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特定非営利活動法人アーユス仏教国際協力ネットワーク

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平和人権/中東

平和人権/中東2026/06/24

レバノンの難民キャンプの子どもたちに、学びと安心の場を


ひとたび難民になると、紛争が長引いたり、戦闘が終結したとしても様々な理由から、何年も故郷に戻れないことはめずらしくありません。しかし、難民に対する支援は、困難な状況に変わりがなくても、時間の経過や国際社会の関心の低下とともに減っていきます。

パレスチナ子どものキャンペーン(CCP)は、長く難民としてレバノンに暮らす子どもたちへの教育支援をしています。アーユスはその活動に、『街の灯』支援として協力しています。CCPからの報告です。


学びと安心できる居場所を届けるために

パレスチナ難民が生まれて75年以上、シリア内戦から15年が過ぎました。長引く危機の中で、レバノンで暮らすパレスチナ難民、シリア難民への国際社会の関心は薄れ、また、レバノンの社会も失業率や貧困率が上昇し、難民への支援は縮小する一方です。

特に山間部は首都から離れていることから支援が入りにくく、小学校低学年、特に学習につまずきを抱える子どもたちの支援はごく限られていました。

そこでパレスチナ子どものキャンペーンは現地提携団体と協力し、山間部にあるワーベル難民キャンプで、子どもたちが学び続けられるよう支えるとともに、安心して過ごせる居場所を提供しています。

夏期期間中の授業で、前学年で学んだ掛け算の復習をする子どもたち

 

学習を続けることが難しくなった子どもたち

2024年秋、イスラエルがレバノンに侵攻し、難民キャンプのある地域周辺も空爆されるという事態が起きました。その影響で、子どもたちは数か月にわたって学校に通えませんでした。

学習支援指導員はこう語ります。

「(2024年)11月の停戦後も、ドローンがワーベル上空を頻繁に飛んでいます。子どもたちはドローンの音を聞くと怖がって、『戦争が始まる!』と叫びます。先日、イスラエルがワーベルを攻撃するという噂が流れると、学習支援クラスに通うある兄弟がパニックに陥り、泣き出し、『死んでしまう』と叫びました。父親がすぐに迎えに来て、家に連れて帰りました。彼らの家は戦争で被害を受け、今も荒廃したままです。子どもたちには学習面だけではなく、心理面でのサポートも必要ですが、この地域ではそうしたサポートをしている団体はほとんどありません」

情勢の影響でオンライン学習に代わるなどしたため、通学期間が短くなってしまいました。そのため、「特に小学校低学年の子どもたちは、読み書きや基本的な計算に苦労している」と教育コーディネーターは言います。「学校再開後もオンラインやハイブリッドでの学習期間もあったため、子どもによって学習格差の拡大も見られます。空爆の恐怖や、家族との離別、度重なる避難などは、今なお子どもたちの心に深刻な影響を与えています。引きこもり、攻撃性の高まり、不安といったトラウマ関連の行動の増加が見られます。情緒が不安定になったり、学習の退行も見られます」。

また、2026年2月末の米国とイスラエルによるイランへの攻撃後、中東全域に戦火が広がり、レバノンでは再び空爆や地上攻撃が激しさを増しています。イスラム教シーア派組織ヒズボラとイスラエルの停戦合意後も今なお交戦は継続され、緊迫した情勢が続いています。子どもたちの学習環境が再び厳しくなる中、学習指導はもちろんのこと、子どもたちにとって安心して過ごせる場所の存在は、これまで以上に重要になっています。

一人ひとりに寄り添った授業と、心の居場所づくり

こうしたなかCCPと提携団体は、2024年秋からの教育年度は小学1年生から5年生まで98人の子どもたちに学習支援を行い、全員が学習を継続し、学年を修了することができました。また、2025年秋からの教育年度は96人の子どもたちに学習支援を行い、2026年6月末に学年を修了予定です。

ワークシートに取り組む子どもたち

授業では、子どもたちが通うUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の学校のカリキュラムに合わせて、アラビア語、英語、算数を指導しました。フラッシュカードやワークシート、グループワークなどを活用し、子どもたちが主体的に学べるよう工夫しています。また、指導員とソーシャルワーカーが連携し、保護者との面談や家庭へのサポートも行いました。

