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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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スタッフ雑記帳

スタッフ雑記帳2012/11/08

10/23 アジアの砒素汚染について学びました


2012年10月23日に、名古屋市昭和区の西光院で、アーユス全国キャラバン・セミナー in 名古屋が開催され、アジア砒素ネットワークの石山民子さんに、アジアの砒素汚染の現状やアジア砒素ネットワークの取り組みについてお話を伺いました。

バングラデシュはもともと水と緑の豊かな国ですが、ガンジス川のインド側のダム建設や、温暖化の影響と思われるサイクロンなどの水害・洪水の多発、エビ養殖の広がりによる塩害など、水をめぐる様々な問題が起きています。その中でも砒素汚染の問題は特に深刻で、もっともひどいときは3500万人が被害を受けていたといいます。

バングラデシュで砒素汚染が起こった背景には、地下30〜50メートルまで掘れる手押し式のチューブウェルが1980年代以降、全国的に普及したことと関係があります。それまでは池や川の水が使われていたのですが、細菌やウィルスが多いために下痢などの感染症が増加し、安全な飲料水の確保が急務となり、国際機関やNGOがチューブウェルが急速に普及させたのです。そのおかげで感染症は劇的に減りましたが、その反面、1990年代に入って、多くの地域の井戸水に高濃度の砒素が混じっていることが判明し、砒素汚染の実態が明らかになったのです。砒素は、ヒマラヤ高原の花崗岩の中に含まれているのが長い年月をかけて大河で運ばれて、下流のデルタ地帯に堆積していきました。それらが堆積する地層に井戸が掘られたため、砒素汚染が広がったのです。

アジア砒素ネットワークでは、1996年よりバングラデシュで、安全な水源の確保をめざして池の水を砂層で濾過するポンドサンドフィルターの設置に力を入れていきました。普通の井戸を造るよりも10倍以上のコストはかかりますが、適切な管理をし続ければ安全な水を確保し続けることができます。2002年にある村に設置したポンドサンドフィルターは10年が経った今でも利用され続けているそうです。その村の少女に10年間砒素のない水を飲ませてあげられたことはお金で計れない価値があったと石山さんは強調されました。但し、様々な理由でポンドサンドフィルターが維持管理されなくなるケースもあるそうです。砒素の恐ろしさが十分に理解されず面倒な管理が敬遠されたり、他のNGOが近くに深井戸を掘ったためそれを利用し始めたり、などなど。アジア砒素ネットワークは、安全な水の供給とともに、砒素が体内に入っても代謝されて排泄されるために栄養のある食生活に改めることを呼びかける啓発運動、砒素中毒の発症を予防するためのセーフティネットづくりなど、様々な側面から砒素被害がこれ以上広がらないための活動に力を入れています。

日頃、日本ではごく当たり前のように水を使っていますが、世界には安全な水にアクセスできない人たちがまだ多くいることを改めて感じさせられます。地球温暖化の原因とされる二酸化炭素をたくさん出す生活、バングラデシュのエビ養殖を促す私たちの食生活、仮想水(農産物の輸入に伴う、実質的な水の輸入)を大量に消費していることなど、私たちの生活はアジアの飲み水確保の問題と深くつながっています。今こそバングラデシュの農村の女性たちが営むシンプルライフに学び、私たちの生活を見直すことが求められているのかもしれません。(報告:井上)