買い物だけでなく、お茶を飲みながら交流を楽しむなど地元の人たちの憩いの場所にもなっているそうです。

CIMG0878 のコピー

 初めに神田さんからグローバルな視点を活かした地域づくりをどのように進めているのかについて、垂井町のユニークな特性をご紹介いただきながら、泉京・垂井の活動事例をもとにお話を伺いました。垂井町は伊吹山の伏流水が流れる水の豊かな場所で、町の至る所に泉、ガマ、マンボといわれる湧き水が豊富にあります。1300年もの歴史を有する土地(京都よりも古い!)で、古来より東西の交通の要衝として栄え、かつては美濃の国府が置かれていました。近世は中山道と美濃路が交差する宿場町として発展し、東海圏・北陸圏・近畿圏の文化の交錯地帯でもあります。また、豊臣秀吉の軍師として名高い竹中半兵衛ゆかりの地としても知られています。現在の人口は2万8千人余りで、農業を兼業にしているところが多いため、他地域と比べて離農率は低く、田畑を持ちながら町外へ働きに出ている人も多いそうです。

 泉京・垂井は、「幸福度の高いまち・垂井」をめざして2005年に設立されたNPO法人で、 垂井町を中心とした西濃圏域、揖斐川流域で地域づくりを行っています。神田さんはNPOの設立から中心メンバーとして運営に関わっています。(1)まちづくりの推進、(2)環境保全・エコライフの推進、(3)生涯学習・多文化共生の推進、の3つを活動の柱として、10月に「みずのわ」をオープンして、フェアトレード&地産地消にも積極的に取り組んでいます。 特に力を入れているのが地域づくりを担う人材育成と都市・農村交流で、外部研修の受け入れを行うと共に、アースデイやフェアトレードデイ等のイベントも定期的に開催しています。他に、TPP、脱原発、ゴミ減量にも取り組んでいるとのことで、「つながり」をキーワードに、グローバルな流れを理解して流域単位で農山漁村と都市(まち)との有機的なつながりを軸とした「穏豊社会」の実現をめざしています。神田さんのお話から、地球を覆う南北問題や環境問題と、日本の地域が抱える過疎化、高齢化、環境破壊などの課題は密接に結びついており、そうした問題の構造や及ぼす影響について正しく理解しつつ、地域づくりを実践していくことが大切であると実感しました。

CIMG0911 のコピー

 一通り説明を聞いて、地産地消のお弁当をいただいた後、垂井の町歩きに出かけました。歩いてすぐの場所に南宮大社があって、朱塗りの本殿、拝殿、楼門などが立ち並び、荘厳な雰囲気を醸し出していました。民家の脇を入っていくと昔から使われてきたという水場があって、飲料用、野菜洗い用、洗濯用と3つに分けられていたのが印象的でした。また、マンボと呼ばれる横穴式の取水場が民家の庭にドーンとあってびっくり。改めて水が豊かな土地であることがよく分かりました。一方、街道沿いは宿場町だった風情を残しており、歩いている人をほとんど見かけなかったのですが、お祭りの時は人で埋め尽くされるとか。冬場は寒く、夏は暑いそうですが、豊かな自然環境に恵まれ、名古屋や関西に出るにも便利でありながら、静かな佇まいが残り、とても居心地のよい町と感じました。

CIMG0940 のコピー

 宿泊先は、垂井町から車で40分ばかりの揖斐川町にある「ラーニングアーバー橫蔵・樹庵」。ここは、2003年に廃校になった小学校をリメイクした宿泊・研修施設で、様々な合宿や研修に幅広く使われています。地元の人たちの協力を得て様々な体験プログラムが行われていて、そば打ち体験や木工教室、竹炭教室などが人気だそうです。大学生協の専務理事だったという小林正美さんが阪神・淡路大震災でのボランティア活動がきっかけで、体験して学ぶ場づくりの必要性を痛感し、その後、有限会社を作って現在の施設の運営を始めたとのこと。今では年間で7千人が泊まり、日帰りで体験プログラム等に参加する人が1万5千人にも及ぶそうです。地元のNPOの方々も集まって夜遅くまで語らいました。(続く)

CIMG1003 のコピー