さらに、学校が休みとなる毎週金曜日には、レクリエーション活動を実施しました。子どもたちが気持ちを表現したり、仲間と交流したりできる時間を設けることで、心理的なサポートにも取り組んでいます。

夏休みも学びと遊びを止めない

毎年7月から8月の夏休み期間には、夏のアクティビティ・プログラムを実施しています。

2024年秋から2025年春は学校に通えなかった期間が長かったため、まずは前年度の学習内容の復習を行いました。同時に、他者を尊重することや感情を表現することをテーマにしたレクリエーションも取り入れました。

夏のアクティビティで、他者を尊重することを学ぶ子どもたち

また、プール遊びやスポーツ、楽器に触れる体験など、普段はなかなか機会のない活動も実施しました。子どもたちが思い切り体を動かし、安心して楽しめる時間を持てるよう工夫しました。

子どもたちの変化

学習支援の成果は、テストの点数だけでは測れません。子どもたちが少しずつ自信を取り戻し、人との関わりを広げていく姿が見られています。

Aくん(現在、小学5年生)

アラビア語の授業でクラスメートの前で発表するAくん

4年生の最初のころ(2024年秋)、Aくんは非常に内気で、クラスメートと話すこともなく、授業にもほとんど参加していませんでした。指導員たちがこの状況に気づき、チームでサポートを始めました。授業中・授業後には個別にフォローし、レクリエーションや音楽の活動にも参加するよう促しました。

少しずつ変化が生まれました。授業中に質問に答えるようになり、友達もでき、学校でも楽しく過ごせるようになっていきました。4年生が終わるころには、クラスで最も活発な児童の一人になっていました。

Jくん(現在、小学2年生)

1年生で通い始めたとき、Jくんは鉛筆を正しく持つことも難しく、読み書きに大きな困難を抱えていました。特別なワークシートを用意し、グループワークなどのアクティブラーニングを通じてサポートを続ける一方で、指導員はJくんの両親とも継続的に連絡を取り合いました。学年後半には読み書きができるようになり、夏休み中もすべてのプログラムに参加。2年生の現在も学習を続けています。

アラビア語の授業で本を読む子どもたち

Mくん(現在、小学3年生)

1年生から通い続けているMくんは、2年生の初めごろまで極度の内向きで、一人でいることを好み、読み書きへの苦手意識が自信のなさにつながっていました。指導員はソーシャルワーカーや両親と相談しながら、グループ活動への段階的な参加を促し、学習ゲームや絵本を使って学力を少しずつ強化。どんな小さな進歩も言葉にして伝え続けました。
今では友達と話し合い、活動にも積極的に参加するようになりました。読み書きもできるようになり、3年生に進級しています。

支援を必要とする子どもたちは今もいます

現在も、子どもたちを取り巻く教育環境は厳しい状況にあります。

レバノン全体の情勢の悪化に加え、パレスチナ難民の子どもたちが通うUNRWAの学校では近年、財政難による教職員の待遇悪化やストライキが発生し、授業時間や授業日数が減少しています。また、オンライン学習の影響などから学習格差も広がっています。

算数の授業でクラスメートの前で掛け算を発表

さらに、シリアから避難している一部のパレスチナ難民の子どもたちは、滞在許可の問題によって学校への入学が難しくなり、家族が教育を理由にシリアへの帰還を迫られるケースもあります。

こうした状況の中で、子どもたちが学び続けられる環境を維持することは決して容易ではありません。

それでも、子どもたちが安心して過ごし、自分の力を伸ばしていける場所は必要です。

皆さまからのご支援により、2024年4月の『街の灯』支援開始からこれまでに126人の子どもたちが学習を継続することができました。

子どもたちが学びをあきらめることなく、自分らしく成長していけるよう、今後も活動を続けてまいります。


アーユスの『街の灯』支援を通じたこの活動への協力は、皆さまからのご寄付で行っています。心より感謝申し上げますとともに、今後も、子どもたちが学べる場、安心できる場を提供できるよう、引き続き温かいご支援をお願いいたします。

事業名:レバノン山間部の難民キャンプにおける脆弱な子どもたちへの学習支援
実施団体:特定非営利活動法人 パレスチナ子どものキャンペーン