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エンゲイジドブッディズム

エンゲイジドブッディズム2025/01/28

【1月】強権の前でも忘れたくない慈悲の心


 アメリカ合衆国では、トランプ政権の二期目が発足しました。早速署名した大統領令により、米内務省は「メキシコ湾の名称をアメリカ湾に変更」「北米最高峰のデナリを旧称のマッキンリーに戻す」と発表しました。そんなアメリカファースト指向とともに注目されたのが「米政府の公式方針として、今日から性別は男女の二つのみとする」との演説です。就任翌日に営まれたワシントン国立大聖堂での礼拝で、主教はトランプ氏の前で「LGBTや移民コミュニティーが恐怖を感じている。そうした人々への慈悲を願う」と説教をし、今後への懸念を表明しました。
 トランプ氏の若き日を描いた映画が現在上映中で、大ヒットをしています。『アプレンティス』。副題は「ドナルド・トランプの創り方」。気弱で繊細だった20代のトランプ氏。破産寸前だった時に出会った辣腕弁護士ロイ・コーン氏が彼の運命を変えます。コーン氏はトランプ氏に人生の勝ち抜き方を叩き込みます。ルールは3つです。①攻撃あるのみ、②自分の非を認めるな、③どんな状況にあっても絶対に敗けを認めずに勝利を主張せよ、というもの。脅迫など、法や倫理を無視することに抵抗があったトランプ氏に対してコーン氏は言います。「批判は気にするな。何が正しいかなんて基準は存在しない。大切なのは勝つことだ」。それに従ったトランプ氏は、次々と事業を成功させていき、人間も変わっていき、やがて師のコーン氏を見捨てることとなります。
 トランプ氏の3つのルールは前回の大統領戦後にも発揮されていました。今後の政権運営にも反映されそうな予測もできます。それはどのような世界を築くでしょう。ロイ・コーン氏は、自らが授けたルールを完璧に体現したトランプ氏に見捨てられました。トランプ氏に対抗できるのはさらなる強権でしょうか。いえ、少なくとも、トランプ氏の面前で説教をしたマリアン・エドガー・バッディ主教にはこれらのルールが生かされることはないと思います。慈悲の心、忘れたくありません。